従来の音声合成は、台本をもとに音声を生成するものでした。言葉そのものは正しくても、伝え方が意図と合わないことがあります。歓迎のあいさつが平板に聞こえたり、謝罪の言葉が妙に明るく響いたりします。文の途中で気持ちが切り替わる様子を表現するのも簡単ではありません。
Gemini 3.8 Flash TTS では、話し方を開発者がより細かくコントロールできます。感情、話すスピード、キャラクター性、アクセントといった要素を指定でき、場面に合わせてスタイルを切り替えることも可能です。たとえば、キャラクターがセリフを静かに語り始め、最後は興奮気味に締めくくる、といった演出ができます。ボイスエージェントであれば、苛立っているお客様には温かく応対し、問題が解決したら明るいトーンに切り替える、といった対応も可能です。
このコントロールが重要なのは、会話が常に変化するものだからです。人は相手の話を聞き、応じながら、声のトーンを自然に調整しています。こうした変化を開発者が設計できるようになることで、生成される音声は、目指す体験にぐっと近づきます。
ボイス選びも、音声体験をつくるうえで大切なプロセスのひとつです。Gemini 3.8 Flash TTS では、特定の言語や地域に合わせてローカライズされたものを含む、2,000 種類以上のボイスライブラリが新たに用意されました。従来の名前付きボイスも引き続き利用できます。
開発者にとっては、体験の内容や利用者にぴったり合う声を見つけやすくなるということです。学習アプリ、ゲームのキャラクター、カスタマーサービスのエージェントでは、それぞれふさわしい声が異なるでしょう。地域ごとのボイスを使えば、さまざまな地域のユーザーにとって、より親しみやすいプロダクトにすることもできます。
ライブラリの規模にも目を引かれますが、本当の価値は「選択肢があること」にあります。チームは少数のデフォルトボイスにとらわれず、ユーザー層やユースケースごとに、自分たちのプロダクトがどんな声で語るべきかを考えられるようになります。
説得力のある音声体験は、一文だけでなく会話全体を通して成り立つものでなければなりません。長い会話の中では、声質やアクセントのわずかな変化でも気になってしまうものです。また、複数の話者が登場するやり取りには、自然な間合いや受け答えのある「会話らしさ」が求められます。
Gemini 3.8 Flash TTS は、長い発話でも一貫性を保ち、複数話者によるより自然な対話を実現できるよう設計されています。息づかい、間の取り方、話者の切り替わりといった要素のリアリティも高まりました。こうした細部は、インタラクティブな物語、ガイド付きのレッスン、あるいは数分かけて利用者のタスク完了をサポートするボイスエージェントなどで、大きな違いを生みます。
リアルタイムアプリケーションで目指すべきは、ユーザーが最後まで引き込まれ続ける体験です。最初のあいさつから会話の終わりまで、声がそのやり取りをしっかりと支える必要があります。
表現力の高い音声合成には、幅広い可能性があると私たちは考えています。たとえば、状況にふさわしいトーンで応答するボイスエージェント、対話を通じて楽しく学べる学習体験、物語の最初から最後まで「その人らしさ」を保つキャラクター、そして利用者の言語や地域に合った声で語りかけるアプリケーションなどです。
Gemini 3.8 Flash TTS と Gemini 3.8 Flash-Lite TTS で何をつくるかは、開発者のみなさん次第です。今回のリリースで特に注目すべきなのは、「声そのもの」を設計できる余地が大きく広がったことです。台本の言葉と並んで、伝え方や声のアイデンティティ、会話の流れまでを考えられるようになりました。
Agora は、次世代の音声 AI を決定づけるのは「自然に参加したくなる体験」だと考えています。より表現豊かな音声と、格段に広がったボイスの選択肢は、そうした体験を実現するための新たなツールを開発者にもたらします。
Agora (Agora, Inc.)は、低遅延なオンライン配信基盤および SDK を提供する RTC(リアルタイムコミュニケーション)分野のリーダー企業です。同社のグローバルネットワーク「SD-RTN™(Software-Defined Real-Time Network)」は、リアルタイム通信や会話型 AI を高速かつ安定して動かすための強力な土台を提供し、国内外で幅広い分野で採用されています。
実際の活用ケースは、Agora 国内導入事例 や Agora 海外導入事例 にてご確認いただけます。
Agora Conversational AI Engine(Convo AI)は、低遅延かつ高品質な会話型 AI エージェントを簡単に構築できる統合エンジンです。音声認識(STT)、大規模言語モデル(LLM)、音声合成(TTS)の一連の処理を一括で担い、リアルタイムな音声対話機能をアプリや IoT 製品へスムーズに組み込むことができます。
OpenAI、Claude、Gemini、Llama といった主要な LLM に対応しており、RESTful API を通じた柔軟な制御が可能です。そして本記事でご紹介した Gemini 3.8 Flash TTS / Flash-Lite TTS も、Convo AI 上でプレビュー版としてすでにご利用いただけます。
次世代のリアルタイム音声体験を、ぜひあなたのプロダクトでお試しください。連携手順や実装詳細は Agora Docs の Gemini 3.8 Flash TTS / Flash-Lite TTS 連携ページ からご覧いただけます。