まずイベントにおいて定義すべきこととは?
それはイベント企画とは「単なる飲み会や催し物」ではなく、企業の課題解決手段であるということです。
多くの人が陥りがちなのが、「参加者が楽しんでいたから成功だ」というあいまいな評価です。
しかし、ビジネスにおけるイベントの成功の定義は、「(何となく)盛り上がった」ではなく、「当初設定した目的を達成したか」にあります。
では、具体的にどのような目的を持って企画すべきなのでしょうか。
イベントの目的は、大きく以下の2軸で整理できます。
社内向け
社外向け
このように目的を整理することで、はじめて最適な手法を選ぶことができます。
ここでは「目的によって選ぶべきイベント形式が変わる」という点を理解しておきましょう。
社内イベントで最も重要なのは、「強制参加感」を払拭し、社員が自発的に楽しみたくなる企画を提案し、作り上げることです。ここでは、オンライン・オフライン両方に対応できる視点を交えながら、社員の一体感を生むアイデアを5つ紹介します。
参加者同士の協力が不可欠なゲーム性を活かし、自然な会話と結束力を生み出します。最大の利点は、謎解きやゲームの攻略に役職や社歴が関係ないことです。フラットな関係で意見を出し合うことで心理的な距離が縮まり、クリアした瞬間の達成感をチーム全員で共有できるため、組織の風通しを良くするのに適した企画と言えます。
社員を「主役」としてスポットライトを当てたり、日頃の功績を称えることでモチベーション向上に直結させる企画です。近年のトレンドは、会場とオンライン参加者を繋ぐ「ハイブリッド開催」。地方拠点の社員やその家族も画面越しに参加できる環境を整えることで、会社全体で喜びを分かち合う演出が可能になります。周年のような機会を捉え、準備期間も含めたイベント企画を通じてしっかりと盛り上げることもエンゲージメント向上につながります。
身体を動かす、あるいはゲームに熱狂することで社員のリフレッシュを図ります。学生時代、誰もが経験したであろう運動会。企業向けのものとしては「防災」や「SDGs」の要素を取り入れた企画が注目されており、社会課題への意識を高める機会にもなります。また、eスポーツ大会であれば体力や年齢によるハンデが生まれづらいため、若手からベテランまで誰もが対等に楽しめるのが魅力でトレンドになりつつあります。
新規事業や業務改善をテーマにすることで、部署を横断してアイデアを出し合う創造的なイベントです。目的意識が明確なので、普段接点のない他部署のメンバーと知見を共有できるという効果もあります。そこで生まれたアイデアが実際の業務改善や新サービスに繋がることもあり、組織にとって実利的なメリットが大きい施策と言えますが、いかに準備段階から運営側がその気運を盛り上げられるかがカギになります。
低予算かつ高頻度で実施できるため、日常的なコミュニケーション不足の解消に役立ちます。アンオフィシャル&コンテンポラリーな形ではなく、オフィシャルかつ定期的に実施することで行事感を醸成するのがトレンドです。参加のハードルを下げるためには、会社がランチ代やおつまみ代を補助する制度設計が有効です。「タダで美味しいものが食べられるなら」という気軽な動機付けが、意外な交流を生むきっかけとなります。
社外向けイベントでは、マーケティングのフェーズ(認知・獲得・育成)に応じた企画の切り口を選ぶことが重要です。ここでは、それぞれの段階に応じた集客・販促に効果的な6つのアイデアを紹介します。
SNSを効果的に用い、フォトコンテストやハッシュタグキャンペーンなどを通じて認知を広げる施策です。参加者自身が発信源となるユーザー参加型(UGC)の仕組みを取り入れることで、企業側の一方的な発信よりも情報の拡散性が高まり、新たな層へのリーチが期待できます。
専門的なノウハウをコンパクトな形で提供する対価として顧客情報を得る、BtoBマーケティングの定石です。当日の配信だけでなく、録画データ(アーカイブ)を資産として活用することが重要です。継続的に視聴できるコンテンツとして残すことで、イベント終了後も長期的なリード獲得装置として機能します。
特定のテーマに関心のある役職者や決裁者を少人数で招く座談会形式のイベントです。一方的なセミナーとは異なり、双方向の密なコミュニケーションが可能です。参加者の本音や具体的な課題(インサイト)を引き出しやすいため、成約確度の高い質重視のリード獲得に繋がります。
既存顧客同士のコミュニティを形成し、横の繋がりを作る施策です。顧客のエンゲージメントを高めて解約(チャーン)を防ぐだけでなく、製品やサービスに対する生の要望や不満(VOC)を直接収集できる貴重な場としても機能します。
製品やサービスの世界観を、リアルな空間で五感に訴えかける手法です。単なる物販や展示で終わらせず、SNSへの誘導やアプリ登録など、オンラインとオフラインを融合させた「OMO施策」として設計することで、体験を一過性のものにせず顧客データとして蓄積できます。
親和性の高い他社とタッグを組み、相互送客を狙います。自社単独では接点を持てなかったパートナー企業の顧客層へアプローチできるため、新規顧客の開拓において強力な手段となります。
イベントは結局のところLIVEであり、生ものです。だからこそ、その企画において最も重要なのは「準備」です。「段取り八分(準備が8割)」と言われるように、当日の成功は事前の計画でほぼ決まります。ここでは、企画から実施後までを8つのステップに分けて解説します。
まずは「なぜやるのか」を定義、関係者の間で合意形成をします。成約数やブランド認知といった最終ゴール(KGI)に加え、そこに至るための中間指標である集客数やアンケート満足度などのKPIを設定し、成功の基準を数値化しておきましょう。これが準備段階のブレや遅延を修正する際の大きな指針となります。
「誰に来てほしいか」を具体化します。年齢や職種といった表面的な属性だけでなく、「今どんな課題を抱えているか」「何に興味があるか」といったインサイトまで深く掘り下げることで、ターゲットに響く企画の輪郭が見えてきます。できれば居住地やファッションなど、より具体的なイメージを作り上げておくとデザインやコピーワークなどの細部に説得力が出てきます(後述)。
設定したターゲットに対し、どのようなテーマと内容であれば響くのかを「5W2H」のフレームワークを用いて整理します。この段階で他社にはない独自性を編み出し、参加者が足を運びたくなる「面白さ」を盛り込むことができれば、あとはそれを形にするだけです。
ターゲットが参加しやすい日時を選定し、バッファも含めた無理のない予算配分を行います。同時に、リーダー、進行役、受付など、誰が何を担当するかという役割分担を明確にし、チームとしての動きを固めます。
リアル開催であればアクセスの良さや会場規模、音響・照明設備等の機材周りなどスペック面を確認します。オンラインやハイブリッド開催の場合は配信環境が重要です。ZoomやTeamsなどの配信ツールの安定性を事前にテストし、参加人数に耐えうる環境があるかを選定基準とします。
遅くとも開催の1〜2ヶ月前から集客を開始します。ターゲット層が普段情報収集に利用しているメディアを見極め、LP(ランディングページ)、SNS、メールマガジン、各種広告など、最適なチャネルを組み合わせてアプローチします。
本番でのミスを防ぐため、直前のリハーサルは必須です。分単位で動きを記した「進行台本(香盤表)」を作成し、機材トラブルや急な欠席など、不測の事態が起きた際の対応フローも共有しておきましょう。いざというときのために指示系統も明確にしておきます。
イベントはやりっぱなしで終わらせてはいけません。お礼メールの送信やアンケート回収を迅速に行います。当初設定した数値目標と結果を照らし合わせ、良かった点と反省点を洗い出すPDCAを回すことで、次回のイベント品質を高めます。
頭の中にどれほど素晴らしいアイデアがあっても、それをアウトプットし、会社から承認されなければ実現することはありません。ここでは、上司を納得させ、企画をスムーズに通すための「企画書の書き方」を解説します。
企画書には、以下の7つの項目を必ず盛り込みましょう。
企画書を通すコツは、上司が抱くであろう「懸念」を先回りして解消しておくことです。特に以下の3点は必ずツッコミが入るポイントですので、数字や根拠を用いて論理的に説明できるように準備しましょう。
晴れて企画が無事に承認されたら、いよいよ実行フェーズです。ここでは、初心者が陥りやすい罠を防ぎ、イベントを確実に成功へ導くための3つの重要なマインドセットを紹介します。
最も大切なのは、運営側の「やりたいこと」が優先になっていないか、常に自問することです。多くの社員を集めておきながら、運営側の自己満足が透けて見えるほどサムいことはありません。あくまで主役は参加者です。「参加者目線」に立ち、彼らが何を求めているかを基準に満足度を設計しましょう。
「スミマセン、逆方向の新幹線に乗りました」(登壇者)。イベントにトラブルはつきものです。天候の悪化、登壇者の急なキャンセル、当日の機材トラブルなど、予期せぬ事態は起こり得ます。常に「最悪のケース」を想定し、すぐに切り替えられる予備の計画(プランB)を用意しておくことが、成功への命綱となります。
イベントの評価は、メインのコンテンツだけで決まるわけではありません。申込みフォームの入力しやすさ、案内メールの分かりやすさ、当日の受付のスムーズさ、会場の居心地、帰りの導線など、参加者が触れるすべての接点を最適化し、心地よい体験を提供することが重要です。参加者の目線になって、会場の下見やイメージトレーニングを繰り返しましょう。
企画者のあなたがそのクオリティにこだわるほど、イベントの成功率は高まります。だからこそ社内リソースが不足していたり、ノウハウがなくて不安な場合は、無理に自社だけで完結させようとせず、外部パートナーを頼るのも有効な戦術の一つです。ここでは、外注と自社開催の判断基準について解説します。
外部のイベント企画会社を活用する場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
では、具体的にどのようなシーンで外注を検討すべきなのでしょうか。
外注を推奨するケース
参加者が数百名人以上の大規模なイベント、企業の周年行事、絶対に失敗できない重要なプロモーション、あるいはプロジェクションマッピングなど手の込んだ演出が必要な場合は、プロに依頼するのが確実です。運営のみ、配信のみなど特定の領域だけ外注することも可能です。
自社での実施を推奨するケース
あえて「手作り感」を出したい場合や、低予算で実施したい場合、高頻度で行う交流会などは自社が向いています。また、機密情報を多く扱うイベントも、セキュリティの観点から自社運営が望ましいでしょう。
イベント会社を選ぶ際は、その会社が「何が得意か(オンライン、社内イベント、展示会など)」を必ず確認しましょう。また、過去の実績を見るだけでなく、担当者のレスポンスの速さや提案力など、「相性」を重視することも成功の秘訣です。
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本記事では、社内向け・社外向け別のイベントアイデアから、失敗しないための具体的な進め方、そして上司を説得するための企画書の書き方について解説してきました。
イベント企画は多くの人を巻き込む、またとない機会です。だからこそ細部まで調整を行う必要があるため、決して楽な仕事ではありません。しかしそのぶん、社員の心を一つにしたり、新たなビジネスチャンスを生み出したりと、組織やビジネスを動かす大きな力を持っています。
始める前から難しく考える必要はありません。まずは「今回のイベントで何を達成したいのか?」という、もっとも大切な目的の明確化から始めてみてください。あなたの企画が、会社をより良い方向へ導くきっかけになることを応援しています。