近年、台風や豪雨などの災害が続き、南海トラフ地震の備えも重要視されていることを受け、大分県では庁舎内の防災センターをリニューアル。面積は2.2倍へと広がり、消防や警察、自衛隊などを含めた収容人数も3.2倍となった。機能面では11台だった大画面モニタを17台に増加。1つの情報を多くの人数で共有するための体制を構築した。この新・防災センターに指揮台として採用されたのが「V-CUBE Board」。さらに「V-CUBE コラボレーション」を導入し、県庁と地域振興局、市町村等をつないで、緊急時のWeb会議を行うこともできるようになった。
紙やホワイトボードはスペースに限界があり、新しい情報を書くためには、古い情報の上に紙を貼ったり、ホワイトボードの記載を消す必要が生じる。
全県を俯瞰的に見たい場合や、現場周辺の状況を詳細に見たい場合は、異なる縮尺の地図を用意する必要があり、情報が一元化できない。
県庁内に設置される対策本部や地域振興局、市町村等へ、災害現場のリアルタイムの映像を送る専用ツールはあったが、活用できる人材が技術部門に限られていた。
寄せられる情報をデジタルデータ化することで、物理的なスペースを気にすることなく情報を集約、整理、共有でき、必要に応じて古い情報も表示が可能。
指揮台として導入した「V-CUBE Board」にデジタルデータを集約。大画面であるため、複数の情報を並べて表示することも可能。各班のリーダーを「V-CUBE Board」の周りに集めて、必要な情報を切り替えながら、一気に説明することで、短時間で効率的に情報共有できるメリットも。
指による操作で地図を縮小・拡大させ、地図データと連動した被害状況などの情報を確認。
「県全域ではどういう被害状況なのか」「物資輸送で活用したい道路の、ピンポイントでの現状はどうなっているのか」など、必要に応じた縮尺で地図情報を活用できる。
災害現場のスマートフォンやタブレットから、多くの県職員がWeb会議に映像を送ることができるように。
県庁、地域振興局、市町村等を「V-CUBE コラボレーション」で接続。災害現場からは、インターネット経由でスマートフォンやタブレットからも「V-CUBE コラボレーション」に接続できるため、技術部門以外の職員でも現場映像のリアルタイム共有が可能に。
大分県で導入した新しい地理情報システムに、画面タッチや手書きによる書き込みなどが直感的に行えること。
防災センターの各班のリーダーを集めて、情報共有をしながら協議ができること。
災害現場の映像を、県庁や地域振興局、市町村などをつなぐ専用回線とも共有できること。
大分県 生活環境部防災局 防災危機管理監 福岡 弘毅 氏
新しい防災センターの大きな特徴は、災害などの規模や内容に合わせて、防災センターの各班や、消防、警察、自衛隊、医療関係者などに割り当てるスペースや机の数、利用するモニタなどをフレキシブルに変更できる点にあります。その時の状況や訓練などを通じて「進化」する防災センターを目指しています。
機能面では、情報の可視化に重点を置きました。従来は11台だったモニタの数を17台とし、画面サイズも大きくしたことで、防災センターの一同が同時にさまざまな情報を見ることができるようになったのです。
「V-CUBE Board」は、防災センターの指揮台という位置付けです。緊急時には複数の情報を同時に見ながら瞬時に判断する必要がありますが、紙やホワイトボードでは物理的なスペースの限界がありました。「V-CUBE Board」は大画面に複数の情報を併置したり、古い情報を画面切り替えで表示することが可能になります。
防災センターのリニューアル以外にも、緊急時の対策としてさまざまなシステムを採用していますが、「V-CUBE コラボレーション」もその1つです。2019年6月に実施した大規模な図上訓練は、午前7時半にマグニチュード9.0の南海トラフ巨大地震が発生した想定で実施しました。
地震発生直後には、県庁と知事公邸をつないでのWeb会議を実施。8時半には第1回災害対策本部会議を開催し知事が人命救助と情報収集を指示。10時半には収集された情報をもとに対策を協議する第2回災害対策本部会議を行いましたが、いずれも県庁と地域振興局を「V-CUBE コラボレーション」で接続しての会議で、現場の声が直接会議の場に届く訓練を行いました。
大分県庁では近年増加している台風や大雨などの自然災害のほか、南海トラフ地震への対応を視野に危機管理の体制を強化。2019年5月に開所した新・防災センターには「V-CUBE Board」を指揮台として導入した。さらに、「V-CUBE コラボレーション」を採用し、県や市町村をつなぐ専用回線とインターネット回線を組み合わせ、県庁や地域振興局、市町村等へ、災害現場の映像をスマートフォンやタブレットからリアルタイム共有できる体制を構築する。
防災センターの指揮台として導入された「V-CUBE Board」。正面の大画面モニタに「V-CUBE Board」から情報を投げ入れて防災センター内の職員と共有することができる。
紙の地図は書き込む情報量に制約があるため、大分県では、地図の上に透明のビニールをかぶせ、新たな情報が入るとビニールをかけかえて書き込み直す運用を行っていた。
「V-CUBE Board」であれば地図に直接指で書き込んで、デジタルデータとして保存できる。新旧のデータを切り替えて表示することもでき、スペースという物理的な制約から解放される。
2019年6月に実施された県総合防災図上訓練では、県内各地に配置された地域振興局からも「V-CUBE コラボレーション」で県庁内で開催された災害対策本部会議に参加。今後は、災害現場からの映像を、インターネット回線を通じてスマートフォンやタブレットで共有できる体制を構築する。
大分県では防災映像配信システムにより、災害対策本部会議等の映像を、県や市町村の各所で視聴することができる。
(右上)災害対策本部会議が開催されているホールとはフロアが異なる防災センターでも、大画面で会議の様子が視聴でき、会議内の指示事項を同時に把握できる。
(右下)防災映像配信システムにアクセスできる職員は、パソコンなどでも災害対策本部会議を視聴可能。