セミナー動画とは、企業が開催するセミナーや講演会、ウェビナーの様子を録画・編集し、後から視聴できるようにした動画コンテンツのことです。近年、リモートワークの普及に伴い、時間や場所に縛られずに情報を得られるアーカイブ配信の需要が急増しています。一度開催したイベントを「使い捨て」にせず、資産として活用できる点が大きなメリットです。
単に録画を残すだけでなく、その活用方法は多岐にわたります。
自社でセミナー撮影を行う場合、プロのような高価な機材をすべて揃える必要はありませんが、クオリティを担保するために最低限必要な機材セットがあります。基本となるのは、「カメラ」「マイク」「三脚」の三種の神器です。これらに加え、撮影環境や配信の有無に応じて照明や周辺機器を組み合わせることで、視聴者にとって見やすく、聞き取りやすい動画を制作できます。
ここでは、それぞれの機材選びのポイントを解説します。
撮影用カメラは大きく分けて「ビデオカメラ」と「ミラーレス一眼」の2種類があり、目的に応じて使い分けます。
手ブレのある映像は、視聴者に「素人っぽい」「見づらい」という印象を与えるだけでなく、画面酔いの原因にもなります。どのようなカメラを使う場合でも、三脚は必須アイテムです。
写真用ではなく、「ビデオ用三脚」を選ぶのがポイントです。ビデオ用は「雲台(カメラを載せる台)」が滑らかに動く構造になっており、登壇者の動きに合わせてスムーズにカメラを振ることができます。また、会場の後ろからでも登壇者の目線の高さに合わせられるよう、十分な高さ(150cm〜180cm程度)が出せるものを選びましょう。
セミナー動画において、最も重要なのが「音声」です。映像が多少粗くても内容は伝わりますが、音声が聞き取りにくいと視聴者はすぐに離脱してしまいます。
カメラの内蔵マイクは周囲の雑音(エアコンの音や会場のざわめき)まで拾ってしまうため、必ず「外部マイク」を用意してください。
セミナー会場の照明だけでは、登壇者の顔に影が落ちて暗く映ってしまいがちです。特にプロジェクターを使用するために会場を暗くする場合、人物の表情が見えなくなってしまいます。
撮影用のLEDライトを1灯〜2灯用意し、登壇者を照らすことで、表情がいきいきと明るく見え、信頼感や好感度が上がります。色温度(光の色味)や光量を調整できるタイプが便利です。
「登壇者の映像」と「PCのスライド資料」をリアルタイムで切り替えたり、複数のカメラ映像を混ぜたりしてライブ配信を行う場合には、スイッチャーが必要です。Zoom 等のウェビナーツール上で画面共有をするだけであれば不要ですが、よりテレビ番組のような演出で配信のクオリティを上げたい場合には導入を検討しましょう。Blackmagic Design社の「ATEM Mini」などが定番です。
長丁場のセミナーでは、途中でバッテリーが切れて撮影が止まってしまうことが最大のリスクです。バッテリー駆動だけに頼らず、可能な限りACアダプターでコンセントから給電しながら撮影することをおすすめします。コンセントが確保できない場合に備え、大容量の予備バッテリーも必ず複数個用意しておきましょう。
SDカードは容量がいっぱいになったり、書き込み速度が遅くて録画が停止したりしないよう、スペック選びが重要です。
セミナーは1〜2時間の長丁場になることが多く、データサイズが大きくなります。途中で容量不足にならないよう、以下の目安を参考に余裕のあるサイズを選びましょう。
容量以上に重要なのが「書き込み速度」です。カメラからのデータ転送にカードの処理が追いつかないと、撮影中に突然録画が停止してしまいます。パッケージに記載された「スピードクラス」のマークを必ず確認してください。
また、万が一のエラーに備え、SDカードは必ず予備を用意し、ダブルスロット(カードを2枚挿せるカメラ)の場合は同時記録設定(バックアップ記録)にしておくのが鉄則です。ちなみにECサイトでの安価な並行輸入品には粗悪品が混ざっていることがあり、録画失敗の原因になります。信頼できる販売店で購入しましょう。
撮影機材そのものではありませんが、会場の設備も映像クオリティに直結します。
これらは当日変更が難しいため、ロケハンの段階で確認しておく必要があります。
最大のメリットは、制作コストの削減です。専門業者に依頼した場合、撮影と編集を合わせると1本あたり数十万円〜の費用がかかることが一般的です。自社で撮影を行えば、機材の初期投資さえ回収してしまえば、以降は内部の人件費のみで動画を量産できるため、コストパフォーマンスが劇的に向上します。
外部パートナーとの日程調整や見積もりのやり取りが不要になります。「来週急遽ウェビナーを開催することになった」といった場合でも即座に対応可能です。また、撮影終了後すぐにデータをチェックし、その日のうちに簡易編集してアーカイブ配信を開始するなど、ビジネスのスピード感を損なわずに情報を発信できます。
継続的に撮影を行うことで、社内スタッフのスキルが向上します。セミナー動画で培った撮影・編集のノウハウは、製品紹介動画や採用向けインタビュー動画、社内マニュアル動画など、他のコンテンツ制作にも応用可能です。結果として、マーケティング活動全体の内製化・強化につながる体制(インハウス化)を構築できます。
メリットが多い反面、安易に自社撮影を始めると、「こんなはずじゃなかった」と後悔することもあります。事前に以下のリスクを理解し、対策しておく必要があります。
外注費は削減できますが、クオリティを担保するためのカメラ、マイク、照明などの機材を揃えるには、ある程度の初期投資が必要です。また、当日の機材搬入、配線、セッティング、撮影後の撤収作業など、すべてを自社スタッフで行う必要があるため、運営担当者の負担は確実に増えます。
最も注意すべきリスクは、「撮影したものの、品質が低すぎて公開できない」という事態です。特に「音声」は素人撮影でトラブルが起きやすく、「声が小さくて聞こえない」「ノイズが酷い」といった問題は、後からの編集でも修正が困難です。映像の明るさや構図も含め、プロ品質に近づけるには一定の経験と技術が求められます。
動画制作は「撮影して終わり」ではありません。不要な「えー、あー」といった言葉をカットしたり、スライド資料の映像を見やすく合成したり、テロップを入れたりと、編集作業には動画の尺の何倍もの時間(工数)がかかります。専任の担当者がいない場合、通常業務を圧迫して残業が増える要因になりかねません。
クオリティの高いセミナー動画を制作するためには、当日の撮影スキル以上に、事前の「段取り」が重要です。全体のワークフローは以下の4ステップで進みます。
それぞれのステップで何をすべきか、詳しく見ていきましょう。
まずは「誰に」「何を」伝える動画なのか、目的を明確にします。社内用なら記録重視、集客用なら見栄え重視など、それによって必要な機材やカメラアングルが決まります。
次に、必ず会場の下見(ロケハン)を行います。以下のチェックリストを参考に、撮影の障害になる要素を事前に洗い出しましょう。
必要な機材リストを作成し、手配漏れがないか確認します。特にレンタル機材は早めの予約が必要です。
本番直前に慌てないよう、機材のセッティングは余裕を持って行い、必ずリハーサル(テスト撮影)を実施してください。特に重要なのが音声チェックです。「録音レベルが小さすぎないか」「ワイヤレスマイクの電波は途切れないか」を、イヤホンを使って実際に耳で確認します。PCとプロジェクターの接続テストも忘れずに行い、スライドが正しく投影されるか確認しましょう。
いよいよ本番です。ここでの最大のミッションは「トラブルなく最後まで録画し続けること」です。
撮影したデータを編集ソフトに取り込み、視聴しやすい動画に仕上げます。無料なら「CapCut」や「DaVinci Resolve」、ビジネス利用なら「Adobe Premiere Pro」などのソフトが代表的です。
編集後は、YouTubeやVimeo、自社サイトなどのプラットフォームにアップロードし、SNSやメルマガで告知を行って公開完了です。
機材を揃えて手順通りに進めるだけでなく、以下の3つのポイントを押さえることで、撮影の失敗を防ぎ、視聴者にとって満足度の高い動画を作ることができます。
撮影を始める前に、「この動画を誰に見せるのか」「何のために使うのか」を明確に定義することが最も重要です。
例えば、「社内の欠席者向け記録用」であれば、固定カメラで全体が映っていれば十分かもしれません。しかし、「新規顧客獲得のためのWebサイト公開用」であれば、講師の表情に寄ったカットや、スライドの見やすさ、飽きさせないための編集テンポなど、高い演出力が求められます。目的が曖昧なままだと、無駄に高画質で撮影してデータ管理に苦労したり、逆に重要なスライドが見えなくて使い物にならなかったりと、ちぐはぐな結果になりがちです。
ぶっつけ本番の撮影はトラブルの温床です。可能な限り事前に会場へ足を運び、以下の「撮影の敵」をチェックしましょう。
これらの条件を知っているだけで、当日の機材配置や設定がスムーズになり、映像・音声の品質が安定します。
余裕があれば、カメラを1台ではなく2台用意し、別々のアングルから撮影すること(マルチカメラ撮影)をおすすめします。
1つのアングルだけの映像は単調になりがちで、視聴者が飽きてしまいます。編集時に2つの映像を切り替えることで、テレビ番組のようなメリハリが生まれ、視聴維持率を高める効果があります。また、片方のカメラでトラブルがあった際のバックアップとしても機能します。
「重要なイベントなので失敗できない」「機材を揃える時間がない」といった場合は、プロの制作会社への外注が選択肢に入ります。
費用は依頼する内容やクオリティによって大きく変動しますが、一般的には「機材の数」「スタッフの人数」「編集の凝り具合」によって決まります。
大きく3つの価格帯に分けて、それぞれの相場とサービス内容の目安を解説します。
コストを最小限に抑えたい場合の相場です。
基本的には「カメラマン1名・カメラ1台」のワンマン体制で撮影を行います。
対外的に公開するウェビナーや、集客コンテンツとして活用する場合の一般的な相場です。
「カメラマン+アシスタント(またはディレクター)」の複数名体制、もしくは「カメラ2台以上」での撮影が可能になります。
テレビ番組並みのクオリティや、リアルタイムでのライブ配信を行う場合の相場です。
スイッチャーを用いた現場でのスイッチング(画面切り替え)や、照明技師による演出などが加わります。
「コスト削減のために内製化したい」と考えるのは自然ですが、目に見える支払金額だけでなく、社員の工数やリスクも含めて判断する必要があります。
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項目 |
内製(自社撮影) |
外注(プロ依頼) |
|---|---|---|
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機材費 |
初期投資が必要(数万〜数十万円) |
不要(制作費に含まれる) |
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準備工数 |
多大 |
小 |
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編集時間 |
多大 |
なし |
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クオリティ |
担当者のスキルに依存 |
高品質で安定 |
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トラブルリスク |
高い |
低い |
結論:不定期開催なら外注の方が「安上がり」な場合も
内製化は、毎月のようにセミナーを開催し、動画を量産する場合に最大のコストメリットを発揮します。
一方で、「年に数回しか開催しない」「担当者が他の業務と兼務している」という場合は、外注の方がおすすめです。機材の購入費や管理の手間、そして何より「慣れない撮影・編集作業に奪われる社員の膨大な時間(人件費)」をトータルで計算すると、プロに任せてしまった方が結果的にコストパフォーマンスが良いケースが多いからです。
セミナー動画は、一度撮影してしまえば「資産」として長期的に活用できる強力なコンテンツです。自社で撮影を行えば、大幅なコストダウンにつながるだけでなく、社内にノウハウが蓄積され、スピーディーな情報発信が可能になります。
まずは、本記事で紹介した「三種の神器(カメラ・マイク・三脚)」を揃え、社内向けの勉強会など失敗が許される場から撮影にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
一方で、対外的なブランディングに関わる大規模なイベントや、絶対に失敗できない重要なウェビナーに関しては、無理をせずプロの専門業者に依頼するのも一つの方法です。「内製」と「外注」を目的や予算に合わせて使い分け、効果的な動画マーケティングを実現させてください。
「やはり自社では機材の管理や当日の運営が不安だ」「編集まで手が回らない」という方は、ぜひ一度当社ブイキューブにご相談ください。イベント支援実績30,000件(2020年からのイベント支援実績)の経験に基づき、機材の選定から当日のサポート、プロによる編集まで、貴社のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案します。