クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。
2023.08.04
オフィス電話のリプレイスを検討する際、まず「オンプレミスかクラウドか」という点で悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。テレワークの普及やNTTのアナログ回線廃止などオフィス電話を取り巻く環境は変化してきていて、従来のオフィス電話からクラウド電話に切り替えるケースも見られます。
本記事では、クラウド電話を導入するきっかけとなる環境の変化と、オンプレミス型PBXとクラウド電話のそれぞれの特徴などを紹介します。
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。
オフィス電話のリプレイスを検討する際に押さえておきたいのが、オフィス電話を取り巻く環境の変化です。従来のオフィス電話のあり方を変化させるきっかけとなった4つの出来事を、以下で紹介します。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、全国的にテレワークの普及が進みました。内閣府の調査によると、感染症が流行する直前の2019年12月のテレワーク実施率は全国で10.3%でしたが、最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月の翌月には実施率が27.7%まで増加しています。その後、テレワーク実施率はほぼ横ばいで推移しており、2023年3月の実施率は30.0%でした。
また、フリーアドレスを導入するケースが増えたこともポイントです。フリーアドレスとは、固定席を設けずに好きな席やスペースで仕事をするワークスタイルのこと。テレワークの普及により出社率が低下し、オフィスの有効活用やコミュニケーションの活性化などを目的にフリーアドレスを導入する企業が増加しました。
oVice株式会社が実施した「フリーアドレスに関する実態調査」によると、7割以上の企業がコロナ禍をきっかけにフリーアドレスを導入しています。
従来のオンプレミス型PBXを使用している場合、オフィスに設置された電話機でなければ電話に出ることはできない上に、フリーアドレスの社内では内線機能も意味をなしません。また、オフィス外の電話機へは通話の転送ができないため、テレワークの実施によってオフィスに出社しない従業員が増えると、電話の応対や取り次ぎが難しくなります。
これらの理由から固定電話が不要になったとも考えられますが、テレワークを行わない理由として「会社にかかってくる電話がとれなくなるから」との回答が出ている調査もあり、テレワークやフリーアドレスを実施するためにはオフィス電話のあり方を見直す必要があることが分かります。
「オフィスにいなければ電話応対ができない」という課題を解消する仕組みのひとつが、クラウド電話サービスです。クラウド電話とは、PBXをクラウド環境に設置してインターネット回線を使って通話を行うサービスです。クラウド電話を利用すると、専用アプリでパソコンやスマートフォンから会社の外線・内線電話を使えるようになります。
これにより、「出社しなければ電話に出られない」といったテレワークにおける電話応対の課題を解消できるようになりました。クラウド電話の導入企業の4割が「2019年から2020年頃に導入した」と回答しているアンケート結果があり、コロナ禍をきっかけにテレワークを実施するためクラウド電話を採用した企業が多いことが伺えます。
近年、Web会議やチャットなど多様なコミュニケーションツールが活用されています。システムの管理のしやすさから、これらのツールを一元管理する統合通信プラットフォームが求められている点も、オフィス電話を取り巻く環境変化のひとつです。
これらのツールが登場する以前は、電話やメールの利用が主流でした。しかし、コミュニケーション手段が多様化してからは、以下のように状況や用途に合わせた使い分けが行われています。
これらのコミュニケーションツールを導入する場合、それぞれ異なる製品を採用すると管理すべきシステムの数が増えてしまいます。一方、統合通信プラットフォームならひとつのサービスで複数の機能が利用できるため、システムの管理が煩雑にならずに済みます。
例えば、クラウド電話サービスの「Zoom Phone」はWeb会議サービス「Zoom」との連携が可能です。これにより、「チャットで連絡している相手に電話をかけたい」といった場合でもボタンひとつで切り替えられ、電話・Web会議・チャットなどの機能をシームレスに統合できます。
オンプレミスのPBXは電話回線を使用しているため、インターネット回線を使用するWeb会議やチャットツールとは別の仕組みです。そのため、電話を含むコミュニケーションツールの一元化を実現するには、Web会議サービスなどとの連携に対応したクラウド電話への切り替えが求められます。
NTTは、固定電話の契約件数の減少や公衆交換電話網の老朽化によって、2024年1月にアナログ回線の提供終了を決定しました。アナログ回線からIP網への切り替えはNTT側で行うため、固定電話を使用している企業や家庭で特別な作業を行う必要はありません。ただし、ISDN回線も2024年1月から地域ごとに段階的に廃止される予定で、POSシステムやEDIシステムなどISDN回線を利用している企業は対応が必要です。
アナログ回線廃止をきっかけにオフィスの固定電話の見直しをする企業が出てきています。先ほど紹介したテレワーク対応へのニーズの高まりも後押しとなり、アナログ回線廃止前にクラウド電話に切り替えを進めている企業もあります。
スマートフォンの普及拡大も固定電話の廃止が進む要因でしょう。総務省発表の「令和4年通信利用動向調査」によると、スマートフォンを保有している家庭は9割を超えており、個人で見ても7割以上が保有しています。一方で、固定電話は63.9%と減少傾向です。あらゆる面でデジタル化・オンライン化が進み、スマートフォンは日常生活でも欠かせないツールになったといえます。
加えて、BYODの導入もオフィス電話の変化に影響を与えていると考えられます。BYODとは「Bring Your Own Device」の略で、個人所有のスマートフォンやパソコンなどを業務で使用すること。「普段使い慣れた端末が使える」「仕事とプライベートの両方で使えるため管理しやすい」などの理由から許可する企業が見られます。
海外と比較すると日本でのBYODの許可は20%未満とまだ高くはありません。企業側としてはコスト削減や業務効率化、リモートワークの推進といったメリットが得られる一方で、データ流出やウイルス感染などのセキュリティリスク、紛失の可能性などが今後の課題として挙げられています。
従来のオフィス電話システムは、オンプレミス型PBXが主流でした。ここでは、オンプレミス型PBXの概要やメリット・デメリットを紹介します。
オンプレミスとはシステムの利用に必要なサーバーやネットワーク機器などを自社で構築して運用する方式のことで、「オンプレミス型PBX」は社内に設置した自社専用のPBXを指します。PBX本体や電話回線、固定電話や配線コードなど必要な機器を用意し、自社で必要な環境を整えなければなりません。
オンプレミス型PBXのメリットは、カスタマイズ性の高さです。自社専用のPBXを用意するため、予算と機器の設置スペースが許す限り自由にオフィスの電話環境を構築できます。また、社内ネットワーク内にPBXを設置して自社でデータを管理できるため、適切なセキュリティ対策を実施しておけば不正アクセスなどのリスクを下げられる点もメリットです。
デメリットとしては、クラウドPBXに比べ導入や運用に手間がかかる点や、初期費用やランニングコストが高額になりがちな点などが挙げられます。自社で自由に環境を構築できるのはメリットですが、自社で専門知識がある人材を用意し、運用していかなければなりません。
クラウド電話システムが登場し、オンプレミス型PBXからの乗り換えを進める企業もあります。ここでは、クラウド電話の概要やメリット・デメリットを紹介します。
クラウド電話はクラウドPBXともいわれ、クラウド上に設置したPBXを使って電話を行うサービスです。電話回線ではなくインターネット回線を利用するのが特徴で、パソコンやスマートフォンから会社の外線・内線が使えるようになります。また、クラウド電話サービスを提供する事業者がPBXの管理を担うため、利用者側での機器の手配や環境構築は不要です。
クラウド電話のメリットは利便性の高さです。自宅や外出先からでも会社の外線・内線が使えるようになるため、テレワークを導入しやすくなります。また、クラウド電話は事業者に月額利用料を支払いサービスを利用する方式であるため、PBX本体の購入やメンテナンスにかかる手間・コストを削減できるというメリットもあります。
一方デメリットは、音声品質がインターネット回線の安定性に左右される点です。データの通信量が多く回線が混雑する時間帯は、「音声が途切れる」「通話が途中で終了してしまった」などのトラブルが起きる可能性があります。
また、PBXに限らずクラウドサービスを利用する際にはセキュリティにも注意が必要です。不正アクセスやアカウントの乗っ取りなどのリスクがあるため、しっかりとしたセキュリティ対策が施されているサービスを選ばなければなりません。
スマートフォンでクラウド電話を使用する場合は、端末の紛失やウイルス感染にも注意してください。従業員に対してセキュリティ教育を実施し、リスクの高い行動をとらないよう一人ひとりが意識することも大切です。
クラウド電話については「オフィス電話のクラウド化はメリット多数!注意点やクラウド電話選定のポイントも解説」の記事で詳しく解説しています。
ここまで紹介してきたクラウド電話と従来型オフィス電話の特徴を、以下の表にまとめました。導入検討時の参考にしてください。
クラウド電話 |
従来型オフィス電話 |
|
カスタマイズ性 |
ベンダー側が提供する範囲でカスタマイズ可能 |
自社の状況に合わせてカスタマイズ可能 |
導入・運用の手間やコスト |
少ない |
多い |
音声品質 |
インターネット回線に依存 |
電話回線のため安定 |
PBXのメンテナンス |
サービス提供事業者が実施 |
自社で実施 |
利便性 |
オフィス外でも利用可能 |
オフィスの固定電話でのみ利用可能 |
セキュリティ |
セキュリティ対策の内容はサービス事業者による |
社内ネットワーク内で運用するため比較的リスクは低い |
最後に、オフィス電話を選定するときに押さえておくべき5つのポイントを紹介します。オフィス電話のリプレイスを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
まずは、デバイスごとに必要な台数を検討しましょう。オフィス電話は卓上に設置する固定電話機、スマートフォン、パソコンやタブレットといった端末を選択できます。固定電話機ならオフィスに常駐する社員数分に加えて、受付や会議室などにも設置するのが一般的です。
もし、電話応対が少ないのであれば、社員数に対する電話機の台数が少なくても問題ありません。外出する機会が多い場合は、固定電話機よりもスマートフォンの方が便利といえます。パソコンやタブレットでもコミュニケーションアプリなどを利用すれば音声通話は可能です。
電話線工事や電話機を購入する必要がないため、初期費用を抑えて導入できるメリットがあります。
ただし、いずれも増設できる台数に限りがありますので、将来的に社員が増える可能性も考慮して検討しましょう。
コストについては先ほど紹介したとおり、基本的にオンプレミス型PBXよりもクラウド電話のほうが低コストで導入できます。予算に限りがある場合は、クラウド電話を検討してみてください。
クラウド電話はサービスやプランによって月額利用料が変わります。1回線あたりの料金が決まっているサービスが多く、同じサービスでも機能が異なる複数のプランが用意されているケースがあります。必要な回線数と機能を確認して、サービス・プランごとの費用を比較してみてください。
自社の業務システムとの連携など、細かくカスタマイズした機能を求める場合はオンプレミス型PBXが向いています。クラウド電話は事業者が管理・メンテナンスを行っていて、他の利用者と同じ環境を共有することになるため、オンプレミスほど自由度の高いカスタマイズはできません。
「通話や転送、保留や録音といった基本的な機能が使えれば問題ない」という場合は、クラウド電話でも問題ないでしょう。また、文字起こしや通話データの分析など高度な機能を提供しているサービスもあるため、オンプレミス型PBXをカスタマイズしなくてもクラウド電話で対応できる可能性もあります。
また、「テレワーク対応のためにスマートフォンからも外線・内線を使いたい」という場合はオンプレミス型PBXでは対応できないため、クラウド電話を選びましょう。
通話品質を比較すると、電話回線を利用するオンプレミス型PBXのほうが安定しています。インターネット回線を利用するクラウド電話は、インターネット接続が不安定になると音が途切れるなど音声品質に影響が出ることがあります。
クラウド電話の通話品質を保つには、必要に応じて社内ネットワークの「優先制御」や「帯域制御」を行いましょう。優先制御とは、ネットワーク上を流れるデータの優先順位を設定することです。音声データの優先順位を上げておけば、データの通信量が多い時間帯でも通話品質が落ちにくくなります。
帯域制御は、あらかじめデータの種類ごとに使用帯域を分けておくことです。音声データを流すための帯域を事前に確保しておけば、ほかのデータ通信量が多くなっても通話品質は保たれます。
「通話品質を重視したいけれど、導入・運用コストが心配」といった場合は、上記のような対策を実施したうえでクラウド電話を導入すれば、通話品質の懸念は解消できます。
金融機関など特にセキュリティ基準の厳しい企業では、自社の安全基準を満たした社内ネットワーク内にPBXを設置できるオンプレミス型が適しています。一方、クラウド電話もしっかりとセキュリティ対策を施しているサービスは多いため、「オンプレミスでなければ危険」というわけではありません。
クラウド電話のセキュリティリスクとして、ログイン情報や電話帳データの流出、不正アクセスや端末のウイルス感染などが考えられます。クラウド電話サービスを選ぶ際には、通信の暗号化や二段階認証など、セキュリティ事故を防ぐための機能があるものを選んでください。
「電話が使えなくなると業務に支障をきたす」という企業も多いでしょう。そのため、サポート体制も重要です。オンプレミス型の場合は自社でPBXを管理・メンテナンスするため、問題が発生すると自社で対応しなければなりません。「IT部門の人員が限られている」などの事情がある企業では、PBXの管理をサービス提供事業者に任せられるクラウド電話がおすすめです。
クラウド電話を利用する場合、サポート体制が事業者によって異なる点に注意してください。なかにはトラブル時の対応が不慣れな事業者や、そもそもアフターサポートに対応していない事業者も存在します。トラブル発生時のサポート内容については、事前にしっかり確認したうえでサービスを選びましょう。
また、クラウド電話の利用が初めての企業では、導入時のサポートの有無も確認してください。最適なプランの提案や機能説明などを実施している事業者を選ぶと安心です。
オフィスの電話環境を構築する方法は、オンプレミス型PBXとクラウド電話の大きく2種類があります。テレワークの普及やコミュニケーションツールの多様化などオフィス電話を取り巻く環境が変化していて、従来のオンプレミス型からクラウド電話に切り替える企業も出てきています。
オンプレミス型とクラウド電話にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、オフィス電話をリプレイスする際にはどちらが自社に合っているのかしっかり検討しましょう。本記事で紹介したオフィス電話の選定ポイントを参考に、快適な電話環境を整えてください。
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。