水処理の総合エンジニアリング企業であるオルガノでは、発電所や浄水場、各種工場などに水処理装置を納入するプラント事業を展開している。同社では2018年2月、国内外のプラントでコニカミノルタ製のスマートグラス「WCc(Wearable Communicator)(ウェアラブルコミュニケーター)」向けの遠隔作業支援ソリューション「Smart Eye Sync」を活用した実証実験を行い、現場作業員に対しての遠隔支援の有効性を確認。2019年に入り実務への展開を図るため、新規建設納入業務において、現場側にWCcを導入し、「Smart Eye Sync」を介して本社の設計部門が遠隔支援を行う運用をスタートした。
遠隔地の建設現場に設計部門の担当者が直接赴くことは、時間とコストの制約により回数が限られてしまう。
デジカメで撮影した画像や映像を見ながら電話で話をしても、設計者が確認したい箇所と差異があるなど、状況把握から具体的な指示対応までに時間を要する。
すべての現場に、異なる専門性を持つスタッフを配置するのは現実的ではない。
現場のリアルな状況を、現場監督者の目線と同じ映像で本社の設計者が確認できるので、直接現場に足を運ばずに状況を把握。
週1回の定例会で、現場の映像を本社にいる設計者が逐一確認できるようになった。その結果、施工後の総点検での指摘事項が激減する効果が生まれた。
「設計者が確認したい箇所と違う映像なので撮影し直して再送」といった手間が不要になり、意思疎通のための時間が大幅に短縮。
WCcの映像を見ながら設計者が現場の監督者に「目線をもっと上に」など、知りたい箇所を具体的に指示して現状をすぐに理解できるので、状況把握から対応策検討までスピーディーなコミュニケーションが可能。
現場の状況にあわせて、専門知識を持つスタッフの支援を遠隔で受けることで、サポートの質を向上。
現場の状況をWCc経由で伝えて指示を仰げるので、状況に応じた専門知識を持つ設計者による的確な対応が可能になり、監督者の安心感も増す。
細かい部分もクリアな映像で共有でき、正確な判断や支援が行えること
現場作業を妨げない装着性であり、両手が空き、視界を遮らないなど、作業員が安全に作業できること
電力事業部 電力ビジネスユニット 事業開発リーダー 府川 潤平 氏
業務効率化を主導している立場で、2018年の実証実験から「WCc」と「Smart Eye Sync」に関わってきました。発電所や浄水場、各種工場などに水処理装置を納入するプラント事業は、お客様のご要望通りの施工をするとともに、納期を正確に守ることも“品質”の担保にあたりますので、遠隔支援による業務効率化は非常に重要な取り組みだと考えています。
技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ 右田 和也 氏
発電所の水処理設計を担当していますが、2018年の実証実験の話を聞き、「設計業務における現場とのコミュニケーションでWCcを活用できないか」「設計者が現場に行って判断していた業務を効率化できないか」との思いで、今回の活用を発案しました。効率化の取り組みによって、より工数を削減した設計の進め方や、さらなるコストダウンの方法などを議論する時間を確保することができました。
技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ 中村 薫 氏
設計者が現場で立ち会う施工後の総点検において、「トラブルとまでは言えない小さな不具合」も報告するケースがありました。しかし、遠隔支援ツールを導入した後は、週1回の定例会で小さな不具合は現場映像をもとにその場で対応できるようになったことで、施工後の総点検での指摘事項が激減しました。定例会を行う前は1日3回あった現場からの相談・問い合わせの電話が、1回に減るといった効果も生まれています。
生産建設部 電力環境グループ 電力工事チーム 東 寛太郎 氏
私は現在、発電所における水処理設備の施工監督を行っていますが、WCcの活用により意思の疎通が格段にスピーディーになりました。例えば、手すり端部同士の据付高さが合わないという事象が発生した時に、本社の設計部門にデジカメ映像を送り電話で説明をしていたこれまでのやり取りでは、解決までに半日以上かかっていたようなケースも、15分のミーティングで解決したこともあります。
オルガノでは、2018年の実証実験を経て、発電所における水処理設備の新規建設現場と、本社設計部門との間でコミュニケーションの円滑化を図るために、スマートグラス「WCc」と遠隔作業支援ソリューション「Smart Eye Sync」を実業務で活用し始めた。
現場監督者である東氏がWCcを装着し、現場目線での映像を本社設計者である右田氏、中村氏と会話を交えてリアルタイムに情報共有。設計者は現場からの映像を参照しながら指示を出したり、変更点の確認などの判断を行うことが可能。また、本社からの指示は、音声だけでなく映像に書き込むこともでき、書き込まれた線や文字は、現場の監督者が装着したWCcのディスプレイに表示され、現場側ではより具体的に指示の内容を把握することができる。
WCc(Wearable Communicator)(ウェアラブルコミュニケーター)
独自技術のホログラフィック光学素子により、従来のヘッドマウントディスプレイにおいて課題として挙げられていた「大きい、重い、視界を遮る」を解決。
ハンズフリーで作業しながら、用途に応じた情報をリアルタイムに受け取ることができ、業務の効率化を図ることができる。
Smart Eye Sync(スマートアイシンク)
クリアで解像度の高い映像や音声を、検査員と本社間でリアルタイム共有。
Smart Eye Syncでは、パソコン画面への書き込みをWCcにホログラムで表示することもできるため、現場作業の遠隔支援に適している。
片目のシースルーディスプレイは、段差や階段などが多い建設現場において十分な視界を確保し、安全性が十分に保たれる。
「作業性、安全性、装着性」を第一に考えた設計となっている。