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クラウドPBXの仕組みは?従来型PBXとの違いと特徴を解説

作成者: 山本脩太郎|2024.10.22

インターネット上に設置されたPBX(電話交換機)を経由して、内線・外線が利用できるクラウドPBX。働き方の多様化やコスト削減などを理由に注目されているビジネス向けの電話システムです。

オフィスにいなくても電話対応が可能なうえ、自社でPBXや電話回線を用意する必要がないことから、導入や運用にかかる手間・コストを抑えやすいというメリットがあります。また、光回線の普及や5G登場による通話品質の向上、NTTにおけるアナログ回線の廃止も普及を後押しする要因といえるでしょう。

しかし、従来型のPBXとどのような点が異なるのでしょうか。この記事では、クラウドPBXの仕組みについて解説しています。従来型のPBXとの違いや特徴をお伝えするので、導入検討時の参考にしてください。



クラウドPBXの仕組み

PBX(Private Branch Exchange)とは、電話回線を制御する電話交換機のこと。複数の電話機で同一回線を利用するための装置で、主にビジネスシーンで導入されています。

一方、クラウドPBXはPBXをクラウド上のサーバーで運用する電話システムです。電話の着信・転送・内線通話・ボイスメールなどの機能がインターネット経由で提供されます。そのため企業は、IP電話やスマートフォンなどのデバイスをクラウドPBXに接続することで、オフィスへ出社することなく、場所を選ばず電話サービスの利用が可能です。

クラウドPBXは、SIP(Session Initiation Protocol)という通信プロトコルを使用しており、音声データをパケット化して送受信することで高品質な音声通話を実現しています。また、ユーザーはWebベースの管理ポータルを通じて、通話設定・ユーザー追加・番号の設定・コールルーティングなどが簡単に管理可能です。

従来型PBXとの仕組みの違い

従来型PBXとクラウドPBXは、どのような点が異なるのでしょうか。違いについて解説します。

 PBX(電話交換機)の設置場所と構造

PBX(電話交換機)の設置場所・構造には、以下のような違いがあります。

  • 従来型PBX:企業のオフィス内に物理的に設置
  • クラウドPBX:クラウド上のサーバーに構築

従来型PBXは、オフィス内にPBXを設置し専用回線を敷設するため、自社で導入・設置・保守・運用が必要です。PBXは電話回線(アナログまたはデジタル)に直接接続されており、オフィス内の電話機もPBXに接続されています。

通話は主に社内の電話線やPBX内の回路で処理され、社外通話のためには外部回線を通じて通信キャリアと接続します。

しかし、クラウドPBXは物理的な機器の設置が不要です。ベンダーが提供するサービスを利用し、クラウド上に構築したPBXを通して通信を行います。デバイス(電話機・PC・スマートフォン)はインターネットを介してクラウドPBXに接続され、通話はVoIP(インターネットを用いて音声通信を行う技術)プロトコルが使用されます。

通信プロトコルと音声データの処理方法

プロトコルやデータ処理には、以下のような違いがあります。

  • 従来型PBX:アナログ信号またはISDN(Integrated Services Digital Network)などのデジタル信号として伝送
  • クラウドPBX:VoIPプロトコル(SIP:Session Initiation Protocolなど)を使用してパケット化され、インターネットを通じて送受信

従来型PBXの内線通話は、通常PBX内の回路で直接処理され、外部との通話はPSTN(公衆交換電話網)を介して行います。

一方、クラウドPBXの音声データは、クラウドPBXサーバーがすべての通話を処理し、外部のPSTN網(固定電話の加入電話回線ネットワーク)や他のVoIPサービスと接続します。

機能提供の方法

電話の転送・保留・留守番電話・会議通話など機能の提供方法には、以下のような違いがあります。

  • 従来型PBX:PBXハードウェアに直接実装
  • クラウドPBX:クラウド上のソフトウェアとして機能を提供

従来型PBXの機能は直接ハードウェアに実装されているため、新しい機能を追加する際はハードウェアの追加やソフトウェアのアップデートが必要です。

一方、クラウドPBXでは、ハードウェアの追加やソフトウェアのアップデートがクラウド上で自動的に行われます。機能はAPIを通じて外部システムと統合されることが多く、他のクラウドサービス(CRMやコラボレーションツール)との連携が容易です。

冗長性と可用性の確保

冗長性と可用性の確保には、以下のような違いがあります。

  • 従来型PBX:複数のPBX機器やバックアップ電源の設置が必要
  • クラウドPBX:サービスプロバイダ側で確保

従来型PBXで冗長性を確保するためには、物理的に機器を増設しなければならず、故障時には現地での修理が必要です。

一方、クラウドPBXは冗長性をサービスプロバイダ側で確保しています。複数のデータセンターに分散してサービスが提供されており、障害時も自動的に他のサーバーに切り替わります。また、サービスプロバイダがバックアップと復旧を担当するため、ユーザー側のメンテナンスは不要です。

ネットワーク要件

ネットワーク要件では、以下のような違いがあります。

  • 従来型PBX:社内ネットワーク・電話線のインフラ整備が必要
  • クラウドPBX:高品質なインターネット接続が必要

従来型PBXは、PBX機器を設置したうえで専用配線や専用回線を利用するため、大掛かりな工事が必要になります。また、拠点が複数ある場合は、拠点ごとにPBXの設置・専用回線の敷設をしなければなりません。

クラウドPBXでは、ネットワークの帯域幅と品質が通話品質に影響するため、高品質なネットワーク環境が必要です。導入時はプロバイダとの契約プランを確認しましょう。光回線や専用線などが推奨されています。

また、社内のインターネット回線は業務システムやメールの送受信などさまざまな用途に使われることから、音声トラフィックを優先させることが必要です。通信品質を維持・向上させるために、QoS(ネットワーク上のサービス品質を保証する技術)の設定が推奨されることもあります。

従来型PBXと比べたクラウドPBXの特徴

ここからは、従来型PBXと比較した際のクラウドPBXの特徴を紹介します。

運用管理方法

クラウドPBXの管理は、IT管理者がWebベースのポータルで行います。リモートで設定変更やユーザーの追加・削除が可能です。アップデートはサービスプロバイダが行うため、ユーザー側の作業はありません。

従来型PBXの場合は自社で保守・運用が必要となり、管理は専門技術者によって行われます。システムの設定変更やアップデートは機器に直接アクセスし、機能追加時も新たなハードウェアやソフトウェアの購入が必要です。

スケーラビリティ(拡張性)

クラウドPBXは拡張性が高く、事業拡大などに適しています。ユーザーの追加や新しい機能の導入は、Webポータル上ですぐに対応できるため、迅速かつ効率的な拡張が可能です。新たな機器を購入する必要もないため低コストを実現できます。

従来型PBXの場合、自社に合ったシステムを構築しやすいという点はメリットですが、ハードウェアの増設や配線の変更が必要です。そのため拠点の拡大や従業員の増減に対応するには、時間とコストがかかり、拡張性に欠けるといえるでしょう。

コスト構造

クラウドPBXは初期投資がほとんどなく、低コストで導入が可能です。サブスクリプション型の料金モデル(通常は月額料金)が採用されるため、コスト予測がしやすいというメリットもあります。

ハードウェアのメンテナンスや修理はサービスプロバイダ側で対応するため、保守・メンテナンス費用も不要です。既存のデバイスを利用できれば、新たな端末の購入も必要ありません。

一方、従来型PBXは初期投資の大きさがネックといえるでしょう。PBXの購入費用・設置費用・配線費用・保守費用がかかり、導入数が多くなるほど費用はかさみます。さらに故障時の修理やハードウェアの更新も定期的に必要です。

機能の更新とアップグレード

クラウドPBXでは、機能の更新やアップグレードがクラウド上で自動的に行われ、最新の機能をすぐに利用できます。基本的に保守やアップグレードはサービスプロバイダ側が対応し、追加費用はかかりません。

従来型PBXの場合、機能の更新・追加をする際にはハードウェアの交換や新しいソフトウェアのインストールが必要です。工事や設定には専門的な知識が必要とされ、時間やコストが大きくなります。

リモートワークの対応

クラウドPBXは、インターネット環境下であればどこからでも利用できるため、社外からの電話対応が可能です。スマートフォンやPCにダウンロードしたアプリにも同様の機能が提供でき、リモートワークにも柔軟に対応できます。

しかし、従来型PBXはリモートワークへの対応が難しく、通常はVPN(仮想の専用回線)や特別な設定が必要です。電話の受発信がオフィス内に限定されることから、電話対応のために出社を余儀なくされるでしょう。

まとめ

クラウドPBXは、ネットワーク環境が通話品質に影響するものの、PBXの設置が不要で保守や管理にさほど手がかからないという特徴があります。従来型PBXに比べて、導入時の初期費用や時間が抑えられる点もメリットです。浸透しつつあるリモートワークへの対応も柔軟に対応できることから、新しい働き方の定着やオフィス環境改善にも役立つでしょう。