高いハードルがあった患者会への参加
導入の背景を教えてください
倉橋氏 私は、もともと小児科医で、染色体異常が原因で全身の臓器に症状が起こるエマヌエル症候群の原因や自然経過、家族の支援方法などについて研究しています。この病気は患者数が少なく、症状も多様です。そのため患者さんやご家族同士の情報交換の場として、東北と九州地方で年1回の患者会を開催していましたが、患者会に参加するための移動が患者さんや家族にとって身体的、経済的負担が大きいため、参加したくてもできない患者さんがいましたので、そこを何とかしたいと思っていました。
大江氏 私は、認定遺伝カウンセラーという立場で患者さんとその家族の支援にも携わっていますが、難病では患者さんやご家族が、同じ疾患を抱えるご家族と交流されることは、とても大きな力を生み出します。ところが、エマヌエル症候群のご家族はなかなかその機会を得られない現状がありました。
河村氏 患者さん同士の情報交換の場としてWebサイトに「友だちマップ」という自由記載コーナーを設けましたが、双方向性の交流の促進には繋がりませんでした。また、大学からWebサイトを通して医療情報を発信しても一方通行なので、どのくらい届いているのかわかりませんでした。
全国の患者さんが参加できる患者会を開催したい
オンライン患者会のきっかけは何でしょうか?
大江氏 倉橋先生から全国にいる患者さんが参加できるように「オンライン患者会をやってみよう」というお話があり、疾患に関する染色体の番号にちなんで11月22日をエマヌエル症候群の日とし、開催することにしました。
河村氏 私はそれを聞いて、これまでも何度かWeb会議の運営に携わった経験から各地の複数地点を結んで双方向で話ができるWeb会議システムなら実現できると考えました。
※Web会議画面はイメージです
Zoomミーティングを選んだポイントや導入の工夫を教えてください
河村氏 「Zoomミーティング」を選んだ決め手は、送られてきたURLをクリックするだけという手軽さです。これならWeb会議未経験者でもストレスなく会議に参加できると思いました。また、簡単に資料の共有ができる点も大きなポイントでした。
大江氏 オンライン患者会の開催にあたっては、Web会議システムに不慣れな人でも参加できるよう「Zoom ミーティング」の使い方マニュアルを作りました。
オンラインで可能になった活発な交流
当日の様子はいかがでしたか?
倉橋氏 2019年11月22日に第1回目が開催されたオンライン患者会では、会の冒頭でエマヌエル症候群の命名のもととなったエマヌエル博士と藤田医科大学との交流を行ったほか、北米の患者会の情報に関する講演を行いました。
川村氏 自宅から会場まで移動するという身体的、経済的負担がなくなり、さらに在住エリアに限定されず小児から成人までの患者とその家族が一堂に会して症状やケアなどについて幅広く情報交換でき、おおむね好評でした。
今後の活用法について考えていることはありますか?
倉橋氏 患者さんや家族との意見交換により「どんな情報が求められているか」がわかり、今後はWebサイトや患者会でさらに患者さんに役に立つ情報提供を可能になると思います。
川村氏 グループを分けて交流できる「Zoomミーティング」の機能を活用すれば、テーマごとに交流することも可能になりますので、今後はそうした機能を使うなどして、さらに患者さんとそのご家族に喜ばれる会を運営したいと思っています。
大江氏 今回は十分な告知期間が取れず参加者はやや少なかったのですが、次回はもっと早めに告知して、より多くの方に参加していただいて、皆さんの輪が広がっていったら良いなと思っています。