オンラインイベントとは、インターネットを通じて行われるセミナー、展示会、交流会、カンファレンスなどの催事の総称です。
かつては「リアル開催ができないから仕方なく行うもの」と捉えられがちでしたが、現在はその位置づけが大きく変わっています。
ブイキューブで数多くのイベント支援を行ってきた大友は、現在の市場背景について次のように分析しています。
「オンラインイベントは現在、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要な一環として定着しています。今後はリアル回帰が進む中でも、オンラインの利便性を活かしたハイブリッド開催を含め、この市場需要は堅調に推移し、より戦略的な活用が進んでいくでしょう」(大友)
つまり、オンラインイベントは一過性のブームではなく、今後もビジネスにおいて不可欠なチャネルであり続けると言えます。
オンラインとオフライン(リアル)の最大の違いは、物理的な制約の有無にあります。
リアル開催では会場の手配や収容人数の上限、参加者の移動コストなどが発生しますが、オンラインではそれらの制約がほとんどありません。それぞれの特性の違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | オフライン(リアル)イベント | オンラインイベント |
| 強み・特性 |
熱量・偶発的な出会い その場の空気感を共有しやすく、名刺交換など身体も用いた交流が生まれやすい。 |
効率・データ活用 場所を問わず参加でき、視聴ログなどのデータ取得が容易。 |
| 会場・人数 | 物理的な会場が必要。 収容人数に上限(キャパシティ)がある。 |
インターネット上が会場。 ツール次第で数百〜数千人規模も配信可能。 |
| コスト | 会場費、設営費、参加者の移動費がかかる。 | 会場費や移動費は不要。 配信機材やツール費用がかかる。 |
「オンラインイベント」とよく似た言葉に「WEB開催」があります。基本的に意味はほぼ同じですが、ビジネスの現場では文脈によって使い分けられる傾向があります。
自社の企画が「事務的な伝達」に近いのか、「体験や熱量の共有」に近いのかによって、言葉を選定するとよいでしょう。
オンラインイベントの進化形として、現在主流になりつつあるのが「ハイブリッド開催」です。これは、リアル会場でのイベント開催と、オンラインでのライブ配信を同時に行う形式のことを指します。
「リアル会場ならではの『熱量』と、オンラインならではの『広範なリーチ』の両方を享受できる理想的な形式だけに、近年ご選択されるお客様が増えています。とは言えもちろん、注意点もあります。会場の手配・設営と、高品質な配信機材・オペレーションの両方が必要になるため、単純計算でスタッフや準備の工数が2倍近くになるケースも珍しくありません。実施する際は、リソース配分を含めた周到な準備が成功の鍵となります」(大友)
「自社がやりたいイベントは、どの形式が最適なのか?」。そう迷ったときは、「誰に向けて(ターゲット)」と「どう配信するか(形式)」の2軸で整理すると分かりやすくなります。ここでは代表的な分類と特徴を解説します。
一般消費者を対象とした、ライブコマース、ファンミーティング、オンラインツアーなどがこれに当たります。視聴者が「楽しむ」ことを目的としているため、飽きさせないエンタメ要素や演出が強く求められます。また、SNSでの拡散やコメント機能を活用した連動性の高さも特徴です。
企業間取引を目的とした、製品発表会、カンファレンス、採用説明会などです。こちらはエンタメ性よりも、「業務に役立つ有益な情報の提供」と、その後の「リード(見込み客)獲得・育成」が主目的となります。そのため、イベントの盛り上がりだけでなく、参加者情報の管理や事後のフォロー体制など、データ管理が非常に重要になります。
主催者が講演を行い、参加者がそれを視聴する「1対多」の形式です。参加者のマイクやカメラは基本的にオフになるため、予期せぬ音声の割り込みなどの運営リスクが低く、初心者でも開催しやすい形式です。一方で、参加者は受け身になりやすく、少しでも「つまらない」と感じるとすぐに離脱されてしまう点には注意が必要です。
Zoomミーティングのように、参加者同士の顔が見え、会話やワークショップを含む形式です。双方向のコミュニケーションが取れるため参加者の満足度は高くなりやすいですが、進行役(ファシリテーター)のスキルが問われます。また、不適切な発言への対応(荒らし対策)など、運営の難易度は講演型に比べて上がります。
なぜいま企業は、手間をかけてまでイベントのオンライン化を進めるのでしょうか。それは、従来のリアル開催では得られなかった高い費用対効果(ROI)が見込めるからです。ここでは代表的な4つのメリットを解説します。
最大のメリットはコストカットです。リアル開催で必須だった会場レンタル費、設営費、当日配布する資料の印刷代、スタッフの交通費や宿泊費などを削減できます。また、これによって浮いた予算を、より影響力のある登壇者のアサインや、配信動画のクオリティアップ(コンテンツ制作)に回すことができるため、結果としてイベントの質を高めることも可能です。
オンラインには物理的な距離の制約がありません。そのため、地方や海外に住む顧客はもちろん、移動時間が取れない多忙な決裁者なども参加しやすくなります。また、会場のキャパシティ(定員)を気にする必要がないのも強みです。数百人から数千人規模の集客が可能となり、これまでアプローチできなかった層へ商圏を拡大できます。
デジタルツールを活用することで、「誰がいつ入室し、どの資料をクリックし、いつ退出したか」といった詳細な行動ログを正確に取得できます。オンラインはアンケートの回収率も比較的高い傾向にあり、取得したデータはMA(マーケティングオートメーション)ツールとの連携や、インサイドセールスへの引き継ぎなど、その後のマーケティング活動にスムーズに活用できます。
台風や大雪による交通機関の乱れや、パンデミックなどの影響を受けにくく、中止のリスクを極めて低く抑えられます。ビジネスにおいては、どんな状況下でも安定して顧客へ情報発信を続けられることが重要です。その意味で、BCP(事業継続計画)の観点からもオンラインイベントは有効な手段と言えます。
実に便利なオンラインイベントですが、もちろんメリットばかりではありません。担当者は主催者が最も恐れる「反応のなさ」「トラブル」「離脱」といった壁を覚悟し、事前に対策を講じておく必要があります。
特にウェビナー形式や参加者のカメラがOFFの場合、相手の「頷き」や「笑い」が見えません。そのため、登壇者はまるで「壁に向かって話している」ような不安に陥りやすくなります。一方的な配信にならないよう、チャット機能や「いいね」などのリアクション機能を積極的に活用し、双方向性を意識する工夫が不可欠です。
「配信が止まる」「音声が聞こえない」「画面がカクつく」といった技術的なトラブルは、オンラインイベントにつきものです。難しいのは、主催者側の環境だけでなく、参加者側の通信環境にも依存してしまう点です。万が一の際に備え、予備回線の準備や、トラブル時の案内フローを確立しておく必要があります。
リアル会場では途中退席するのに気まずさを感じますが、オンラインでは「ワンクリック」で即座に退出できてしまいます。コンテンツがつまらないと判断されれば、すぐに離脱されるシビアな環境です。また、他の作業をしながらの「ながら見」参加も多く、参加者の熱量や集中力を最後まで維持させるのが難しいという側面もあります。
「私はウェビナーの講師を務めることもありますが、相手の反応が見えないのにテンションを維持するのは慣れてきても難しいです。そういう時に重要なのはチャット機能やコメント欄ですが、テキスト上でリアルタイム・コミュニケーションを活発化させるには登壇者だけでなく運営側の呼びかけも必要です。この辺りも企画段階から頭に入れておくと良いです」(大友)
ここからは、実際にオンラインイベントを開催するための具体的な手順を、企画から開催後までの7つのステップで解説します。
イベントの規模にもよりますが、準備期間は目安として開催の1〜3ヶ月前から動き出す必要があります。抜け漏れを防ぐため、以下のフローを参考にスケジュールを立ててみてください。
最初に「何のためにやるのか(目的)」を明確にしましょう。ここがブレていると、後のツール選びや集客で必ず躓きます。「誰に(ターゲット)」参加してほしいのか、「どうなってもらいたいか(ゴール)」を言語化し、それを達成するためのKPI(目標集客数、商談化数など)を具体的に設定します。
目的が決まったら、中身を詰めます。オンラインでは集中力が切れやすいため、1つのセッションを短く区切る、Q&Aの時間を長めにとるなど、飽きさせない構成作りが重要です。社内の登壇者調整はもちろん、外部講師を招く場合は、依頼から当日までの連絡フローも早めに確認しておきましょう。
Zoom、MicrosoftTeams、YouTubeLive、Vimeo、あるいは専用のイベントプラットフォームなど、選択肢は多岐にわたります。セキュリティ要件(パスワード必須か)、想定される同時接続数、必要な機能(チャット、投票、ブレイクアウトルームなど)をリストアップし、自社の企画に最適なツールを選定します。
イベントの顔となるLP(ランディングページ)を作成し、申し込みフォームを設置します。集客メールの配信はもちろんですが、最も重要なのは「リマインドメール」です。申し込みから当日までに熱が冷めないよう、開催前日や開始1時間前に自動で案内が届くよう設定し、参加率を高めましょう。
リハーサルは、必ず「本番と同じ環境」「同じ時間帯」「同じ機材」で行ってください。単なる台本の読み合わせで終わらせてはいけません。「音声が途切れたらどうするか」「登壇者のPCが落ちたらどう繋ぐか」といった、トラブル発生時の対応フローを確認することこそが、リハーサルの真の目的です。
当日は、タイムキーパー、配信管理(ホスト)、チャット対応、参加者サポートなど、事前に決めた役割分担に基づいて動きます。もしトラブルが起きても、運営側が焦ってはいけません。状況を冷静にアナウンスできる体制を整えておくことが、参加者の安心感につながります。
オンラインイベントは「終わってから」が本番です。記憶が鮮明なうちに、迅速にお礼メール(サンクスメール)やアーカイブ動画を送付しましょう。そして、取得したアンケート結果や視聴ログを分析し、営業やマーケティング部門(インサイドセールス)へ連携して、次のビジネスアクションへと繋げます。
「準備から当日で力尽き、イベントがやりっぱなしになっている、というのが多くの企業様の共通課題として聞かれます。データ解析やその活用といったHOWの部分が重要なのはもちろんですが、社内イベントの場合はどうしても客観性を欠いてしまう場合も。事業成長につながる有効な情報を取得するために、第三者の目線を入れることは効果的です」(大友)
イベントは単に「開催できた」という事実だけでは成功とは言えません。ビジネスとしての成果につなげるためには、いくつかの重要なマインドセットと具体的な手段があります。
社内のリソースやノウハウに不安がある場合は、無理に自社だけですべてを行わず、プロの配信代行業者に頼ることを検討してください。これはコストではなく「成功への投資」です。プロに依頼することで、主に以下の4つのメリットが得られます。
自社で開催する場合でも、予備のPCや予備のインターネット回線(モバイルWi-Fi等)を用意するリスク管理は必須です。「トラブルは必ず起こるもの」という前提に立ち、万が一の際に参加者へ送る案内文面や、マニュアルを事前に用意しておくことが、本番での冷静な対応につながります。
イベント終了後は、取得したデータを基に「どのコンテンツで離脱が多かったか」「Q&Aは盛り上がったか」などを必ず分析しましょう。結果を振り返り、次回の集客方法や構成の改善(PDCA)につなげるサイクルを回すことこそが、オンラインイベントの質を高め続ける唯一の方法です。
オンラインイベントは「準備が9割」と言われるほど、事前の入念な計画が成功の鍵を握ります。
まずは小規模なウェビナーから始めて、社内にノウハウを蓄積していくのも良いでしょう。しかし、絶対に失敗できない社運をかけたイベントや、確実な成果を求める場合は、迷わず配信代行やプロのサポートを検討することをおすすめします。
本記事が、貴社のオンラインイベント成功の一助となれば幸いです。