現在、子どもたちが飲んでいる薬の約7割は、小児への有効性・安全性が認められていない「適応外使用」だ。薬が小児用として認められるには、実際に投与して有効性・安全性を確認する「治験」を行う必要があるが、小児向け医薬品は採算性が低く、対象の特殊性から製薬企業も積極的に開発していない。この現状を変えるべく、小児向け医薬品、医療機器の拡大・充実を目的とした組織「小児治験ネットワーク」が2010年に設立。治験を効率化させる一環として、V-CUBE ミーティングを使った会議運営を行っている。
複数の医療機関が治験に参加して製薬企業との間で情報共有を行う際、全国に広がる加盟施設へ製薬企業の担当者が直接出向く負担が大きい。
2010年の設立当初、治験ネットワーク運営のためのインフラ整備を実施。限られた予算の中でWeb会議の導入を検討したが、当時は高額なシステムが多かった。
治験実施施設側が治験審査委員会に概要を説明し、審査を受ける必要があるが、説明を行う臨床医の移動にかかる時間や金銭の負担が大きく、スケジュール調整も難しい。
全国各地の小児関連病院の医師たちと製薬企業担当者が、時間や場所に縛られることなく情報共有が可能に。
Web会議によって情報共有のための時間や場所の制約が少なくなり、製薬企業の負担が軽減。さらに関係者へ一斉に情報を共有することで、治験実施までの過程が効率化された。
安定性とコスト面のバランスを考慮し、コストパフォーマンスが高いV-CUBE ミーティングを選定。
限られた予算の中で、一度に数拠点が顔を見ながら会議ができるなどの条件を満たす製品選定を行った。
治験実施施設の臨床医による治験の概要説明をWeb会議で行うことで、移動せずにプレゼンが実施可能に。
治験審査委員会は開催日が決まっており、日々多忙な臨床医がそれに合わせて委員会に赴くことは困難だった。しかし、Web会議を活用することで場所を問わずプレゼンが可能に。スケジュール調整もしやすくなり、時間的、金銭的な負担が減った。
医師たちが各施設にいながら、顔を合わせて情報共有ができること。
治験を行う際の製薬企業のコストを軽減できること。また、製薬企業と医師、双方のスケジューリングを容易にすること。
治験を行うまでの過程を効率的に進められること。
小児治験ネットワーク 事務局長 栗山 猛 氏
子ども向けの薬は採算性の問題を抱えています。総数が少なく、大人と同じ量を飲むことがないため、開発に時間や費用をかけにくいのです。子どもたちが飲む薬の約7割は、大人の薬を少なくした、いわゆる適応外使用です。
子どもの薬を増やすためには治験を行わなければならず、当然お金もかかります。小児治験ネットワークは、治験を実施する病院をネットワーク化し、製薬企業が少しでも効率よく治験を行えるように設立されました。
ネットワークに加盟している施設は北海道から沖縄まで広がっており、逐一集まるわけにはいきません。ネットワーク内で簡単に情報共有できる仕組みを整えるため、V-CUBE ミーティングを導入しました。
また、治験実施施設の医師が治験審査委員会に治験の詳細を説明する際にもV-CUBE ミーティングを使用しています。Web会議なら曜日にとらわれずに開催できるのでスケジュール調整がしやすくなりました。その他にも治験コーディネーターの教育・研修プログラムの作成に活用するなど、採算が取りにくい子ども向け医薬品の有効性・安全性の改善、開発工程の効率化にWeb会議が役立っています。
治験を行うには、対象となる患者さんや制限を明記した「治験実施計画書」が必要です。今後は、V-CUBE ミーティングで製薬企業の方と治験コーディネーターをつなぎ、より現場に即した治験実施計画書の作成に協力したいと考えています。患者さんのライフサイクルに適した計画書を作成することで、さらに迅速な治験実施につながるのです。
小児向け医薬品等の開発には高いハードルが存在する。有効性、安全性を調べるためには子どもを対象に治験を行う必要があり、日々発達していく体に合わせて薬の量も調節しなければならない。小児治験ネットワークは、小児向け医薬品等の開発をさまざまなアプローチで効率化し、開発コストを抑える取り組みを行っている。
製薬企業が治験を行うために必要な各病院への概要説明を、V-CUBE ミーティングを使って一斉に実施。それぞれの病院に足を運ぶ必要がなく、医師とのスケジュール調整もしやすいので、より効率的に治験へ進むことができる。
小児治験では、治験の参加者である子どもに治験について説明し理解してもらうことが必要となる。小児治験ネットワークでは、加盟施設の治験コーディネーターが共同で子ども用の説明資料(アセント文書)の雛型を作成しており、その会議にV-CUBE ミーティングを活用している。