社内イベントとは、基本的に社員同士の親睦を深め、組織力を高めるための活動を指します。
近年の傾向として、かつてのような「強制参加の飲み会」スタイルから大きく変化しています。2025年4月に実施されたリクルートの調査によると、職場での飲み会の開催率は2017年の約75%から約60%に減少しています。
出典:職場の飲み会に対する期待と参加実態を調査(2025年4月実施) | ホットペッパーグルメ外食総研「すべての人に、食で笑顔を。」
現在はランチ会からeスポーツ大会まで、企画内容も多彩に。「オンライン/ハイブリッド開催」や「業務時間内での実施」、そして個人の意思を尊重した「自由参加型」など、多様な働き方に合わせた柔軟なスタイルが主流になりつつあります。
株式会社セルバが運営する「Career Craft」の調査では、社内イベントに「反対」の人は47%と、賛成派の23%を大きく上回る結果になっています。
出典:【社内イベントいらない?】300人に聞いた本音|肯定派・否定派のリアルな声を調査!
だからこそ幹事として最も避けたいのは、参加者から不満が出ることです。「失敗したくない」と考えるのは当然のことですが、なぜ社内イベントが敬遠されてしまうのか、その理由は主に以下の4つの観点に集約されます。
「迷惑」と言われないイベントにするためには、明確な「目的」の設定が不可欠です。ただなんとなく開催するのではなく、どのような課題を解決し、どのような効果を得たいのかを定義することが、企画の第一歩となります。
社内イベントの最大の目的は、コミュニケーションの活性化です。近年、テレワークの普及や業務の効率化が進む一方で、オフィスでの何気ない「雑談」や、部署を超えた「横のつながり」は減少傾向にあります。
イベントを通じて業務以外の会話が生まれることで、社員同士の心理的な距離が縮まります。普段は見えない人柄や意外な共通点を知ることは、相互理解を深めるきっかけとなり、結果として日常業務におけるコミュニケーションも円滑にする効果が期待できます。
普段関わりのない部署同士が接点を持つことも重要な目的です。組織が大きくなると、どうしても部署ごとの壁ができやすく、いわゆる「タコツボ化(サイロ化)」が進んでしまうことがあります。
イベントで他部署のメンバーと交流し、顔と名前が一致する関係を作ることで、「あの件は〇〇さんに聞いてみよう」といった気軽な連携が可能になります。部署間の風通しを良くすることは、業務上の連携ミスを防ぎ、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。
「お客様の中には社内イベントがきっかけとなり、情報交換が生まれることで業務改善や新規事業につながるケースもあります。開催のハードルが高いのは事実ですが、気軽に交流できる定期的な場を設けておくことで、事業に好循環が生まれる事例があることは見逃せません」(大友)
「この会社で働いていてよかった」という会社への愛着や信頼、すなわちエンゲージメントを高めることも大きな目的の一つです。
日々の業務に追われていると、どうしても会社への帰属意識は薄れがちです。楽しい時間を共有したり、会社から労われたりする経験は、社員のモチベーションを高めます。組織への愛着が深まれば、優秀な人材の離職防止(リテンション)にもつながり、長期的な企業の成長基盤を作ることになります。
イベントは、経営層の想いや会社のビジョン(MVV:ミッション・ビジョン・バリュー)を共有する絶好の機会でもあります。
メールや朝礼の言葉だけでは伝わりにくい理念も、イベントという体験を通じて共有することで、より深く浸透させることができます。全社員が同じ方向を向き、一体感を持って目標に進むための土壌作りとして、社内イベントは組織文化の醸成に大きく寄与します。
社内イベントと一口に言ってもその内容は多岐にわたります。目的によって大きく以下の6つに分類することができます。
最も一般的で導入しやすいタイプのイベントです。単に集まるだけでなく、参加者同士の会話が自然と生まれるような仕掛け作りが重要になります。
心身の健康促進(ウェルビーイング)や、日頃のストレス解消を主眼に置いたタイプです。
業務に役立つ知識の習得や、社員の知的好奇心を満たすことを目的としています。
チームで協力して何かを達成するプロセスを通じて、組織の結束力を高めるタイプです。
会社の節目や功績を称え、社員のモチベーションを高める大規模なイベントです。
CSR活動やSDGsへの取り組みを通じて、社会的意義を共有するタイプです。
ここからは、具体的な企画アイデアを紹介していきます。まずは、最もニーズの高い「社員交流」を目的とした10選です。
部署や年次をランダムに組み合わせたランチ会です。普段話さない人と交流できるのが特徴で、会社が費用を補助することで参加率が上がります。
夕方以降、オフィスの一角でお酒や軽食を振る舞うイベントです。移動の手間がなく、業務終了後にふらっと立ち寄れるため参加しやすいのが魅力です。
季節感を共有する定番企画です。仮装やオフィスの飾り付けなどを行うことで、非日常感を出しやすく盛り上がります。
新入社員の歓迎会です。オンボーディングの一環として実施し、既存社員との心理的な壁を早期に取り払う効果があります。
リモートワーク中心の企業に適した企画です。参加者の自宅に同じ食事を配送することで、離れていても一体感を醸成できます。
社員がDJとなり、社内のニュースや「あの人の意外な一面」などを紹介する放送企画です。楽しみながら相互理解を深めることができます。
その月に生まれた社員を集めてお祝いします。主役が明確であり、少人数での密な交流が生まれやすいのが特徴です。
フットサル、ボードゲーム、軽音など、趣味を通じた横のつながりを会社が支援します。業務外の共通点から関係性が深まります。
直属の上司以外(ナナメの関係)の先輩と話す機会を作ります。利害関係のない相手だからこそ、相談しやすい環境を作ることができます。
全社員のプロフィール(趣味や特技)を公開したり、ライトトーク形式で自己紹介し合ったりするイベントです。会話のきっかけ作りに最適です。
「シャッフルランチのようなランダム性を持たせた企画は実現できると予想外の盛り上がりを見せることがあり、試してみる価値はあります。その分、企画者側には事前の設計が必要で、NGワードを決めるなど遊びの要素を盛り込むことで距離が近くなりやすいです」(大友)
心身の健康(ウェルビーイング)を保つことは、持続可能な働き方に不可欠です。ここでは、日頃のストレスを解消し、社員を元気にするイベントを紹介します。
始業前やランチタイム、就業後などの隙間時間を活用し、インストラクターを招いて実施します。スーツやオフィスカジュアルのまま、着替えずにできる軽い運動が人気です。デスクワークで凝り固まった体をほぐすことで、肩こりや腰痛の予防になるだけでなく、リフレッシュしてその後の業務効率を上げる効果も期待できます。
ゲームタイトルを選定し、社内で対戦を行うイベントです。年齢や性別を問わず楽しめますが、特に若手社員が活躍しやすい場として注目されています。プレイするだけでなく、オンラインで観戦・応援するだけでも盛り上がるため、リモートワーク下でのストレス解消や一体感の醸成にも役立ちます。
スマートフォンのアプリなどを活用し、チーム対抗で一定期間中の歩数を競います。「今日はどれくらい歩いた?」といった会話が生まれやすく、自然と健康促進につながります。運動不足の解消という健康経営の視点からも推奨され、期間終了後に表彰を行うことで継続的なモチベーション維持にも効果的です。
会議室にある大型スクリーンやプロジェクターを活用し、就業後などに映画やスポーツの代表戦を観戦します。同じ空間で感動や興奮を共有することで、社員同士の心理的な距離が縮まります。お菓子やドリンクを用意してリラックスした雰囲気で行うのがポイントです。
福利厚生の一環としてプロの施術者をオフィスに招き、就業時間中にマッサージを受けてもらう企画です。1人15分〜20分程度の短時間でも、プロの施術によるリフレッシュ効果は絶大です。社員を大切にする会社の姿勢が伝わりやすく、満足度の高いイベントです。
近郊の提携農園での収穫体験や、オフィスの屋上・ベランダに設置した菜園の手入れを行います。土に触れ、植物を育てるプロセスには高い癒やし効果があります。収穫した野菜を社内ランチで振る舞うなどすれば、食育やコミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。
仕事のパフォーマンス向上やメンタルヘルスケアを目的として、脳を休ませるための静かな時間を設けます。専門の講師によるガイダンスのもと、呼吸に意識を集中させることでストレスを軽減します。短時間で頭がクリアになるため、会議の合間や午後の始業時に行うのも効果的です。
オフィスを離れ、お寺などの静寂な空間へ出向いて精神統一を行います。日常の喧騒から離れた非日常的な環境に身を置くことで、心を落ち着かせ、自分自身と向き合う時間を持つことができます。メンタルケアの一環としてだけでなく、日本文化に触れる体験としても人気があります。
陶芸や絵画、フラワーアレンジメントなど、普段の業務では使わない「右脳」を刺激するクリエイティブな体験です。作品の出来栄えよりも、創作に没頭する時間がリフレッシュになります。完成した作品を見せ合うことで、社員の意外な感性を知ることができ、会話も弾みます。
プロのバリスタから美味しいコーヒーの淹れ方を学びます。ハンドドリップのコツを習得し、社員同士でコーヒーを振る舞い合うことで、質の高いブレイクタイムを創出します。コーヒーの香りに包まれるリラックス効果に加え、社内カフェのような空間がコミュニケーションを促進します。
業務に直結するスキルはもちろん、広い視野や知的好奇心を育むことは、巡り巡って組織全体の成長につながります。ここでは、楽しみながら学べるイベントを紹介します。
数分間の短い持ち時間でプレゼンテーションを行う大会です。テーマは業務知識に限らず、「最近ハマっている推し活」や「おすすめのガジェット」など自由な設定が可能です。人前で話すスキルの向上はもちろん、社員の意外な個性や熱量を知ることができ、相互理解が深まります。
エンジニアだけでなく、営業や企画職なども巻き込み、短期間で集中して新規事業や社内課題の解決アイデアを出し合います。普段とは異なるメンバーでチームを組むことで化学反応が起きやすく、イノベーションの種を見つける場として有効です。
参加者がおすすめの本を持ち寄り、その魅力を紹介し合います。自分では選ばないようなジャンルの本に出会えるため、知的刺激を受けられます。また、感想を共有することで価値観の違いを知り、社内に共通言語や新たな視点が生まれるきっかけになります。
業界の著名人や専門家を社内に招き、最先端の知見やビジネスパーソンとしてのマインドセットを学びます。社内のリソースだけでは得られない刺激を受けることで、視座を高め、社員のモチベーションや意識変革を促す効果が期待できます。
「Excel時短術」や「英会話」「動画編集」など、社員がそれぞれの得意分野を講師役となって教え合う相互学習の場です。教える側は知識の定着につながり、教わる側は実務に即したスキルを学べるため、双方にメリットがあるコストパフォーマンスの高い企画です。
自社製品の製造現場や物流拠点、あるいは他社の先進的なオフィスを見学しに行きます。現場のリアルな空気に触れることで、自社のビジネスへの理解が深まったり、環境改善のヒントを得たりと、デスクワークだけでは得られない広い視野を養います。
ランチタイムなどの決まった時間は、日本語禁止で英語(または学習中の他言語)のみで会話するルールで行います。業務外のリラックスした雰囲気の中で実践的なアウトプットができるため、語学学習へのハードルを下げ、継続的な学習意欲を刺激します。
難関資格の取得や、自己研鑽で成果を出した社員を全社で称えます。努力が正当に評価される場を作ることで、本人の自信になるだけでなく、「自分も頑張ろう」という周囲への良い刺激となり、組織全体に学習意欲の高い文化が醸成されます。
他社の社員と交流する機会を設けます。社内だけの人間関係では「井の中の蛙」になりがちですが、社外の人と話すことで自社の強みや課題を客観視できたり、新たなビジネスの視点や刺激を得たりすることができます。
レゴブロックなどの手を動かすツールを使い、抽象的な思考を形にする研修です。言葉だけでは表現しにくい思いやビジョンを可視化することで、深い対話が可能になります。楽しみながらも脳をフル回転させる、没入感の高い学びの場です。
個人のスキルだけでなく、チーム全体で協力し、役割分担を行うことが不可欠なイベントです。達成感を共有することで、組織の結束力を高めます。
チームメンバー全員で知恵を出し合わないと解けない課題に挑みます。物語の世界に入り込む没入感があり、制限時間内にクリアできた時の達成感は格別です。普段はおとなしい社員がひらめきで活躍するなど、新たな一面が見えることもあります。
リレーや綱引きなど、身体を動かして団結する古典的かつ強力なイベントです。ただし、社員の年齢層や運動神経の個人差を考慮し、「玉入れ」や「大縄跳び」など、誰もが参加しやすい種目選びが成功の鍵となります。
限られた予算と時間の中で、テーマに沿った料理を作ります。「食材の買い出し」「調理」「盛り付け」といった段取りや役割分担が求められるため、プロジェクト進行などの実際の仕事に近いスキルを楽しみながら発揮できます。
会社や社員に関するマニアックな問題を出題することで、会社への理解を深めつつ盛り上がります。スマートフォンを使った回答集計ツールなどを活用すれば、大人数でもスムーズに進行でき、オンライン開催にも適しています。
地図を片手に、指定されたエリア内のチェックポイントを制限時間内に回り、得点を競うアウトドアアクティビティです。体力だけでなく、どのルートで回るかという戦略性が求められ、チームで話し合いながら街を歩くことで会話が弾みます。
「国の方針として健康寿命の延伸やリスキリングが謳われる中で、お客様の社内イベントのニーズも変化を見せています。学びにつながるワークショップは今や一般的ですが、クイズ大会や社内運動会のようなエンターテインメント色の強いご要望を頂くケースも実際にあり、社員の皆様の満足度も高いです。また、こうしたイベントには副産物もあります。PMスキルのような可視化されづらい能力を持つ社員が発見されることもあるのです」(大友)
会社の節目や功績を称えるイベントは、会社全体の士気を高める重要な機会です。普段とは違う演出や「特別感」を演出し、社員のモチベーションを刺激します。
期初などのタイミングで行う方針発表会です。経営層がビジョンを熱く語り、全社員の目指すべきベクトル(方向性)を合わせるための最重要イベントです。会社の未来像を共有することで、日々の業務への納得感を高めます。
優秀な成果を上げた社員やプロジェクトにスポットライトを当てて称賛します。受賞者をロールモデルとして示すことで、「次は自分が壇上に立ちたい」という意欲を喚起します。サプライズ演出や家族からのメッセージなどで感動を誘うケースもあります。
創業記念日などに実施する祝賀会です。会社の歴史を振り返り、苦労や成功を共有することで、会社への愛着を深めます。同時に、未来への期待感を醸成し、長く働き続けたいと思わせる雰囲気作りが重要です。
「社員のエンゲージメント向上やリテンション対策は経営の大きな課題です。福利厚生のような還元施策も重要ですが、経済動向が不安定な中でキャリア志向が高まっているのも事実です。そうした中で経営層がどのようなメッセージを発するかに注目が集まっており、その前段となるストーリーやコンセプト設計のご支援から参加させて頂くケースも増えています」(大友)
企業の社会的責任(CSR)を果たしつつ、チームビルディングにつなげるイベントです。「良いことをしている」という意識の共有は、健全な組織風土を作ります。
オフィス周辺や海岸などのゴミ拾いを社員総出で行います。お揃いのTシャツやビブスを着用して行うことで、一体感が生まれるだけでなく、地域住民への企業アピールにもなります。朝活として短時間で実施するのも効果的です。
社員の子供やパートナーなどの家族をオフィスに招待し、どのような場所で働いているかを見てもらいます。家族からの理解と応援を得ることは、社員が安心して長く働くための大きな支えとなります。
どんなに素晴らしい企画を立てても、運営がおろそかではイベントは成功しません。「また参加したい」と思ってもらえるかどうかは、企画の中身と同じくらい、運営側の細やかな配慮にかかっています。ここでは、特に押さえておきたい4つのポイントを解説します。
「何のためにやるのか」が曖昧なままでは、社員の参加意欲は湧きません。「ただの飲み会なら行かなくていいか」と思われないよう、目的を明確にすることが重要です。
「他部署との交流を深めるため」「新しい知識を学ぶため」といった具体的なメリットを言語化しましょう。招待状や告知文の中で、なぜこのイベントを開催するのか、幹事としての想いや期待される効果を熱く伝えることで、社員の関心を引きつけ、納得感を持って参加してもらうことができます。
最も注意すべきは、一部の社員だけが盛り上がる「内輪ノリ」です。特定の世代や役職者だけが楽しい内容は、それ以外の参加者に疎外感を与え、逆効果になりかねません。
性別・年齢・役職に関わらず楽しめるユニバーサルな企画を選ぶよう心がけましょう。また、余興や一発芸などを強要する空気は絶対に避けるべきです。心理的な負担を取り除き、誰もがリラックスして過ごせる雰囲気作りが、満足度向上の最低条件です。
参加率を大きく左右するのが開催時期です。決算期や月末などの繁忙期にイベントをぶつけてしまうと、業務の支障になるだけでなく、「忙しいのに空気が読めない」と反感を買う原因になります。
業務スケジュールを事前に確認し、余裕を持った日程設定を行いましょう。また、十分な告知期間(リードタイム)を設けることも大切です。早めに予定を押さえることで、社員も業務調整がしやすくなり、「参加しやすさ」に直結します。
通常業務と並行して幹事を行うのは大きな負担です。もし社内のリソースだけで運営するのが難しい場合は、プロの手を借りるのも賢い選択です。場合によっては数百時間単位の工数削減につながります。
イベント企画会社に依頼すれば、企画の提案から当日の運営までを任せることができ、幹事の負担を劇的に軽減できます。また、プロならではの演出や進行によりイベントのクオリティが担保され、結果として参加者の満足度向上にもつながります。
社内イベントは、単なるレクリエーションではありません。社員同士の信頼関係を築き、組織を円滑に動かすための「潤滑油」であり、企業の成長にとって欠かせない重要な施策です。
いきなり大規模なイベントを目指す必要はありません。まずはランチ会や小さな勉強会など、実施しやすい規模から始めてみてはいかがでしょうか。この記事で紹介した40個のアイデアを参考に、ぜひあなたの会社に合ったイベントを企画し、活気ある組織作りにお役立てください。
「全てのイベントは何かしらの課題意識に根差したものではないでしょうか。『このようなイベントをやってみたい』というアイデアレベルでも構いませんので、是非一度当社ブイキューブにご相談くださいませ。もちろん、自社内で完結するというケースも多いかと思いますが、思いがけない企画が生まれる可能性もございます。累計3万件の支援実績からお話できる事例も数多くございますので、お気軽なご相談をお待ちしております」(大友)