東京薬科大学の社会人大学院では、文部科学省の事業の一環として弘前大学、秋田大学とのコンソーシアムを組み、テレビ会議システム「V-CUBE Box」を活用して週1回の遠隔講義を行っている。講師も受講生も大学の講義室に集まって講義を行うのがスタンダードである中、受講生だけでなく、講師も自らの拠点にいながら移動することなく講義を行えるため、医療現場で活躍する多彩な講師が週替わりで講義を担当できることが特徴となっている。地方の教育機関で遠隔講義を受講できることで、医療教育の地域間格差解消にも寄与している。
地方の教育機関では、専門性の高い講義のラインナップや頻度が少なくなりがちで、医療教育における地域間格差が生じやすい。
日常的に業務を行っている社会人対象のため、仕事が終わってから移動して講義を受講するのは困難なケースが多い。
現場で活躍している講師が、自分の拠点を離れて講義を実施する場所に移動することは、時間的な負荷が大きい。
同一の講義を、複数の異なる教育機関で受講することができるため、専門性の高い講義を受講しやすくなる。
東京薬科大学とコンソーシアムを組む弘前大学、秋田大学のほか、地方の医療機関なども接続しての講義が可能になる。
講義の内容に興味があっても、終業後の移動では間に合わないという社会人も多いが、「V-CUBE Box」に接続できる環境があれば、職場から遠隔で講義を受講できる。
現在開講している東京薬科大学の講義でも、大手薬局に勤務する薬剤師が、自社の会議室に設置されている「V-CUBE Box」から遠隔で講義を受講している。
講義のための移動が必要な場合、講師は業務を早く切り上げたり、場合によっては宿泊をともなうことになるが、遠隔講義ならば自拠点にいながら講義が実施可能に。
東京薬科大学では「V-CUBE Box」を講師に送付することで、講師が移動せずに自拠点から講義を実施できる運用を行っている。そのため、現場で活躍している臨床医や薬剤師など、多彩な講師を週替わりで立てることができる。
受講する側も講師側も、その週により参加場所が変わるため、どこにでも移動できるコンパクトな製品であること。
講義のための資料がクリアに見え、講師による説明や、受講生からの質疑応答がストレスなく行えること。
東京薬科大学 薬学部 臨床薬剤学教室 教授 下枝 貞彦 氏
十数年前からIT活用に関する文部科学省の事業に参画し、その一環で東京医科歯科大学へ東京薬科大学の大学院の講義を遠隔で配信するといったことは行っていました。2017年にさらなる検討を開始し、弘前大学や秋田大学とのコンソーシアムを組み、大学院での社会人向け講義の配信を行うことになったのです。
遠隔講義といっても講義を行う側は、大学に移動するということがまだまだスタンダートですが、現在、「V-CUBE Box」で行っている講義で特徴的なのは、現場で活躍する講師が自分の拠点にいながら講義を行っているという点です。必要に応じて「V-CUBE Box」を講師のもとに送ることで講師の移動が不要になります。これにより、医療現場などで活躍する多彩な講師に講義を依頼することができ、毎週異なる講師による講義の配信が実現できたのです。
東京薬科大学 薬学部 臨床薬剤学教室 准教授 平田 尚人 氏
「V-CUBE Box」を活用しての社会人大学院の講義は、多い時で最大5拠点の20名程度という少人数です。社会人大学院という性質上、専門性が高く、どうしても少人数が対象となることが前提になります。
実はこのように受講生の人数が少ない講義だからこそ遠隔が適していると思います。受講生が大勢いるのであれば、講師がそこに行って講義をすればいいのですが、拠点によっては1~2名という受講生の規模だからこそ、このスタイルの講義の意義が高くなるのです。
東京薬科大学 事務局 教育研究推進部 薬剤事務課 係長 野本 聡 氏
下枝教授から「遠隔講義を行いたいが、検討した製品は動きが遅く映像のクオリティが低い。ほかにいい製品はないか」という相談を受けたのが2017年のことでした。ちょうどその時期に、ブイキューブ製品の大学での事例をいくつか目にしてしたこともありデモを依頼したところ、十分に納得できる品質の製品でした。
また、講師側に「V-CUBE Box」を送付することも検討していたため、コンパクトな設計であったことも要件に合致していました。
東京薬科大学では2018年から、コンソーシアムを組む弘前大学、秋田大学とともに、遠隔を前提にした社会人大学院の講義を行っている。必要に応じて「V-CUBE Box」を講師のもとに送付することで、講師は自らの拠点でインターネット接続による講義を実施できるため、週1回の頻度の講義は毎回異なる講師が担当するという多彩さを実現している。
「V-CUBE Box」を活用しての講義は、週ごとに講師が変わる多彩さが特徴であるが、受講生も社会人であるため、週によって出席者の顔ぶれが異なるケースも多く、接続する拠点の場所や数の変化に対応可能である。
2019年10月に実施された講義は、長野県の病院で実務を行っている薬剤師による「小児がん患者に対する医学的アプローチ」がテーマ。
東京薬科大学の八王子キャンパス、弘前大学、大手薬局の会議室の計3カ所が受講生側の拠点となった。
別の日にはコンソーシアムに参画する秋田大学や、東京薬科大学の千代田サテライトキャンパスから受講する講義もある。このように、講師側・受講側あわせて最大5カ所をつなぐ遠隔講義を週1回のペースで実施している。
東京薬科大学では、千代田サテライトキャンパスへ「V-CUBE Box」を持ち運んだり、講師のもとへ送付したりして遠隔講義を実施している。そのために、カメラやマイクスピーカーなど一式を収納できる専用のケースを特注した。
薬剤師を対象とした講義では、グラフや統計など、細かい数字まで資料共有できることが重要なため、映像のクオリティが求められる。
東京薬科大学での講義では、講師が自身のパソコンから資料を共有し、画面切り替えは講師自ら実施している。