端末管理の負荷から解放され、音声データを「使える資産」に
「Zoom Phone」導入の背景について教えてください。
栗城氏 当社は、ママ・女性向けのオンラインITスクール事業と、その卒業生を活用した法人向けオンラインアシスタント事業を中心に展開しています。いずれの事業においても、個人・法人のお客様に対する電話営業が重要な役割を担っており、「Zoom Phone」の導入以前は、在宅で働くスタッフに対して携帯端末を郵送で送付・管理するという運用をしていました。
月に一定規模の入退職があるため、管理部門の負荷は小さくなく、端末が手元に届くまでのタイムラグが生じることで、即日から業務を開始できないケースもありました。また、通話ログや録音データを営業改善に活用したいという思いはあったものの、以前の仕組みでは音源を一件ずつ手動で確認するしかなく、分析よりもトラブル対応の守りの用途にとどまっていました。事業規模の拡大に伴い、この運用を見直すタイミングで「Zoom Phone」を知り、導入を検討することになりました。
「Zoom Phone」選定の決め手となったポイントは?
栗城氏 最も重視したのは、APIとの連携のしやすさです。通話データや文字起こしデータをAPIで取得し、外部ツールと組み合わせることで、営業支援の仕組みをつくれるかどうかが選定の核心でした。通話品質はIPフォン全般に対する懸念がありましたが、実際に試した結果、「Zoom Phone」は問題ないと判断しました。在宅のスタッフが多い当社の環境でも、通話品質に関するクレームはほぼ出ていません。
また、クラウドPBXへの移行によって端末管理が不要になり、ライセンスを追加するだけで即日から業務を開始できるようになった点も大きかったです。比較検討した他のサービスと比べても、API連携の柔軟性とコストのバランスで「Zoom Phone」が最も優れていると感じました。
Zoom PhoneのAPIとAIを組み合わせ、全商談へのフィードバックを自動化
具体的にどのような仕組みを構築されたのですか?
栗城氏 大きく3つの仕組みを構築しました。1つ目は「AIによる自動フィードバック」です。Zoom PhoneのAPIから文字起こしデータを取得し、iPaaSツール(Make)を経由してGPTに渡すことで、商談終了後10分以内にSlackへ自動でフィードバックが投稿される仕組みです。内容は点数・良かった点・改善すべき点・具体的なキラーフレーズなど、次の商談ですぐ実践できるレベルまで落とし込んでいます。
2つ目は「AIによる自動議事録」で、同じ仕組みを活用して商談終了後10分以内に議事録もSlackに届くようにしました。これにより1商談あたり15〜30分かかっていた事務作業がほぼゼロになり、組織全体で1日20時間以上の削減につながっています。3つ目は「架電間隔のアラート」で、架電終了から次の架電まで3分以上空いた場合にSlackへ自動で通知が飛ぶ仕組みを構築しました。リモート環境下では架電状況がマネージャーに見えにくいため、データに基づいて客観的に管理できるようになりました。
仕組みを設計する上で工夫されたことはありますか?
栗城氏 プロンプトをMakeのフロー内に埋め込むのではなく、スプレッドシートに外出しにして、マネージャーが自由に編集できるようにしました。プロンプトを変更すると次の商談から自動的に反映されるため、AIの出力品質をPDCAで改善し続けることができます。例えば、習熟度の高いメンバーには厳しめのフィードバックを出すよう調整したり、新人向けには励ましを重視した内容にしたりと、チームの状況に合わせて運用しています。
また、Slackのフィードバックチャンネルには全メンバー分の投稿を流すようにしています。上手くいった商談のフィードバックを他のメンバーが参考にできますし、在宅のスタッフ中心の組織では、オフィスのように自然に他者の商談が耳に入ることがないため、意図的にオープンな情報環境をつくることが大切だと考えています。
受注率約30%向上。数字だけでなく、メンバーの「自信」にも変化が
導入の効果はいかがでしたか?
栗城氏 全営業メンバーの平均で、受注率が約30%向上しました。また、架電間隔のアラートを導入したことで、1時間あたりの架電数が平均7件から約10件近くまで伸びています。
数字以外でも変化を感じています。AIのフィードバックは褒めることを前提とした構成にしているため、「自分のやり方で合っていたんだ」という自信につながっているメンバーが多いです。リモート環境では関わる機会が限られやすいからこそ、継続的なフィードバックによってメンバーひとりひとりの成長をサポートできるようになったことは、大きな変化だと感じています。
マネージャー側の変化としては、AIのフィードバックを起点にしたコミュニケーションが生まれるようになりました。「AIからもこう出ているし、私もそう感じた」という形でフィードバックを渡せるため、指摘の根拠が明確になり、双方にとって話しやすくなりました。マネージャーの工数は、以前とほぼ同等かむしろ削減できています。
今後の展開について教えてください。
栗城氏 現在はテキストによるインプット支援が中心ですが、学んだことを実際の商談で再現するためのアウトプット支援、具体的には音声を使ったロールプレイングやフィードバックの仕組みについても実験を進めています。AIが実際にお手本となる言い回しを音声で提示することで、「教科書を読んだ状態」で止まらず、自分の言葉として使えるようになる環境をつくりたいと考えています。
また、蓄積された商談データをマクロ分析に活用することも進めています。温度感の推移や失注理由の共通項を組織全体で可視化し、営業戦略やトークスクリプトの改善に継続的につなげていきたいと思っています。

