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クラウドPBXの導入前に知っておきたい失敗事例と対策ポイント

 2024.02.15

「稼働中のPBXが耐用年数を迎えるためリプレイスが必要」「PBXの運用にかかる負荷を減らしたい」といった場合、クラウドPBXの導入が候補に挙がるでしょう。クラウドPBXとはクラウド環境に設置したPBXを使って、インターネット経由で企業の外線・内線を利用できる仕組みです。

クラウドPBXは導入や運用にかかる手間やコストを抑えやすいなどメリットの多いサービスですが、導入前のリサーチを怠ると機能に満足できなかったりトラブルが発生したりするリスクがあるため、注意しなければなりません。

本記事では、クラウドPBXの失敗事例と導入に失敗しないための方法を紹介します。クラウドPBXの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介

テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。

オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。

本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。

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クラウドPBXの失敗事例

早速ですが、クラウドPBX導入に関する具体的な失敗事例をみていきましょう。よくある失敗事例を8つ紹介します。

失敗事例1:インターネット接続の不安定さ

クラウドPBXはその名のとおりクラウド上にPBXを設置するため、利用にはインターネット接続が必須です。

音声品質はインターネット接続の安定性に左右され、インターネット接続が不安定だと相手の声が聞き取れなかったり途中で通話が切れてしまったりします。電話は相手の姿が見えず声だけでコミュニケーションをとるツールのため、音声品質が非常に重要です。

途中で音声が途切れる、通話が切れてしまう、といった事態に陥るとスムーズな商談や顧客対応はできなくなります。通話に関して何度もトラブルが続くと、顧客や取引先からの信頼を損なう可能性もあるでしょう。

そのため、会話に支障が出るほど音声品質が悪い場合は「導入失敗」と言わざるを得ません。

社内ネットワークは業務システムやWeb会議システムの利用など、普段から業務で多くのデータがやりとりされています。そこにクラウドPBXの音声データも流れることになるため、「クラウドPBXを導入したら急に社内ネットワークの帯域が逼迫し始めた」といったケースも考えられます。

失敗事例2:セキュリティ対策の不十分さ

インターネット上でデータをやりとりするクラウドサービスを利用する際には、セキュリティ対策が重要です。

クラウドPBXの場合、取引先の電話番号や通話内容といった、機密情報が多く保存されています。セキュリティ対策が不十分では、データの盗聴や不正アクセスが発生して機密情報や個人情報が流出するリスクが高まります。情報流出が起きると顧客や取引先からの信用を失うなど、企業にとって大きな損失です。

必要なセキュリティ対策が行われていないクラウドPBXサービスを選んだり、社内ネットワークのセキュリティ強化が実施できていなかったりすると、上記のような事態を招く可能性が高まるため注意が必要です。

失敗事例3:適切なプラン選択の失敗

世の中にクラウドPBXのサービスは多く存在していて、機能や料金が異なる複数のプランを提供しているサービスもあります。そのため、多くのサービス・プランのなかから自社に合ったものを選ばなければなりません。

例えば回線数の多いプランしか用意されていないサービスは、小規模で利用したい企業にとっては必要以上のコストがかかってしまいます。自社が必要とする回線数に適したプランが選べるとよいでしょう。

規模や料金だけでなく、細かい機能の確認も必要です。

クラウドPBXの基本的な機能は外線・内線通話や転送、録音ですが、サービスによっては文字起こしや通話データの分析、外部システムとの連携などの機能が使えるものもあります。「基本的に電話ができればいい」という企業もあれば、「データ連携や分析を活用したい」という企業もあるでしょう。

自社が求める以上の機能が用意されたプランを選ぶと料金が割高になりますし、反対に必要な機能が搭載されていないプランではいくら料金が安くても満足はできません。自社に必要な機能は何か事前によく確認し、複数のサービスを検討することが重要です。

失敗事例4:サポート体制の不足

クラウドPBXはクラウドサービスであるため、PBX本体の管理やメンテナンスはベンダーが行います。クラウドPBXを選ぶ際には、これらのメンテナンス対応やサポートが不十分な事業者が存在する点に注意が必要です。

例えば、導入前に自社の利用人数や用途をヒアリングして適切なプランを提案してくれる事業者なら、プラン選びに失敗する可能性は低いでしょう。また、導入時の機能説明の有無やトラブル発生時の問合せまで対応する事業者もあります。

一方、サポート体制が不足している事業者を選んでしまうと、最適なプランが選べなかったりトラブルが発生したときに迅速な対応をしてもらえなかったりする可能性があるため注意してください。特にトラブル対応は重要で、PBX本体の管理はサービス提供事業者の管轄のため、トラブルが発生すると利用者側は基本的に問題が解消するのを待つしかありません。

もしトラブルが発生しても、問題の内容や復旧の目処、利用者側でどのような対応が必要かなどを迅速に連絡してくれる事業者なら安心です。一方、「情報共有が遅い」「説明の内容が要領を得ない」といった事業者は信頼できません。トラブル解消までに時間がかかり、その間は外線・内線が使えないとなると、業務に大きな支障をきたしてしまいます。

失敗事例5:電話番号の変更

クラウドPBX導入の際に電話番号の引き継ぎができず、変更が必要になるケースがあります。クラウドPBXは、インターネットに接続されていれば、オフィスの外でも会社の電話番号で発着信ができるものですが、全ての電話番号が引き継げるとは限りません。

株式会社グラントンが2021年に実施したアンケート調査によると、「クラウドPBX導入時の懸念事項や課題」として「別途電話回線の契約が必要で手間がかかった」が上位に挙げられていました。電話番号をそのまま引き継ぐためには、「ナンバーポータビリティ」という制度に、固定電話事業者とクラウドPBX事業者の両方が対応している必要があります。

電話番号が変更になると取引先や顧客への周知、印刷物の修正などに手間とコストがかかりますし、問い合わせを取りこぼしてしまう恐れもあるでしょう。現在の電話番号を変更したくない場合は、ナンバーポータビリティ対応の可否を事業者に確認しておくことが大切です。

失敗事例6:通話品質の低下

クラウドPBXはインターネット回線を利用するため、通信環境に左右されやすく、固定電話よりも通話品質が低下する恐れがあります。通信が不安定な環境下では音声の遅延や途切れ、ノイズなどにより会話が聞こえにくいといった不満があるようです。

前述した株式会社グラントンのアンケート調査でも「品質や安定度に不安があった」という意見が20.5%あり、契約や機器設置についで上位に挙げられていることが分かります。

インターネットはアクセスポイントや電波干渉、時間帯などでも大きく左右されるため、導入前にデモやトライアル期間を利用して通話品質を確認しておきましょう。

失敗事例7:既存サービスの契約期間

ビジネスホンやPBXなどをリース契約している場合、契約期間を把握しないままクラウドPBXを導入してしまうといった失敗も見られます。現在利用しているサービスをリース契約期間の途中で解約してしまうと、違約金の請求、あるいは残積分の一括返済が必要になる場合もあります。

予想外のコストがかかる可能性があるため、既存サービスの契約期間・内容を把握してからクラウドPBXの導入を検討しましょう。

失敗事例8:機能の過不足

クラウドPBXを導入したものの「機能が多すぎて使いこなせなかった」あるいは「欲しい機能が搭載されていなかった」というケースもあります。クラウドPBXの機能は豊富で、事業者によって提供するサービスもさまざまです。

例えば、以下は代表的な機能の一例になります。

  • 代表者発信
  • 内線・外線電話
  • 転送機能
  • 録音機能
  • 保留

機能の豊富さは拡張性も高く便利に思えますが、システムの扱いに慣れていない社員にとっては複雑に感じる場合もあるでしょう。導入時には、実際に使用する社員が扱いやすい画面・操作を重視することが大切です。

反対に、自社に必要な機能が搭載されていなければ、クラウドPBXを導入した意味がなくなります。基本機能で使用できるものもあれば、オプションで追加が必要な機能もあるため事前確認は必ず行うようにしましょう。

クラウドPBXの導入で失敗しないために

ここまでクラウドPBXの導入に失敗してしまう8つのパターンを紹介してきましたが、これらを回避するにはどのような対策が必要なのでしょうか。以下でクラウドPBXの導入に失敗しないための対策を7つ紹介するため、参考にしてください。

対策1:インターネット接続の不安定さを回避

先述のとおり、クラウドPBXの利用時には安定したインターネット接続が求められます。そのため、オフィスに設置した電話機からクラウドPBXを利用する場合は、社内ネットワークを冗長化して安定性を高めるなどの対応が必要です。

業務システムやWeb会議システム、メールの送受信など、社内ネットワークはさまざまな用途で使われるため、すでに通信トラフィックが逼迫気味の場合は注意してください。

通信トラフィックを監視して、クラウドPBXの利用に問題がなさそうか事前に確認しておきましょう。通話にどの程度の帯域が必要かは、サービス提供事業者に確認してみてください。事業者の公式サイトに必要な帯域が明記されていることもあります。

必要に応じて音声データを優先して送受信するよう制御したり、音声用の帯域をあらかじめ確保したりして、快適に通話ができる社内ネットワーク環境を整えておくことが大切です。

対策2:セキュリティ対策

セキュリティ対策として、「サービス提供事業者のセキュリティ対策の確認」「社内ネットワークのセキュリティ強化」「従業員へのセキュリティ教育」の3点が挙げられます。

サービス提供事業者のセキュリティ対策の確認

まず、自社の重要な情報を保存することになるクラウドPBX側のセキュリティ対策について確認しましょう。通信の暗号化や二段階認証、通話ログの確認など、事業者ごとにさまざまな機能を採用しています。プランの内容や料金に加えてセキュリティ対策の内容もサービスごとに比較し、より信頼性の高いサービスを選択してください。

社内ネットワークのセキュリティ強化

クラウドPBXに限らず、クラウドサービスを利用する際には社内ネットワークと外部のインターネット環境の間で通信が発生します。外部から社内ネットワークへの不正アクセスのリスクがあるため、セキュリティ強化も必要です。VPN接続やファイアウォールの設定を適切に行い、セキュリティ事故のリスクを下げておかなければなりません。

従業員へのセキュリティ教育

サービスやネットワークの技術的なセキュリティ対策に加えて、従業員一人ひとりがセキュリティリスクについて理解し、リスクの高い行動をしないように心がけることも重要です。いくらシステムや設定でセキュリティを強化しても、従業員の使い方が適切でなければ情報漏洩の可能性があります。

「クラウドサービス利用時のパスワードは定期的に変更する」「公共のフリーWi-Fiには接続しない」など、クラウドPBXの導入に伴って社内のセキュリティポリシーを策定し、従業員に周知してください。定期的にセキュリティのための研修を行っても良いでしょう。

対策3:プラン選定

自社に合ったプランを選ぶために、まずは利用規模や求める機能を明確にします。求める条件が決まっていれば、それに合ったスムーズにサービスやプランを絞りやすくなります。クラウドPBXはさまざまな事業者がサービスを提供しているため、まずはどのサービスを利用するのか候補を絞り込んでください。

利用したいサービスが見つかったら、事業者に問い合わせて自社に合ったプランを提案してもらうのがおすすめです。ニーズや課題を細かく伝えれば、複数あるプランのなかから最適なものを提案してもらえるでしょう。

また、導入後に人員の増減で利用規模が変わることも想定して、利用中のプラン変更やアップグレードが容易にできるかどうかも確認しておくと安心です。

対策4:サポートの見極め

プランについて事業者から提案を受ける際、サポート体制についても確認してください。「導入時の設定サポートや機能説明などの支援があるか」「トラブル発生時はどのような対応をしてもらえるか」などを確認し、十分なサポートが受けられる事業者を選びましょう。

事業者によってはサポートが別料金になっていることもあるため、必要に応じて追加のサポートオプションなどの契約も検討してください。

基本的に管理やメンテナンスは事業者に任せることになりますが、社内にもクラウドPBXについての知識やスキルを持った担当者がいると安心です。事業者とのやりとりや従業員からの問合せ対応などを任せられるITスタッフを育成し、トラブル発生時でも迅速な対応ができる体制を整えておきましょう。

対策5:ナンバーポータビリティの可否の確認

電話番号の変更を避けるには、事業者がナンバーポータビリティに対応しているかどうかを確認します。ナンバーポータビリティとは、現在使用中の電話番号を変えることなく継続して使用できる制度のこと。主にNTT東日本・NTT西日本で取得した一般加入電話などが対象になります。

ただし以下のような場合は、ナンバーポータビリティによる引き継ぎができないため注意が必要です。

  • 固定電話事業者がナンバーポータビリティに対応していない
  • クラウドPBX事業者がナンバーポータビリティに対応していない
  • 引き継ぎできる市外局番が限定されている

失敗事例の項目でもお伝えしましたが、ナンバーポータビリティによる電話番号の引き継ぎをするには、固定電話事業者とクラウドPBX事業者の両方が対応していなければなりません。対応の可否を事前にしっかりと確認しておきましょう。

対策6:トライアルでの通話品質検証

クラウドPBX導入前に通話品質や使用感を確認することも大切です。多くの事業者では、一定期間サービスを利用できるトライアルを実施しているため、積極的に利用をおすすめします。実際に自社の通信環境下で試すことによりさまざまな点を確認できます。

  • 時間帯による通話品質
  • 外線・内線時の違い
  • 使用するデバイスによる違い

また、機能の使いやすさやセキュリティ、サポートなども同時にチェックしておけば、導入時の課題も洗い出せるためスムーズな導入が実現できるでしょう。

対策7:必要機能の確認

機能の過不足を防ぐためには自社に必要な機能を把握し、クラウドPBX事業者で提供されているかどうかを確認します。クラウドPBXを導入する環境や目的、利用する人数などによって必要な機能は異なりますので、まずは社内で欲しい機能を洗い出してみましょう。

例えば、通話機能以外にWEB会議や通話のモニタリング機能、分析機能、CRM連携などを備えたクラウドPBXもあり、業務改善や効率化に最適です。事業者によって提供される基本機能やオプション機能、連携できる外部システムなどは異なるため、複数の事業者で比較検討するとよいでしょう。

まとめ

クラウドPBXの失敗事例には、インターネット接続の不安定さによる音声品質の問題や、適切なプランを選択できずにコストが割高になるなど、さまざまな要因があります。「事業者側のセキュリティ対策が不十分で不正アクセスが発生し、十分なサポートも受けられなかった」など、複数の要因が重なってより大きな問題となるケースも考えられます。

このような事態に陥らないように、クラウドPBX導入時は事前の準備と情報収集が大切です。まずは、社内ネットワークの帯域確保やセキュリティ強化、ニーズの明確化といった事前準備を行いましょう。そして、事業者側のセキュリティ対策やプランの内容、サポート体制についてしっかり情報を収集して、自社に合ったサービスを選んでください。

クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介

テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。

オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。

本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。

クラウドPBXの特徴や導入ステップをまとめた冊子を見てみる
山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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