DX推進やリモートワークの普及などにより、営業活動においてもデータを活用する機会が増えています。HubSpot Japan株式会社の調査によると、営業活動の進め方や意思決定において「データを重視する」との回答は44.5%、「人間の感覚を重視する」が55.5%となったことから半数近くがデータを活用していると考えられます。
そこで本記事では、商談内容を分析し、営業に活用する「商談解析」の概要や目的、実現できる事柄について解説します。
商談解析とは、営業の打ち合わせや顧客とのミーティングなどの商談内容・データを分析し、営業活動の改善や成果向上を目指す手法です。セールストークを分析することで課題の把握・改善を行い、より効果的な商談手法の発見を目指します。
商談の内容や進捗を客観的に把握するために、AIやテキスト解析、録音データの自動文字起こしなどを利用するのが一般的です。
商談解析を行う主な目的を4つ紹介します。
1つは、営業活動の効率化です。個人のスキルや経験に依存していると、商談が成功した要因が分かりにくく、再現性もないため安定した売上獲得が難しくなります。しかし、商談解析により効果的なトークパターンや商談の成功要因を特定し、チーム全体に展開することで属人化の防止が可能です。
また、データに基づいた分析から購買傾向などを把握すれば、顧客の関心や課題を抽出できます。機会損失を防ぎ、適切な提案に活かせるでしょう。
2つ目は、営業のスキルアップです。トップ営業の会話を分析し、他の営業担当者のトレーニングに利用することでノウハウが蓄積され、組織全体のスキルアップにつながります。また、個別の弱点を把握し、フィードバックも提供できるため教育にも有効です。
商談の可視化も目的の1つです。商談解析により商談の進捗状況や成功確率を可視化することで、案件の優先順位付けが支援でき、営業プロセスを最適化できます。また、営業活動の課題や改善策が明確になり、ボトルネックの把握にも役立つため、データに基づいて迅速な営業戦略の立案が可能になるでしょう。
4つ目は、コンプライアンスの強化です。顧客との商談履歴を管理すれば、発言や対応の正確性を確保できます。通話を録音することで誤解やクレームを未然に防ぎ、トラブル時の証拠資料としても有効です。営業活動における説明の不備や、無理な勧誘などの防止にも役立ち、コンプライアンスの向上につながります。
商談解析の普及にはどのような背景があるのでしょうか。考えられる4つの理由について解説します。
大きな理由の1つにデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が挙げられます。企業全体で業務のデジタル化が進み、営業活動でもデータを活用する動きが加速しました。経済産業省は企業によるDXへの取り組みを推進しており、経営者に求められる対応として「デジタルガバナンス・コード」を取りまとめています。
特にコロナ禍以降は、非対面が推奨されたことでリモート商談が急増。商談の記録や解析がオンラインで自然に行われる環境が整ったことも要因の1つと考えられます。
自然言語処理(NLP)や音声認識技術が進化し、商談の会話データを自動で解析できるようになったことも商談解析が普及した大きな要因です。以前は手作業で録音データを確認していましたが、今ではAIが自動で文字起こしをし、顧客の反応や感情を分析するサービスが普及しています。高い精度により誤認識を減らせるうえ、人手不足という課題解消にもつながっています。
コロナ禍を機にリモートワークが浸透しましたが、出社しないことで営業チームの進捗管理が難しくなり、商談の見える化が不可欠となりました。部下としても報告・相談がしづらくなることで、生産性や業務効率の低下が懸念され、人材育成の妨げになる可能性も考えられるでしょう。そのため商談解析は、チームの営業活動をデータで管理・改善する手段として注目されています。
セールスイネーブルメントの普及も背景として考えられます。セールスイネーブルメントとは、営業組織の強化や改善を目的とした取り組みです。営業ツールの導入や営業プロセスの改善などを実施し、営業活動の最適化・効率化を目指します。
これまで営業現場では、個人の「経験や勘」に依存する営業スタイルが一般的でした。しかし、成果につながるアクションを再現性ある形でチーム全体に展開することが重要になっています。商談解析を通じて成功パターンを発見し、標準化することで営業組織全体の底上げが期待できます。
商談解析でどのようなことが可能なのでしょうか。商談解析で実現できることを紹介します。
まず、商談内容の文字起こしが可能です。ZoomやTeamsなどオンライン商談の録音データをAIが自動で文字起こしします。利用するサービスによって機能もさまざまですが、会話の中で出たキーワード(商品名、顧客の課題など)をタグ付けしたり、重要な部分だけを抜粋して共有したりするなども可能です。
例えば、営業チームが「価格」や「導入時期」というテーマで商談を振り返りたい場合、そのキーワードにタグ付けされていれば、後で簡単に検索ができます。
NLP(自然言語処理)により、顧客の話し方がポジティブかネガティブか、どのタイミングで強く反応したかなどの感情解析が可能です。AIが「顧客は価格の説明に否定的な反応を示した」と分析したならば、情報提供の仕方や別の提案を準備することができるでしょう。顧客が興味を示したトピックを特定することで、次回の提案に活かせます。
商談の成功事例から、成約率の高いトークパターンや進行フローを抽出することが可能です。例えば、トップ営業の商談が「課題を最初に提示する」パターンが有効だと判明した場合、それをチーム全体に展開します。他の営業メンバーにナレッジ共有することで、チーム全体のスキルアップを促進できます。
商談の進行状況を解析し、成功率を予測できます。「成功確率80%」「次回フォローが必須」などのように、各案件の状況に応じてアラートで表示。フォローが必要な商談を自動通知するため、適切なタイミングでより質の高い商談を検討できます。
商談内容が自動でCRM(Salesforce、HubSpotなど)に入力され、顧客情報との紐付けが簡単に行えます。商談記録をリアルタイムに共有することで、スムーズな営業の引き継ぎや分析が可能です。また、商談内容の要約も自動でCRMに登録されるため、次回アプローチの参考資料として活用できます。
商談時の録音や文字起こしの内容が自動保存されるため、発言の正確性を保証できます。例えば、クレームが発生した際に、過去の商談記録から発言を確認し、迅速な対応が可能です。商談内容が記録されることで誤解やクレームを未然に防ぎ、適切な対応を促す効果も期待できます。
前回の商談の振り返りをもとに、AIが次回アクションの提案を提供します。もし、AIが「価格ではなく、導入時のサポートが鍵になる」と分析した場合、方針を変更し、適切な商談を検討できるでしょう。成功につながるインサイトを素早く発見することで、成約率の向上が目指せます。
各商談の質や対応スピードを分析し、KPIを定量的に管理します。モニタリングによって、営業現場の実態を把握できれば、問題の早期発見が可能です。例えば、成約率の低い営業が、特定のフェーズでつまずいていたならば、原因を明確にし改善策を講じられるでしょう。また、チーム全体の活動量を可視化することで、成果に基づいた評価が行えます。
おすすめの商談解析ツールを3つ紹介します。
Zoom Revenue Acceleratorは、ZoomミーティングやZoom Phoneにアドオンして利用できる会話型インテリジェンスソフトウエアです。会話型AI機能が実装されており、レコーディングを行うとAIが会話内容を解析。
データに基づくインサイトをポータル画面に提供して、効果的なコミュニケーションをサポートします。通話・商談の分析データは自動連携機能によって外部ツールに共有されるため、入力作業の手間もかかりません。
aileadは、Web会議ツールやSFAと連携することで商談データを自動収集し、AIが解析・可視化する商談解析クラウドです。手作業で行っていた商談の記録・共有作業を自動化できるため、業務効率化が期待できます。
また、商談内容が可視化されることで、営業活動における課題の把握・解決も可能です。簡単に外部ツールと連携できるため、今までの業務フローをそのままに導入できる点も魅力でしょう。
参照:ailead
amptalkは、電話や商談内容の記録・書き起こし・解析をして、SFAに自動入力するオンライン商談自動化ツールです。活動記入作業が軽減され、SFAへの紐付けも適切に行われるため情報精度が向上します。話者を時系列に沿って可視化・定量化できる点も特徴。短時間で視覚的に把握でき、トーク改善にも役立ちます。また、ISO27001(ISMS)を取得するなどセキュリティ対策も万全です。
参照:amptalk
DXの加速やAI技術の進化などを理由に、個人のスキルに依存しやすかった営業にもデータ活用の動きが見られます。商談解析によって営業活動の効率化・最適化を実現でき、属人化を防ぐことで組織全体のスキルアップにも役立つでしょう。ツールには営業活動をサポートするさまざまな機能が備えられていますので、自社に合ったものを比較検討してみてください。