老朽化したPBXと内線の取り次ぎ業務の負担が課題に
「Zoom Phone」導入の背景について教えてください。
林氏 当社では、これまで20年以上前に導入したオンプレミスのPBXと固定電話を利用していました。しかし、機器の老朽化が進んでおり、保守も導入当時のベンダー任せで、BCP(事業継続計画)の観点からも大きな課題を抱えていました。
固定電話が座席に物理的に紐づいていたため、組織変更や部署内でのレイアウト変更のたびに、設定変更を業者に依頼しなければならず、柔軟な対応ができませんでした。さらに、拠点間の内線が整備されていなかったため、毎回外線で代表番号にかけ、窓口に取り次いでもらう必要があり、社内のコミュニケーションコストが高くなっていました。
また、社員に支給していたスマートフォンも、共有アドレス帳が整備されておらず、内線として活用されていませんでした。その結果、電話応対の負担が一部の社員に偏る状況でした。
そうした中で、他の社内システムがクラウド化されていく一方で、電話だけがオンプレミスのままである状況に疑問を感じ、より柔軟な働き方に対応するためにも、クラウドPBXへの移行を検討しました。
「Zoom Phone」選定の決め手となったポイントは?
林氏 最も重視したのは、通話品質の高さです。電話は日常的に利用する重要なコミュニケーション手段であるため、音声が安定してクリアに届くことは大前提と考えていました。Zoom Phoneはこの点で非常に信頼性が高く、安心して導入できると判断しました。
また、操作性の良さも大きな決め手のひとつです。毎日使うツールだからこそ、直感的に使えるユーザーインターフェースや、アプリ内の文言の分かりやすさなど、ユーザーにとってのストレスが少ない設計が求められます。Zoom Phoneは、電話機能と連絡先が一体化されており、現場からも「使いやすい」と好評です。
さらに、工場など一部の現場で求められる構内放送との連携も可能であった点は、他のサービスにはない強みでした。既存の業務フローを損なうことなく、クラウド化による効率化が図れる点を高く評価しました。
そしてもう一つ、Zoom Phoneを選定した理由として挙げられるのが、他のSaaSツールとの連携性の高さです。CRM/SFAなど、すでに当社で活用している、あるいは今後連携を進めていく可能性のあるシステムとの親和性が高く、システム間の情報連携を強化できる点を高く評価しました。
最後に、導入から運用までのサポート体制も信頼できると感じました。実際の導入時にも、社内からの問い合わせに迅速に対応いただき、スムーズに立ち上げることができました。
取り次ぎ件数が大幅に減り業務が効率化
導入の効果はどうでしょうか?
林氏 導入の効果は非常に大きく、業務効率や働きやすさの面でさまざまな改善が見られました。
まず、社内連絡における電話の取り次ぎ業務が大幅に削減されました。ある部署では、以前は週に20件以上の取り次ぎが発生しており、特定の社員に負担が集中していましたが、Zoom Phone導入後は週に3件程度にまで減少し、業務に集中できるようになりました。
また、固定電話の数を大幅に減らしたことで、オフィス全体が静かになりました。スマートフォンでの受発信が中心となり、以前のように電話の着信音がフロアに鳴り響くことがなくなったため、集中しやすい職場環境が実現できました。
Zoom Phone導入を機に、全社員にスマートフォンを配布したことで、Zoom Phoneだけでなく、他の業務ツールも外出先や現場で活用できるようになりました。例えば、工場の現場では、作業員が現場で実物を見ながら会話できるようになり、確認作業のスピードが格段に上がりました。
さらに、固定電話が無くなったことで、レイアウト変更時の設定変更が不要になりました。現場からの要望もすべてWeb上で完結できるようになり、業者を手配する手間やコストも不要になりました。ユーザーへの対応スピードも向上しています。
電話の利用状況についても、Zoom Phoneの通話ログを活用することで、可視化と分析が可能になりました。これまで経理部門に届いていた請求書だけでは把握しきれなかった運用実態が見えるようになり、今後の最適化にもつなげることができると感じています。現場からも「休んでいる時に他拠点の人が電話に出られたらより働きやすくなるのでは?」といった声が上がるなど、社員の間でも前向きな変化が広がっています。