クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。
2023.08.04
近年、「テレワークを実施すると電話応対ができない」などの問題を解消するために、オフィスの電話に「クラウド電話」を採用する動きがあります。
クラウド電話は従来のオンプレミス型のPBXとは違い、自社でPBXや電話回線を保有せずインターネット経由で電話サービスを利用する仕組みです。「クラウド電話」や「クラウドPBX」といった言葉を目にする機会が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、オフィスの電話環境の整備を担う企業担当者の方に向けて、クラウド電話について詳しく解説します。
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。
クラウド電話とは、クラウド環境に設置したPBXを利用して通話を行う仕組みです。PBX(Private Branch eXchange)とは、企業内の電話交換機のことで、外線・内線の接続を管理するシステムを指します。クラウド電話はクラウドサービスとして提供されていて、利用者は事業者と契約をすると月額利用料だけでサービスを利用できます。サービスはすべてインターネット経由で提供されるため、自社でPBXや電話回線を用意する必要はありません。
従来のオフィス電話と大きく異なるのは、パソコンやスマートフォンから会社の外線・内線が利用できる点です。自宅や外出先などオフィス以外の場所からも外線・内線が使えるため、電話応対をするためだけの出社が不要になり「テレワークの推進に役立つ」と注目されています。
これまで普及していたビジネスフォンは、複数の回線(内線・外線)を共有できる業務用の電話機です。PBXを設置して、1つの電話回線を複数の電話機で共有することができ、同時に異なる電話番号へ発信できる点で家庭用電話機と異なります。
クラウド電話は、従来のビジネスフォンと同じ通話機能を備えています。従来のビジネスフォンよりも利用できるデバイスが豊富で、社外でも代表者番号で通話ができる点が魅力です。より機能性や利便性を高めた業務用電話機といえるでしょう。
下記にクラウド電話とビジネスフォンの違いをまとめました。
クラウド電話 |
従来のビジネスフォン |
|
利用可能なデバイス |
・IP電話 ・スマートフォン ・タブレット ・パソコン |
・固定電話機 |
使用回線 |
・インターネット回線 |
・アナログ回線(2024年1月から順次IP回線へ移行予定) |
初期費用・ランニングコスト |
・インターネット通信料 ・PBX月額料金 ・電話機購入費用 |
・PBX設置費用 ・電話回線工事費用 ・電話機購入費用 ・メンテナンス費用 |
導入のしやすさ |
・PBXの設置や工事、設定などを含めて1ヶ月程度かかる |
・数日程度で導入が可能。最短当日に利用できる場合もある |
拡張性 |
・拡張性が高い。配線工事が不要で簡単にライセンスを追加できる |
・拡張性は低い。機器の追加や配線工事が必要になる |
カスタマイズ性 |
・自社に合わせたシステムを構築しやすい |
・オプションで機能追加が可能 |
主な機能 |
・代表者番号発信 ・内線通話 ・保留・転送 ・留守番電話 ・通話録音 ・スマートフォンの内線化 ・CTI機能 ・自動音声応答機能など |
・代表者番号発信 ・内線通話 ・保留・転送 ・留守番電話 ・通話録音など |
特徴 |
・外出先やリモートワーク時も代表者番号で発着信できる ・CRMなど外部システムとの連携が可能 ・050番号や緊急ダイヤルが利用できない場合がある |
・通信回線が安定しているため通話品質が高い ・通話は社内からに限られる |
クラウド電話にはコストや機能性など、さまざまなメリットがあります。ここでは、クラウド電話の4つのメリットを紹介します。
クラウド電話は自社でPBXの設置や電話回線工事などを行う必要がないため、導入コストを抑えられるのがメリットです。また、月額費用はかかるものの、PBX本体の管理やメンテナンスはサービス提供事業者が実施し、機器のリプレイスや修理といったメンテナンスにかかる費用もすべて事業者が負担します。そのため、オンプレミス型のPBXと比較して運用コストも抑えられます。
クラウド電話はインターネット回線を利用して通話を行うため、従来の固定電話のように各電話機に物理的に電話回線をつなぐ必要がありません。そのため、オフィスのレイアウト変更や移転などを行う際でも大規模な配線工事は不要で、柔軟に対応ができます。
また、クラウド電話はライセンスの追加が簡単で、拡張性が高いという特徴もあります。新入社員の入社や会社の合併などで電話回線を一度に多く追加する必要がある場合、事業縮小で回線を減らしたい場合も、Web上でライセンスの設定を変更するだけで回線数を増減可能です。
クラウド電話はPBXの管理やメンテナンスを事業者に任せられるため、管理のしやすさもメリットとして挙げられます。オンプレミス型のPBXの場合、設置工事や本体のメンテナンス、トラブル対応やリプレイス作業など、自社ですべて対応しなければなりません。
クラウド電話なら上記のような対応はすべて事業者側の仕事で、上記のような運用費はあらかじめ月額利用料に含まれています。IT部門や総務部門の人員が少ない企業にとっては、特にメリットを感じる部分でしょう。
クラウド電話サービスのなかには、Web会議ツールと連携できるものがあります。例えばクラウド電話サービス「Zoom Phone」はWeb会議ツール「Zoom」との連携が可能で、電話・Web会議・チャットなど複数のコミュニケーション手段を統合できます。
これにより、「電話中に見てほしい資料が出てきたのでWeb会議に切り替える」「チャットで連絡していた相手にクリック1つで電話をかける」といった対応が可能になります。「一旦電話を切ってWeb会議ツールから発信し直す」といった手間がなくなるため、スムーズなコミュニケーションの実現にも役立ちます。
クラウド電話には多くのメリットがありますが、デメリットもあることを把握しておく必要があります。以下でクラウド電話の3つのデメリットを紹介するので、導入前に確認しておきましょう。
冒頭で紹介したとおり、クラウド電話はインターネット経由で利用するサービスです。そのため、音声品質はインターネット回線の安定性に依存する点に注意してください。データ通信量が多い時間帯などインターネット接続が不安定になると、音声が途切れたり通話が途中で終了してしまったりすることがあります。
また、大規模なネットワーク障害などでインターネットに繋がらなくなると、電話・メール・チャット・Web会議などほとんどのコミュニケーションツールが使えなくなります。インターネットが一切使えなくなるような大規模障害が起きる頻度はそれほど高くありませんが、「このような事態に陥る可能性がある」ということは理解しておいてください。
クラウド電話を利用すると、クラウド上に電話帳や通話記録などのデータが保存されます。そのため、不正アクセスやアカウントの乗っ取りによるデータ流出などセキュリティ上の懸念点がある点もデメリットです。
セキュリティ対策の実施内容は、サービス提供事業者によって異なります。対策が不十分なサービスを選んでしまうと上記のようなセキュリティ事故のリスクが上がるため、サービス選定時にはセキュリティ対策の内容もチェックが必要です。
機能やセキュリティ対策の内容だけでなく、サポート体制も事業者によって異なる点に注意してください。サポート体制が不十分な事業者を選んでしまうと、「機能の使い方について問い合わせたのに返答がなかなか返ってこない」「トラブル発生時に対処法や復旧の目処などの連絡が一切ない」といった事態に陥るおそれがあります。
もちろんこのような事業者ばかりではなく、導入前からしっかりサポートを行うところもあります。自社の状況を客観的に把握し、必要なサポートを受けられる事業者を選びましょう。
近年、オンプレミス型PBXからクラウド電話に乗り換える動きが見られます。その背景として、以下が挙げられます。
ここでは、クラウド電話が注目される背景についてみていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、日本でもテレワークの普及が進みました。内閣府の調査によると、2023年3月は全国で30.0%、東京23区では51.6%の企業がテレワークを実施しています。
代表電話を設置している企業の場合、テレワークの導入に際して「電話応対をどうするか」という問題が生じます。オフィスに出社する人がいなければ、会社の固定電話にかかってくる電話に出られません。「電話番のために交代で出社している」という職場もあるでしょう。
この問題を解消できるのが、クラウド電話です。クラウド電話を導入するとインターネット経由でパソコンやスマートフォンから会社の外線・内線が利用できるため、電話番のためだけに出社する必要はありません。このようにテレワークの導入を後押しできるツールとして、クラウド電話が注目を集めるようになりました。
固定電話の契約数減少や設備の老朽化などを理由に、NTTは2024年1月にアナログ回線を廃止します。廃止のタイミングでNTTが電話回線をアナログ回線からIP網に切り替える予定です。
固定電話を利用する企業や家庭で特別な手続きを行わなくても、電話の機能はこれまでどおり継続して利用できます。ただし、ISDN回線も2024年1月から地域ごとに順次終了していく予定で、業務上ISDN回線を利用している企業は対策が必要です。
このアナログ回線廃止をきっかけに、「本当に固定電話が必要なのか」と見直す動きが出てきました。先述のとおりテレワーク実施の妨げになることもあり、オフィスの固定電話の廃止を進める企業もあります。クラウド電話は導入にかかる手間やコストが少ないうえ利便性も高いため、固定電話からの乗り換え先としても注目を集めています。
光回線の普及や5Gの登場などによって、高速かつ安定したインターネット通信が広く使える世の中になりました。クラウド電話の通話品質はインターネット回線の安定性に左右されますが、インターネットの安定性が増したことでクラウド電話の通話品質も向上しています。
クラウド電話と同じくインターネットを使った通話ツールのLINE通話やSkypeを使ったことがある方は、これらの通話品質を思い出してみてください。固定電話には劣るかもしれませんが、特に問題なく会話ができた人が多いのではないでしょうか。
このようにインターネット回線でも安定した通話ができる環境が整ってきたことも、クラウド電話の普及を後押しする要因となっています。
オフィスに導入するクラウド電話を選定する際には、通信品質やコスト、機能やサポート体制などさまざまな面でサービスごとの比較が必要です。ここではクラウド電話導入時にチェックすべき5つのポイントを解説するので、参考にしてください。
クラウド電話の通話品質はインターネット回線に左右されると紹介しましたが、実はそれだけではありません。通話品質を向上させるための仕組みは事業者ごとに異なるため、同じインターネット回線を使用しても製品ごとに音質が異なります。
製品ごとの通話品質は、実際に利用してみなければわかりません。アプリと端末の相性によっても通話品質が変わってくるため、無料トライアル期間を設けているサービスを選んで事前に品質をチェックしてから導入を決めるのがおすすめです。
クラウド電話の導入・運用にかかる主なコストとして、初期費用・月額利用料・通話料があります。
初期費用は、クラウド電話に対応した電話機の購入費用や、事業者によってはサーバー設定費用などがかかります。電話機の価格や設定費用の有無を事前に確認しておきましょう。従業員個人のスマートフォンを業務利用するBYODを取り入れる場合は、電話機の購入費用は不要です。
月額利用料はサービスやプランによって異なりますが、多くの場合1ライセンスあたりの価格が設定されています。必要な回線数を元にランニングコストを試算してください。
内線発信は無料で利用できますが、外線発信には通話料が別途必要です。外線発信が従量制のプランと定額制のプランの両方を用意しているサービスもあるため、自社の外線発信の利用頻度などを考慮して最適なサービス・プランを選びましょう。
クラウド電話は電話帳データや通話記録など重要なデータをクラウド上に保存することになるため、しっかりとしたセキュリティ対策を施しているサービスを選ぶことが大切です。セキュリティ対策が不十分だとセキュリティ事故のリスクが上がるだけでなく、外部からの攻撃によってサーバーに負荷がかかり、通話品質の低下を招くおそれもあります。
クラウド電話を導入すると自宅からでも会社の外線・内線を利用できるようになるため、従業員のプライバシーについても考慮しなければなりません。特にBYODを採用する場合は仕事とプライベートで同じ端末を利用することになるため、営業時間外や休日は時間外アナウンスを流すなどの配慮が必要です。
外線・内線・転送・録音といった基本的な機能は、多くのクラウド電話サービスが提供しています。「基本的に電話さえできればいい」という場合は、どのサービスを選んでも機能面での問題はないでしょう。
一方、「クラウド電話の導入を機に業務改革を進めたい」「時間外アナウンスなど基本機能以外にも使いたい機能がある」といった場合には、サービスごとの機能面の充実度もチェックしてください。文字起こしや通話データの分析、自動応答など多彩な機能を提供しているサービスも多くあります。
「クラウド電話のデメリット」で紹介したとおり、クラウド電話は事業者によってサポート体制が異なります。導入後に困らないように、サポート体制が充実した事業者を選びましょう。
自社の現状や課題に応じた最適なプランの提案や導入前の機能説明など、手厚いサポートを実施している事業者もあります。クラウド電話の導入が初めての場合は特に、導入前からしっかり支援してくれる事業者を選ぶと安心です。
最後に、クラウド電話のサービス例として6つの製品を紹介します。サービス選定時の参考にしてください。
Zoom Phoneは、Web会議システム「Zoom」が提供するクラウド電話システムです。Web会議システムで培った高い技術を駆使し、安定した通話品質を保ちます。Zoomのモバイルアプリやデスクトップアプリなどと紐付けることが可能で、「電話しながらWeb会議に移行する」といったシームレスな統合ができるのも大きな特徴です。
通話の録音や通話内容の転送など豊富な機能を提供していて、音声データの暗号化などセキュリティ対策も充実しているため、安心して利用できます。
Arcstar Smart PBXは、NTTコミュニケーションズが提供するクラウド電話サービス。Arcstar Smart PBXの特徴は、オプションサービスを組み合わせることで外線発信も無料で行える点です。他社サービスは外線発信に別途通話料金が発生するケースが多く、外線発信が無料になるのはNTTコミュニケーションズならではの強みです。外線の利用が多いコールセンターや営業部門にとっては大きなメリットでしょう。
また、通信事業者として長い実績があり、導入前のコンサルティングサービスが手厚いのも特徴です。
SmartCloud PhoneはNTTコムウェアが開発したクラウド電話サービスで、NTTグループならではの高い通話品質を実現しています。通話する端末間の最短経路で音声データを送受信する仕組みによって通話品質を安定させ、暗号化処理を実施しているためセキュリティも問題ありません。
NTTグループが提供するFMCサービスやビジネスチャットなど、さまざまなサービスとの連携によってより利便性を高められます。
ひかりクラウドPBXは、NTTが提供するクラウド電話サービスです。通信にはNTT東日本・NTT東日本のひかり回線を使用するため、安定した通話品質が保たれます。既存のPBXや電話機との併用ができるのが特徴で、「いきなりすべてをクラウドに移行するのは抵抗がある」という方におすすめです。
MiiTelはAI搭載型のクラウド電話サービスで、IP電話・録音・文字起こし・音声解析の機能を提供しています。これらの機能は、特に営業やコールセンターに適しています。通話内容の文字起こしによる情報共有の効率化や、AIの音声解析によるトップセールスマンの話し方の特徴分析などが可能です。
会話の速度や被せ率などを分析してフィードバックを行う機能もあり、電話による会話が重要なビジネススタイルの企業に適したサービスです。
Webex Callingは、Web会議システム「Webex」を提供するシスコによるクラウド電話サービスです。「電話中に画面共有を開始する」「電車に乗り込むなど、電話中に声が出せない状況になったので瞬時にチャットに切り替える」など、1つのアプリで電話・Web会議・チャットをシームレスに切り替えられます。これは、Web会議ツールを提供する企業のクラウド電話ならではの特徴です。
クラウド上のPBXを利用するクラウド電話は、「導入の手間やコストが少ない」「オフィス以外からも外線・内線を利用できる」など、オンプレミス型のPBXにはないメリットが多くあります。テレワークの普及やNTTのアナログ回線廃止などの背景があり、オフィス電話をクラウド電話に切り替える動きも見られます。
コストや運用負荷、利便性など既存の電話環境に課題を感じている方は、クラウド電話への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
クラウド電話はさまざまな事業者がサービスを提供しているため、本記事の「クラウド電話の選定ポイント」や「クラウド電話のサービス例」を参考に、自社に合ったサービスを探してみてください。
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。