新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、リモートワークによるWeb会議や、オンライン上で開催されるセミナー(ウェビナー)など、これまで対面で行われていた会議やイベントのデジタル活用が進んでいます。
デジタル活用が進む中で、Web会議ソフトとして国内で利用率が高いのが「Zoom」です。国内でオンライン会議ソフトを利用したことがある人のうち、78.4%がZoomを利用しているという調査結果もあり、リモートワークにおいて欠かせないツールとなっています。
ZoomはWeb会議ソフトとしての「Zoom ミーティング」は、日常的に使用している人も多く、Zoom ミーティングでウェビナー配信までしたいと考えている人もいるのではないでしょうか。しかし、ウェビナーの配信を行うのであれば、ウェビナーに特化した「Zoom ウェビナー」がおすすめです。
Zoom ミーティングとZoom ウェビナーはどちらも複数人で同時に視聴や配信を行えるツールですが、推奨されている利用シーンや機能に違いがあります。ここでは、Zoom ミーティングとZoom ウェビナーの違いから、Zoomウェビナーが向いている利用シーンまで詳しく解説します。
Zoom ミーティングとZoomウェビナーは、どちらもリアルタイムに画面や音声を大人数で共有できるツールです。一見似ている2つのツールは、利用シーンや機能に違いがあります。
Zoom ミーティングとZoom ウェビナー、それぞれに推奨されている利用シーンについて解説します。
Zoom ミーティングは、全員が同等に発言権を持っているツールです。お互いにコミュニケーションを取るミーティングや、ディスカッションが必要なイベントに向いています。
そのため、Zoom ミーティングには視聴だけを行う「視聴者」という概念はありません。あくまでも全参加者が同等に発言をして、自身のカメラやマイクの操作を行えます。音声オフや画面オフをしても、自身の画面が黒く表示されている状態です。
一方的に視聴するのではなく、参加者同士でコミュニケーションを取るシーンならZoom ミーティングを利用したほうがよいでしょう。
Zoom ウェビナーはホスト(主催者)とパネリストだけが発言権を持ちます。発言を行うのはあくまでもホストとパネリストのみのため、それ以外の参加者は視聴だけが可能です。こういった特徴から、発言するのはパネリストだけというようなイベントに最適です。
また、Zoom ウェビナーでは、カメラやマイクの操作はホストだけが行えます。この機能を利用すれば、一時的に参加者を映し出し会話することは可能です。そのため、登壇者と視聴者、先生と生徒に分かれるようなセミナーや講義にも向いているでしょう。
Zoom ミーティングとZoom ウェビナーは、利用できる機能にも違いがあります。そのなかの4つの機能を紹介します。
Zoom ミーティングは、プランに応じて一度に参加できる人数は100~1000人まで参加できます。
上限人数は主催しているアカウントのプランによって異なり、無料プランとProは100人まで、Businessは300人まで参加が可能です。大企業向けのEnterpriseプランでは、参加上限が500人になります。Zoom ウェビナーを同時に利用することで、視聴だけの参加者500人と合わせて1000人まで利用可能です。
一方、Zoom ウェビナーは1万人まで視聴できます。参加人数が多いのであれば、Zoom ウェビナーのほうがよいでしょう。
参加者の匿名性を求めるのであれば、Zoom ウェビナーが向いているでしょう。
Zoom ウェビナーでは、参加者を一覧で見られるのはホストとパネリストのみです。また、発言権の無い視聴者同士では、自分の他に誰が参加しているのか分からず、参加者の匿名性を確保できます。
Zoom ミーティングは、参加している全員が参加ユーザーを一覧で見られます。そのため、本名で登録している人は参加者に自分が参加していることが分かる状態です。Zoom ミーティングで不特定多数が参加するイベントを開催するときには、ニックネームやイニシャル参加を呼びかけるなどの、配慮が必要です。
参加者同士を小規模のグループに分ける「ブレイクアウトルーム」は、Zoom ミーティングだけが利用できる機能です。
Zoom ミーティングでは、最大で50のブレイクアウトルーム作成が可能で、参加者をルームに自動もしくは手動で割り当てられます。また、参加者が好きなルームを選択することもできます。
ブレイクアウトルーム内での発言やチャットは、ほかのルームからは見られません。そのため、グループディスカッションや、グループワークを行うのであれば、ブレイクアウトルームがあるZoom ミーティングのほうがよいでしょう。
Zoom ウェビナーは収益化オプションを利用することで、セミナーを有料開催できます。そのため、コンテンツ配信やオンラインイベントの開催など、Zoom ウェビナーを利用して配信の収益化を図れるようになるでしょう。
ちなみに、Zoomでは支払いシステムとしてPayPalとの連携が簡単に設定できるため、申し込みと支払いをZoomのシステム上で完結できます。
参考:PayPalを使用したZoom Webinarsの設定
Zoom ミーティングとZoom ウェビナーの違いについて説明してきましたが、ここからは違いを踏まえてZoomミーティングよりもZoom ウェビナーを利用すべきケースを3つ紹介します。
参加者が1000人以上見込まれる大規模イベントを開催するなら、Zoom ウェビナーが最適です。
Zoom ミーティングでは、有料ライセンスを購入しても最大500人までしか参加できません。500人が参加できる企業プランは参加上限が500人のZoom ウェビナーのアドオンが含まれているため、合わせて1000人まで視聴できます。
もし1000人以上の視聴者が参加する可能性がある場合は、はじめからZoomウェビナーで対応する人数のアドオンプランを購入したほうがよいでしょう。
また、Zoom ウェビナーはシステム連携によりYouTubeやFacebookで同時配信も可能です。Zoom ミーティングは後日YouTubeなどに録画動画をアップロードすることはできますが、同時配信はできません。
より多くの参加者が見込まれる大規模イベントでは、閲覧できるプラットフォームが多いZoom ウェビナーを利用することでイベントの幅が広がるでしょう。
Zoom ミーティングでは、参加者の映像や音声が他の参加者に流れてしまう可能性があるため、秘匿性の確保が必要な社外向けイベントにはZoom ウェビナーが向いています。
Zoom ウェビナーの「視聴者」は、ホストおよびパネリストが許可をしない限りカメラやマイク、画面共有を使用できません。質疑応答やチャット、投票などのホストが設定した機能のみを利用可能です。
視聴者にとっても自分の画面や音声、登録している名前が出ないため、より気軽に参加できるようになります。顧客獲得のためのオンラインセミナーやオンライン展示会などの社外向けイベントは、Zoom ウェビナーのほうが適しています。
開催したオンライン配信などの結果をマーケティングや営業で活用したいのであれば、Zoom ウェビナーのレポート生成が役立ちます。
Zoom ウェビナーでは、開催したウェビナーに関するレポートを生成できます。ユーザーの入退室時刻、合計視聴時間だけではなく、ウェビナー内で実施したQ&Aや投票の結果をユーザーごとに一覧で表示可能です。
これにより、参加したユーザーへのフォローや次回ウェビナーの内容改善につなげられるでしょう。また、生成したデータはダウンロード可能なため、関係者間での情報共有も容易にできます。
便利なZoom ミーティングとZoom ウェビナーですが、利用する際に知っておきたい注意点があります。
Zoom ミーティングは有料・無料関係なくすべてのユーザーが利用できる機能ですが、無料(ベーシック)ユーザーはZoom ミーティングを40分しか利用できません。
ただし、無料ユーザーでもZoom ミーティングの開催回数に制限は無く、100人までのZoom ミーティングが開催可能です。なお、無料ユーザーはZoom ウェビナーを利用できません。Zoom ウェビナーの利用には有料ライセンスの購入が必要になります。
Zoom ウェビナーを開催できるのは有料ライセンスを持つユーザーだけですが、そのほかにもZoom ウェビナー開催用のアドオンプランを契約する必要があります。
アドオンプランは参加人数によって料金が異なり、一番安い500人のプランは月額¥10,700円、10,000人のプランでは月額¥872,300円に設定されています。月額プランより年額プランのほうが安く設定されているため、継続的にZoom ウェビナーを開催するのであれば年額プランで一括支払いをしたほうがお得です。
ただし、企業プランを利用している場合は、プラン内に500人まで利用できるZoom ウェビナーのアドオンが含まれています。企業プランを利用していて、ウェビナーの利用が500人までであれば別途アドオンを購入する必要はありません。
Zoom ミーティングは双方向コミュニケーションを目的としたWeb会議機能ですが、Zoom ウェビナーはホストが視聴者に対して情報を提供する一方通行のオンラインセミナー機能です。
それぞれ参加人数の上限や、料金などに違いがあり、社内のミーティングや参加者同士のディスカッションを行いたいならZoom ミーティング、社外向けのセミナーやオンライン講座に使いたいならZoom ウェビナーの利用が向いています。自身の利用したいシーンに合わせて、Zoom ミーティングとZoom ウェビナーを上手に使い分けましょう。