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2024.10.09
インターネットを通して場所を問わずに電話ができるクラウドPBX。働き方の多様化が進むなかで、電話対応業務における課題解決手段として注目されています。
株式会社グラントンのアンケート調査によると、テレワークで課題に感じている業務は電話対応業務が最多となり、課題改善のためにクラウドPBXの導入検討をしている企業が多く見られました。クラウドPBXに興味を持つ一方で、導入までの手間や品質・安定度への不安などを懸念事項として挙げる企業が多いのも事実です。
この記事では、クラウドPBX導入時の不安要素である音質について解説しています。トライアル時の確認ポイントや音質への影響要因についてもお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。
クラウドPBXの音質は、アナログ回線を使用するビジネスフォンと同レベルです。当初は固定電話に比べると音質が劣るとされていましたが、インターネットの普及や通信技術の発達により、現在は品質が向上しています。
また、2020年にサービスが開始された5G(第5世代移動通信システム)の普及により、高速・大容量・多接続・低遅延が実現されたことも大きな要因といえるでしょう。しかし、インターネット回線を使用するクラウドPBXは、利用環境の影響を受けやすくもあります。
まずはトライアル等で実際に利用してみることが重要です。
多くの事業者では、一定期間サービスを利用できるトライアルを実施しています。実際にサービスを試してみることで、音質だけでなく操作性やサポート対応などさまざまな点を確認できるため、積極的に活用しましょう。
ここでは、音質に関してトライアルで確認するポイントについて解説します。
インターネットを利用して通話を行うクラウドPBXの音質は、ネットワーク環境に大きく左右されます。音質が低いと感じる場合は、主に以下の点を確認しましょう。
プロバイダー側の設備や速度制限の有無によって、通信速度の遅延が起こる場合があります。また、低速・不安定な回線プランを契約している可能性もあるため契約内容を確認しましょう。速度が十分でない、あるいは不安定な場合は、クラウドPBXの利用環境に適したプロバイダー・プランへの見直しが必要です。
Wi-Fiルーターは、通信規格が新しいほど最大通信速度が速く、利用可能な周波数帯が多くなります。古いルーターを使い続けている場合は買い替えを検討しましょう。その際、規格が「Wi-Fi6(最新のWi-Fi規格のこと)」以上のルーターがおすすめです。
また、HUBやLANケーブルもネットワーク環境に影響します。新しいルーターやデバイスに変えても、ケーブル類の規格が合っていないと十分に速度が出ません。LANケーブルでは「CAT」という規格で分類されていて、カテゴリー数が大きいほど通信速度も速くなります。利用環境に合ったケーブルを選択しましょう。
クラウドPBXの音質は、時間帯によって劣化する場合があります。これは通信経路の混雑によるもので、Web会議やデータの送受信などデータ量が増えることにより通信速度が低下するためです。
異なる時間帯で通話テストを行い、データ量が増える時間帯を把握すると良いでしょう。データ量の増加による音質低下を防ぐ対策としては、混雑する時間帯の通話を避ける、あるいは通話中に大量データの送受信を行わないなどが挙げられます。
通話テストは社内だけでなく社外でも必要です。クラウドPBXはネットワーク環境に左右されるため、利用場所の通信環境が悪ければ音質が低下します。外出先やテレワーク時の自宅など、よく利用する通話環境をチェックしておきましょう。
テレワーク場所が自宅の場合は、前述したネットワーク環境の見直しを行うと解決できます。外出先ではモバイル回線を使用しますが、格安SIMを利用している場合は通信の混雑時に速度低下が起こる可能性があるため注意が必要です。
また、移動中の通話は公衆Wi-Fiとモバイル回線の切り替えによって、通話が途切れやすくなります。公衆Wi-Fiはセキュリティ面からもあまりおすすめできないため、Wi-Fiをオフにしておくと良いでしょう。
複数の端末による通話テストも重要です。端末が古い、あるいはスペックが低いと音質の低下につながる可能性があります。それぞれの端末で通話を行い、音声の途切れやノイズの発生がないか確認が必要です。
そもそもクラウドPBXは、パソコンやスマートフォンに専用のアプリをダウンロードして利用するため、端末が古すぎるとアプリが対応していない可能性もあります。OSバージョンを最新版にアップデートする、端末の買い替えを検討するなど必要に応じて対策しましょう。
クラウドPBXの音質に影響を与えるのは、ネットワーク環境や利用端末以外にも考えられます。ここでは音質に影響を与える要因を紹介します。
クラウドPBXの音質は、高速で安定したインターネット接続が鍵です。そのため、光回線や専用線など高品質な回線が推奨されます。現在ISDNやADSLを契約している場合は、乗り換えを検討しましょう。
また、格安SIMは回線の一部を借りてサービスを提供しているため、混雑時に速度低下が起こるなど不安定になる可能性があります。可能であれば、通信が安定した大手キャリアを契約するのがおすすめです。
コーデックとは音声を圧縮・転送する技術です。コーデックの種類によってクラウドPBXの音質に大きく影響します。例えば「Opus」は高音質を実現し、広範なネットワーク条件下で利用可能なフォーマットです。
また、G.711はさまざまな音声通信サービスに採用されているフォーマットで、無圧縮で非常に高音質ですが帯域幅を多く消費します。高音質なほどデータ量が大きくなるため、環境に合わせた使い分けが必要といえます。
ネットワークにおける帯域とは、通信に使用する電波・光など周波数の範囲のこと。帯域幅は一度に送信できるデータの最大容量を指します。帯域が広いほど一度に送信できるデータ量が多くなるため、通信速度が速い状態となります。
クラウドPBXで推奨されている帯域幅は、1通話あたり最低100kbpsです。帯域が不足すると通話が途切れる可能性があるため、十分な帯域を確保する必要があります。
クラウドPBXにおけるQoS(Quality of Service)とは、安定した音声品質を保つ技術を意味します。社内のインターネット回線は、クラウドPBXだけに使用されているわけではありません。業務システムやメールの送受信などさまざまな用途に使われており、帯域が狭くなると音声の遅延などにつながります。
そこで通話品質の低下を避けるための対策が「QoS設定」です。ルーターやスイッチでQoS設定を行い、音声トラフィックを優先することで通話品質を向上させます。
レイテンシ(Latency)とは通信などの待ち時間を指し、音質においては命令を出してから実際に音が出るまでの時間の遅れです。遅延が大きいと通話のエコーや応答の遅れが発生します。
レイテンシは「Ping値」と呼ばれる値で示されますが、値が小さいほど快適であるとされ、50ms以下の遅延が理想的です。レイテンシに影響を与える要因としては、ケーブルやルーターなどが挙げられます。
パケットロスとは、通信中にデータの一部またはすべてが消失してしまう現象です。ネットワーク機器の異常や処理能力の低下、不安定な通信環境などが原因で発生するとされています。
パケットロス発生の有無は計測アプリなどで調べられ、1%未満が理想です。これを超えると音質が劣化し、音声が途切れるなど通話に支障をきたします。
クラウドPBXでは、音質やデータを確認できる機能が備えられており、活用することで通話品質の評価や改善につながります。例えば、Zoomが提供するクラウドPBXの「Zoom Phone」には通話品質ダッシュボードがあり、通話品質データの視覚化が可能です。
音声品質は平均オピニオン評点(MOS)で示され、1~5のスケールで測定。スコアが大きいほど通話品質が高いとされます。また、デバイスやネットワークなどカテゴリー別に表示でき、音質が悪い通話の抽出も可能です。傾向や問題を分析することで、パフォーマンス向上への対策に役立ちます。
クラウドPBXは通信技術の発達などにより、ビジネスフォンと遜色のない音質といえます。ネットワーク環境やデバイスなどに影響を受けるケースもありますが、これらは導入前のトライアルで確認が可能です。
さまざまな角度から十分な確認を行い、課題を改善しながら安定した音声品質を実現しましょう。