弊社が提供している「march」は、オンライン診療機能に加え、クリニックの予約管理やCRM(顧客関係管理)といった業務支援機能を搭載したサービスです。最大の特徴は、患者様とのコミュニケーションがすべてLINEで完結する点です。
競合サービスと比較した際の強みは、機能の多彩さですね。クリニックの業務に必要なものがほぼすべて揃っており、美容クリニックなどで使われるような機器の予約といった、特殊な予約形式にも柔軟に対応できます。オールマイティな機能と、患者様にとって身近なLINEで利用できる手軽さが評価され、サービス開始から約3年で多くのクリニック様に導入いただいています。
約3年前に、コロナ禍を経て「オンライン診療市場の拡大」という予測のもと、医療現場の業務効率化と患者対応の質向上の両立を目指しサービス開発をスタートしました。実際に、お問い合わせは継続的に増え続けており、オンライン診療へのニーズの高まりを実感しています。
また、オンライン診療機能だけでなく、LINEで手軽に予約管理ができるといった業務効率化の側面からお問い合わせをいただくケースも多く、幅広いニーズに応えられるサービスとなっています。
既存SDKのWebRTCプラットフォームを利用して遠隔診療の通話機能を構築していましたが、運用していく中で大きく2つの課題を感じていました。
一つ目は遠距離での通信が不安定になる点です。例えば、沖縄の患者様と東京の医師を繋ぐオンライン診療で「繋がらない」といった声がお客様から寄せられました。P2P(ピアツーピア)での通信が基本となるため、物理的な距離が通信品質に影響を与えやすいという課題がありました。オンライン診療の「距離の壁をなくす」という大きなメリットを損なってしまう可能性があり、早急な対策が必要でした。
二つ目は、背景ぼかし機能によるPCへの負荷です。既存SDKには、背景をぼかす機能が標準搭載されていなかったため、また別のサービスを組み合わせて独自に実装していました。しかし、この「背景ぼかし」の処理が非常に重く、特にクリニックで利用されているスペックの高くないPCでは、動作がカクカクしてしまうという問題が発生していました。
はい。将来的には、診察内容を文字起こししてAIで要約し、カルテを自動生成するような機能を構想しています。こうした拡張を考えた際に、既存SDKを使い続けるよりも、映像や音声データを柔軟に扱え、AI関連の機能も豊富な「Agora」のほうが優れていると感じました。
他社SDKも候補には上がりました。しかし、1つのアカウントで同時に複数のビデオ通話(部屋)を立ち上げられないという仕様上の制約がありました。弊社のサービスは、1つのアカウントで多くのクリニック様(テナント)がそれぞれのオンライン診療を同時に行うモデルのため、仕様が合致しませんでした。
また、既存SDKにもサーバーを経由して通信を安定させるSFUプランがありましたが、コストが見合わず採用には至りませんでした。コストも含めこうした比較検討の結果、要件を満たすサービスは実質的にAgora一択という状況でした。
技術検証の段階で、品質の高さはすぐに実感できました。弊社の開発拠点がある東京とベトナムを繋いでテストしたのですが、社内のメンバーから「すごく通話品質が変わりましたね」という声が上がるほど、映像の乱れや遅延が劇的に改善されました。この第一印象が、導入の大きな決め手になりましたね。
はい、非常にスムーズでした。既存SDKでは独自に実装する必要があった機能も、AgoraはSDKに用意されたメソッドを呼び出すだけで済むなど、実装がしやすく開発の負担が軽くなりました。単なるリプレイスというよりは、新しい機能を開発するような感覚でスムーズに移行作業を完了できました。
一番の変化は、やはり通信品質が目に見えて向上したことです。これまで接続が不安定だった遠距離のオンライン診療も問題なく行えるようになり、お客様からも開始直後に「品質が良くなったね」と評価いただきました。結果として、これまで他のツールを使わざるを得なかったお客様にも、marchの遠隔診療機能を活用いただけるようになりました。
また、PCへの負荷が高かった背景ぼかしの問題も解消され、低スペックのPCでも快適に動作するようになり、CPU負荷が原因で映像がカクカクするといった問い合わせもなくなりました。
展望としては、3つの機能を活用していきたいと考えています。
まず「文字起こし」と「レコーディング」です。診察内容をテキストや動画データとして記録し、それをAIに解析させてカルテを自動生成するなど、医師の業務負担を軽減する機能開発を進めたいです。
次に「リアルタイム翻訳機能」です。近年、訪日外国人観光客(インバウンド)が日本のクリニックで診察を受けるケースが増えています。この機能を使えば、例えば日本語しか話せない医師でも、リアルタイム翻訳を介して外国人患者様を診察できるようになります。これは大きな事業機会になると考えています。
遠距離や海外との通信など、グローバルな環境での安定した通信品質を最優先に考えるのであれば、Agoraは非常におすすめです。また、私たちのように、将来的にAI連携や翻訳機能といったサービスの付加価値を高める機能拡張を見据えている場合、Agoraの豊富な機能は大きなアドバンテージになります。SDKも非常に扱いやすく、スムーズな開発が可能な点も魅力です。
| 社名 | 株式会社Wrusty |
| 事業内容 | march事業、エンジニアリングインキュベーション事業、技術顧問・コンサルティング事業 |
| 企業URL | https://wrusty.co/ |
| サービスURL |
march(マーチ) | オンライン診療のNewスタンダード |