PBXを長期間使い続けている場合は、不具合が生じる前にリプレイスが必要です。システムが老朽化すると運用にかかる手間やコストが増加する可能性もあるため、適切なタイミングでリプレイスを検討しましょう。
この記事では、PBXのリプレイスについて詳しくご紹介します。リプレイスのメリットや注意点、具体的な流れなどを解説しているので、PBXのリプレイスの必要性を感じている方はぜひ参考にしてください。
PBXのリプレイスとは、既存の電話交換システム(PBX)を新しいシステムに置き換えることを指します。従来のアナログ型PBXやオンプレミスPBXを使用している企業では、リプレイスの際に最新の技術を活用したIP-PBXやクラウドPBXへ切り替えるケースが主流となっています。
PBXリプレイスの主な目的は、既存システムの老朽化への対応や通信コストの削減、新しい機能の導入などです。企業の規模やニーズに合わせて最適なPBXにリプレイスすることで、より利便性やコストパフォーマンスの高い電話システムを構築できます。
PBXのリプレイスは、次のような目的で実施されます。
それぞれの目的について、以下で詳しく見ていきましょう。
PBXのリプレイスが必要な理由のひとつに、システムの老朽化があります。PBXの法定耐用年数は6年とされているため、この年数を目安にリプレイスを検討してください。
法定耐用年数を超えても問題なく使い続けられるケースは多いものの、通話品質の低下や突然の故障のリスクが高まります。特に、電話が急に使えなくなると業務に大きな支障をきたすため、注意が必要です。
PBXを長期間使い続けていると、メーカーのサポートが終了したりや部品の調達が難しくなったりする可能性もあるため、適切なタイミングでのリプレイスを計画しましょう。
通信費やメンテナンス費用が高額になっている場合も、PBXのリプレイスの検討が必要です。特に、電話回線の追加やオフィスレイアウト変更時に設定変更や工事をベンダーに依頼しなければならない運用では、想定以上のコストがかかっているケースがあります。
近年はクラウドPBXのような拡張性に優れた電話システムも登場しており、回線の管理やメンテナンスが効率的に行えるようになりました。このように適切なシステムやサービスを選ぶことで、運用コストの大幅な削減が期待できます。
従来のPBXはオフィス内の電話機でしか利用できない場合が多く、オフィス外からの利用や、パソコンやスマートフォンからの通話はできません。この制約により、テレワークのような柔軟な働き方を実現する上で障害となっているケースも少なくありません。
そのため、働き方改革を促進するためにPBXのリプレイスを進める企業が増えています。クラウドPBXのようなインターネットを利用するシステムであれば、オフィス外からパソコンやスマートフォンを使った通話が可能で、場所にとらわれない柔軟な働き方を実現できます。
PBXのリプレイスは、セキュリティ強化を目的として行われるケースもあります。古いシステムを使い続けていると、スペック不足により最新のソフトウェアや通信技術への対応が難しくなり、結果としてセキュリティレベルが低下してしまいます。
このような状況では、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクが上がるため、適切な時期にリプレイスを行わなければなりません。セキュリティ対策を施した最新のPBXに置き換えることで、安心してオフィス電話を利用できます。
PBXにはいくつかの種類があり、リプレイスの選択肢としては次の3つが挙げられます。
オンプレミスPBXは、社内にサーバーを設置して管理する従来型のPBXです。高度なカスタマイズやデータ管理が可能なため、特別な業務要件がある場合でも柔軟に対応できます。ただし、初期費用が高額になりがちで、定期的な保守や運用の負担が発生する点に注意が必要です。
クラウドPBXは、PBXの機能をインターネット経由で提供するクラウドサービスです。PBX本体の購入費や工事費が発生しないため初期費用を抑えられ、オフィス外からでも利用できるのが大きなメリットです。一方で、通話品質がネットワークの安定性に依存する点に注意しましょう。
ハイブリッドPBXは、オンプレミスPBXとクラウドPBXを組み合わせたものです。既存の電話環境を大きく変更することなく、段階的にクラウドへの移行を進めることができます。これにより、リスクを分散しながら柔軟な運用が可能です。
PBXをリプレイスすると、さまざまなメリットがあります。ここでは、PBXのリプレイスによって期待される効果について詳しく見ていきましょう。
既存のPBXの運用コストが多くかかっている場合、リプレイスによってコスト削減を実現できる可能性があります。例えば、クラウドPBXは日々のメンテナンスや管理をベンダーに任せられるため、社内での保守作業が不要です。インターネット経由でサービスが提供されるため、電話回線を増設する場合も物理的な回線工事は必要ありません。
そのため、長期的なコスト削減効果が期待できます。回線の追加や設定変更もWeb上で簡単に行えるため、運用の手間も軽減されるでしょう。
リプレイスの際にIP-PBXやクラウドPBXなど、インターネット経由で通話ができるものを選ぶと、柔軟な働き方をサポートできるのもメリットのひとつです。自宅や外出先からパソコンやスマートフォンでオフィス電話の機能を利用できるため、時間や場所にとらわれない働き方を実現できます。
テレワークの導入時に、「電話応対のために誰かが必ず出社しなければならない」という課題に直面している企業も少なくありません。クラウドPBXなら自宅からでもオフィスの代表電話で受発信ができるため、テレワークを推進しやすくなるのもメリットです。
クラウドPBXの中にはビデオ会議やチャット、CRMとの連携など、多彩な機能を提供しているものもあります。高機能なPBXにリプレイスすることでオフィス電話の機能を拡充でき、業務効率の向上やコミュニケーションの促進につながるのがメリットです。
例えば、電話システムとCRMを連携すると、着信時に顧客情報を自動で表示できます。こうした機能は業務改革にも役立ち、サポートデスクや営業のように電話でのやりとりが重要な部門では特に喜ばれるでしょう。
PBXのリプレイスが必要な理由としても紹介しましたが、最新のシステムへの切り替えによってセキュリティを強化できるのもメリットです。最新の通信暗号化技術や認証機能を搭載したPBXを選ぶことで、通話内容や保存データを守り、情報漏洩のリスクを抑えられます。
PBXのリプレイスはいくつかの課題やリスクを伴うため、事前に把握しておきましょう。ここでは、PBXのリプレイス時に注意しておきたいポイントを3つ紹介します。
既存のPBXから新しいPBXに切り替える際、一時的に電話が使えなくなる「ダウンタイム」が発生するリスクがあります。ダウンタイムのタイミングや時間、業務に与える影響などを事前に確認し、対応を検討しておきましょう。詳細な移行計画の策定や事前テストを行い、業務への影響が大きい場合には従業員や取引先への周知も必要です。
新たなシステムの初期導入費用や月額費用が当初の予算を上回るケースもあり、予想外の出費が発生するリスクにも注意しましょう。このようなコストの不透明性を回避するためには、移行先サービスの比較検討時に詳細な見積もりを取得し、具体的かつ長期的な費用計画を立てることが重要です。
PBXのリプレイスに伴ってオフィス電話の使用感が大きく変わる場合は、従業員の適応も大きな課題となります。サポートが不十分では業務効率の低下や従業員のストレスを招く可能性があるため、サポート体制も整えておきましょう。トレーニングやマニュアルの整備、サポート窓口の設置などを行い、従業員が新しいシステムにスムーズに移行できるよう対策が必要です。
PBXのリプレイス時には、初期投資・ランニングコスト・移行コストの3つを考慮する必要があります。
初期投資は、オンプレミス型とクラウド型で大きく異なります。オンプレミスPBXは、PBX本体の購入費や設置工事費が高額になりがちです。一方、クラウドPBXなら専用機器の購入が不要なため、初期費用を抑えやすいのがメリットです。
ランニングコストについては、オンプレミス型では保守やメンテナンス費用が長期的に発生するのに対して、クラウド型の場合は月額料金がかかります。クラウドPBXはアカウントあたりの月額料金が設定されているケースが多いため、必要なアカウント数から事前にランニングコストの試算が可能です。
PBXのリプレイスにおいては、移行コストも無視できません。新システムの導入に伴う設定やテスト、従業員教育などのための費用が必要です。また、ダウンタイムによる業務停止が発生する場合は、その影響も考慮しておきましょう。
PBXのリプレイスは、次のステップを順に進めるとスムーズです。
まず、現行システムの調査を行います。現在のPBXの状態や使用状況を把握し、改善点を明確にしましょう。通話量や使用頻度、運用コストなどを事前に整理しておくと、次のステップである要件定義を進めやすくなります。
要件定義では、新しいPBXに求める機能や予算、ビジネスニーズを具体化します。運用コストの削減や業務効率向上のための機能など、現行システムの課題解消に必要な要件を明確にしてください。
要件定義を終えたら、ベンダー選定に進みます。オンプレミス型・クラウド型・ハイブリッド型のいずれが最適かを判断し、複数のベンダーから見積もりを取得して比較検討しましょう。
移行スケジュールの策定も重要なステップです。業務に支障を与えないよう、段階的な移行計画を立ててください。事前にテストを実施しておくと、移行時のトラブルを最小限に抑えられます。
最後にシステムのテスト運用を行い、トラブルがないか入念に確認してください。テスト運用で問題がなければ、本番稼働に移行します。
PBXのリプレイスを成功させるためには、考慮しておくべきポイントがいくつかあります。以下で詳しく紹介するので、参考にしてください。
クラウドPBXを導入する場合は、ネットワークの安定性が重要です。クラウドPBXは通話品質がインターネット回線の安定性に依存するため、ストレスなく通話ができるようにオフィスのインターネット環境を整備しましょう。
場合によっては、社内LANやWi-Fi環境の強化も必要になります。また、通信障害に備えて、バックアップ回線の準備も検討が必要です。
既存の電話番号を引き続き使用したい場合は、電話番号を移行するための番号ポータビリティの手続きが必要です。クラウドPBXを選ぶ場合は、移行先のサービスが番号ポータビリティに対応しているかどうかを確認しましょう。電話番号の移行が完了するまで1週間から10日程度かかる可能性があるため、この期間を移行計画に組み込んでおくことも大切です。
近年、サイバー攻撃の手法が多様化・複雑化しているため、セキュリティ対策も考慮しておかなければなりません。クラウドPBXを選ぶ場合は、データの暗号化や認証機能、アクセス権限の設定など、ベンダーが提供するセキュリティ対策の確認が必要です。
情報漏洩を防ぐために、セキュリティ対策に力を入れているサービスを選びましょう。また、業務端末の紛失やID・パスワードの流出といったリスクの高い行動を防ぐため、従業員へのセキュリティ教育も重要です。
電話は日々の業務に欠かせないツールのため、取引先や従業員への影響を最小化するための計画も必要です。移行スケジュールを明確にし、ダウンタイムが発生する場合は事前に周知しておきましょう。業務への影響が少ない休日に移行作業を行うのも方法のひとつです。また、万が一に備えてバックアッププランも整備しておきましょう。
PBXを長期間使い続けていると、不具合や故障が起きる可能性があるため、適切なタイミングでリプレイスを行うことが大切です。移行先はオンプレミス型・クラウド型・ハイブリッド型が主な選択肢になりますが、導入コストが低く多機能なクラウド型が特におすすめです。
PBXのリプレイスにはリスクや注意点もあるため、本記事で紹介した内容を参考に、念入りな移行計画を立てたうえで取り組みを進めてください。