テレワークでも内線電話や企業の電話番号が使えるクラウドPBX。電話対応のためだけに出社しなければならない従業員がいたり、通話内容を録音・分析したりしたい企業では、クラウドPBXの導入を考えているのではないでしょうか。
クラウドPBXはテレワークの広まりとともに増加しています。クラウドPBXサービスとして代表的なZoom Phoneは発売から3年あまりで世界販売数が300万を超えるなど、クラウドPBXは世界的に人気が高まっている状況です。今回は、クラウドPBXの概要と、導入するメリット、選定ポイント、導入が進んでいる理由にについて解説します。
クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。
クラウドPBXとは
クラウドPBXは従来の電話回線とは異なる方式で電話を使用します。どのようなサービスなのか、定義や仕組みについて詳しく解説します。
クラウドPBXの定義と概要
クラウドPBXとは、クラウド上に内線電話システムであるPBX(Private Branch eXchange)を構築したものです。「クラウド電話」「クラウドフォン」と呼ばれることもあり、基本的にどれも同じものを指します。
ただし、クラウド電話とクラウドフォンはクラウド上の電話サービス全体であるのに対し、PBXはクラウド上のPBX(内線電話システム)を示す場合もあります。
クラウドPBXの仕組み
クラウドPBXは主装置をクラウド上に設置します。インターネット回線を通じてPBXと接続し、内線電話や外線電話を使用する仕組みです。インターネットに接続できる環境があれば、電話機、PC、スマートフォン、タブレットなどさまざまな端末からクラウドPBXにアクセスできます。
従来のPBXとの違い
従来のPBXはオフィスに電話回線を設置し、そこに接続された電話機を使用して内線電話や外線電話を使用するものです。クラウドPBXはインターネットに接続できる場所ならどこでも使用できるのに対し、従来のPBXは設置された電話回線が接続された場所に限られます。つまり、クラウドではないPBXで電話するためには、オフィスに出社しなければなりません。
また、電話回線の設置には大掛かりな工事が必要です。一方クラウドPBXはインターネット上のサービスを利用するため、クラウドPBXのベンダーと契約するだけで済みます。
両者の違いをまとめると、以下の表のようになります。
クラウドPBX |
PBX |
|
工事 |
必要ない |
必要 |
使用できる場所 |
インターネットに接続できる場所すべて |
電話回線を設置している場所 |
通話のために使用する端末 |
・PC ・スマートフォン ・電話機 などインターネットに接続できるもの |
電話機 |
クラウドPBXの導入が進む背景
従来、電話はオフィスに設置された固定電話機を使うのが当たり前でした。しかし、クラウドPBXが開発され、場所や端末を選ばない便利さからクラウドPBXに切り替える企業も増えています。クラウドPBXとして代表的存在であるZoom Phoneでは、発売から3年あまりで世界販売数が300万を超えるなど、世界的にクラウドPBXの導入が進んでいます。
ここでは、なぜクラウドPBXの導入が進んでいるのかその背景について解説します。
テレワークの普及
新型コロナウイルス感染症の影響により、出社を控える企業が増加し、テレワークの導入は一気に進みました。テレワークは、企業にとって通勤手当の削減、オフィス縮小による経費削減などのメリットがあるほか、従業員にとっても労働に関する負担が軽くなるというメリットがあります。
国土交通省の「令和5年度 テレワーク人口実態調査」によると、令和5年時点で、雇用型テレワーカーの割合は全国で24.8%、首都圏38.1%、中京圏22.0%、地方都市圏で16.3%という結果になりました。首都圏を中心にテレワークを行う人は未だ多いと言えるでしょう。
しかし、電話回線をオフィスに設置する従来型のPBXでは、出社しなければ内線・外線電話は使用できません。せっかくテレワークを導入したにも関わらず、電話対応だけに従業員が出社する企業もあるでしょう。
クラウドPBXであれば、インターネット環境があれば電話を使用できるため、テレワークでも問題ありません。電話対応もテレワークで行うためには、クラウドPBXの導入は必須と言えます。
コスト削減
クラウドPBXは電話回線を開通する工事や、電話機は必要ありません。クラウドPBX事業者と契約を行い、インターネットを使用できる端末を用意するだけで利用開始できます。もともとあるパソコンやスマートフォンを利用すれば新たに端末を購入する必要もなく、経費削減につながります。
また、通話料金も従来のPBXも安いサービスが多く、月額料金はかかるものの長期的に見るとコストダウンに繋がることも多いでしょう。
NTTのアナログ回線廃止
NTTは、2024年1月から段階的にアナログ回線を廃止し、IP網に移行すると発表しています。具体的に使用できなくなるのは、INSネット(ディジタル通信モード)及びマイライン/マイラインプラスです。現在これらのサービスを利用している場合でも、そのまま利用中の電話番号、電話機は使用できます。
企業によっては、NSネット(ディジタル通信モード)を使用して、電話機やFAXを利用しているところもあり、その場合はサービスの切り替えが必要です。この機会にクラウドPBXに完全移行する企業もあります。
NTTは、アナログ回線の廃止およびIP網への移行を2024年1月1日から実施しています。具体的に終了するサービスは、INSネット(ディジタル通信モード)及びマイライン/マイラインプラスです。NTT東日本およびNTT西日本によると、地域ごとに段階的なサービス終了を行い、補完策の提供は2027年ごろを見込んでいるそうです。
NTTのアナログ回線が廃止となった後も、取り急ぎ従来の電話番号、電話機が利用できるため、特に不便に感じない人もいるかもしれません。
しかしINSネット(ディジタル通信モード)で電話機やFAXを利用している企業は、順次サービスの切り替えが必要です。一定の期間はINSネットの補完策のサービスを利用できるものの、伝送遅延や通信影響の可能性があると公表されています。
アナログ回線廃止をきっかけに自社の通信環境を見直して、クラウドPBXに完全移行する企業が多いといえます。
DXの推進
官民ともにデジタル技術の活用でビジネスを変革させるDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進をしていることも、クラウドPBXの導入が進む背景のひとつです。
クラウドPBXは、従来の電話のように「ただ通話を行うだけ」のツールではありません。社内で利用しているCRMやSFAなどの外部システムとの連携をはじめ、マーケティングや営業を加速させる便利な機能が豊富に備わっています。通話内容や履歴データを収集・分析しながら、事業全体の効率化をはかることができます。
最新の生成AI技術を活用したサービスも登場しており、通話録音したデータの自動文字起こしや、要約・分析など、通話データの解析も可能です。クラウドPBXの機能を駆使して、電話や業務のDX化を推進できると期待が集まっているのです。
導入が容易
クラウドPBXの導入が進む大きな理由として、導入が容易なことがあげられます。
従来型の場合、導入時には社内で電話線の配線工事を行う必要がありました。しかしクラウドPBXはインターネット回線を利用するため、新たな配線工事を行わずに利用開始が可能です。
そのためクラウドPBXは初期工事の費用が要らず、従来型よりも初期費用を大幅に抑えることができます。回線を増やしたい場合でも、インターネット上で手続きを行うだけで完結するため、導入に手間がかかりません。
初期費用を抑えやすいため、新規事業立ち上げの際や、事業拡大にともなって拠点数が増えるシーンでの利用も増えています。
また、市外局番やIP電話、フリーダイヤルを利用していた場合、既存の電話番号をクラウドPBXに引き継いで利用することも可能です。サービスの乗り換え時に電話番号を変更せずに済むため、名刺やホームページ、営業資料に記載してある電話番号の変更が不要となり、書き換えコストを削減できるのも魅力です。
ただし、利用するクラウドPBXの業者によっては、既存の電話番号を引き継げない場合もあります。希望の電話番号が使用できるかどうか、必ず事前確認を行ってください。
クラウドPBXの導入シーン
ここでは、クラウドPBXの具体的な導入シーンを見ていきましょう。
全社でのテレワーク・ハイブリッドワーク対応
クラウドPBXの導入が進む背景として、テレワークの普及を紹介しました。クラウドPBXによってPCやスマートフォンから会社の内線・外線電話が使えるようになると、テレワーク・ハイブリッドワークに対応できます。
例えば、自宅にいながら会社の代表番号宛ての電話を受電し、離れた場所にいる同僚へ取り次ぎすることが可能です。電話対応のために出社する必要がなくなり、社員はよりテレワークやハイブリッドワークを選びやすくなります。
テレワークやハイブリッドワークをしやすい環境を整えることは、BCP対策としても効果的です。自然災害などで突然出社が困難になった場合でも、平常時からオフィス以外での仕事に慣れておけば緊急時でも事業を継続できます。
営業部での利用
外出や出張の多い営業部にとって、場所や端末を選ばず電話ができるクラウドPBXは業務効率化の手助けになります。
例えば外出中の社員宛てに電話がかかってきた場合、電話を受けても取り次ぎできません。電話を受けた人は相手に担当者が外出中であることを伝え、用件や折り返し先の電話番号を聞き、担当者に折り返しの依頼をするという作業が発生します。
一方、クラウドPBXを導入すればスマートフォンで電話を受けられるので、外出中の社員にも電話を取り次げます。もちろん、移動中や商談中で電話に出られないときもあるでしょう。しかし、一部の電話だけでも取り次ぎができれば、営業事務など常にオフィスにいる社員の負担を軽減できます。
また、営業部では録音やウィスパリングといった機能も便利に活用できます。例えば次のような使い方をすれば、架電スキルの底上げや標準化につながるでしょう。
・成績の良い営業社員の電話を録音して教材にする
・新人社員の電話対応時にウィスパリング機能で上司がアドバイスをする
カスタマーサポート部やコールセンターでの利用
カスタマーサポートやコールセンター、ヘルプデスクのように電話対応が主な業務の職種でも、クラウドPBXは便利です。クラウドPBXのなかには、次のようにカスタマーサポートに役立つ機能が多く備えているものもあります。
・顧客情報の表示
・録音
・自動音声対応
・ウィスパリング など
カスタマーサポートなどはオペレーターが一箇所に集まって業務をしているイメージがあるかもしれませんが、クラウドPBXなら自宅にいながら業務が可能です。オペレーターの採用時に居住地の制限がなく、人手不足の解消にもつながるでしょう。
また、クラウドPBXなら回線数を増減したいときはライセンスの変更だけで対応できます。そのため、オペレーターの人数に変動があっても複雑な手続きや回線工事が必要ないのもメリットです。
クラウドPBXのメリット
クラウドPBXを導入すると、以下のようなメリットが得られます。
コスト削減
クラウドPBXはインターネット上のシステムを利用するため、オフィスの工事が不要です。また、手持ちのPCやスマートフォンがあれば、契約後すぐに利用開始できるため、新たに専用の端末を購入しなくてもよく、従来のPBXより導入時コストを抑えられるでしょう。
クラウドPBXの料金体系はサブスクリプションが一般的で、使用する内線の数やオプションサービスに応じたランニングコストがかかります。しかし、一般的に通話料金やオプション利用料金は従来のPBXより低く、長く使用すればするほどコスト削減になるものもあります。
PwCコンサルティング合同会社によると、従来のPBXよりクラウドPBX(Office365 PSTN通話)に変更したところ、5年間の総コストが約27%削減することが分かりました。契約するサービスの種類にもよりますが、クラウドPBXによるコスト削減効果は大きいものになるでしょう。
管理の効率化
クラウドPBXのサービスによっては管理ダッシュボードなどを利用でき、それぞれの内線番号の稼働時間、通話内容の録音などを一括管理できます。また、ほかのCRMやSFAなどと連携できるものもあり、受電したときに顧客情報を閲覧できる、通話内容を顧客ごとに管理する、といったことも可能です。通話に関する管理や業務が効率化することになり、生産性向上にも繋がるでしょう。
また、PBX本体の管理やメンテナンスをサービス提供事業者に任せられるのもメリットです。自社で機器を保有しないため、資産管理の効率化にもつながります。
柔軟なスケーリング
クラウドPBXは内線番号の増減、利用するオプションの変更をしたいときは、インターネットを通じて設定できます。支店を増やすようなときも新たに回線開通の工事などは必要なく、ライセンスを増やすように契約内容を変更するだけで済みます。大きな費用をかけることなく簡単に設定を変えられるため、企業の状況に応じた柔軟なスケーリングが可能です。
リモートワーク対応
クラウドPBXの大きな特徴として、インターネットに接続できる端末があれば、場所を選ばずどこでも電話機能を利用できる点があります。通常のPBXだと、電話回線を開通しているオフィスに行かなければ受電や架電はできません。しかし、クラウドPBXでは従業員の自宅やサテライトオフィスでも電話対応ができるようになり、電話が必要な業務でもリモートワークができるようになります。
株式会社ジェイドコーポレーションの調査によると、在宅勤務だと内線電話が使えない、プライベートの携帯電話に業務関連の電話が掛かってくる、電話のためだけに出社している、といった声があがっています。電話を使用する業務がある企業で従業員がストレスなくテレワークを行うためには、クラウドPBXは必須と言えるでしょう。
スマートフォンの内線化
クラウドPBXでは、専用アプリを利用することでスマートフォンを内線化することができます。
内線化とは、社内にある固定電話から手元のスマートフォンへ内線通話が可能になる機能を指します。スマートフォンを内線化する方法は、専用アプリをインストールして簡単な設定を行うだけです。
スマートフォンを内線化すれば、外出先にいる社員やテレワーク中の社員に対しても内線通話が可能になり、「スマートフォンから社内へ」「スマートフォン同士で」など、双方向の内線通話が実現します。
社外から掛かってきた電話を、クラウドPBXを通じてスマートフォンに転送ができるため、場所を選ばず電話対応ができて利便性が高いのがメリットです。また、外線通話料金を削減できるため、コスト面でも利点が多いといえるでしょう。
豊富な機能
クラウドPBXでは、クラウドならではの便利な機能を多数利用することができます。
多くのクラウドPBXサービスで利用できるもののひとつに「通話録音機能」があります。通話した音声をクラウド上に保存でき、通話した日時、相手先、通話時間も記録され、いつでも再生やダウンロードが可能です。コールセンターのよな顧客との通話が多い業種でよく利用されています。
他にも、通話に参加していない他社が通話を聞くことができる「モニタリング機能」や、モニタリングしている通話に対して社内の相手に話しかけられる「ウィスパリング機能」も、従来の電話には無かった機能です。これらの機能は、営業職やコールスタッフなどの業務改善や、新人育成にも寄与するでしょう。
その他の代表的なオプション機能は以下のとおりです。
- 連絡先情報の保存・管理、共有
- 社員の勤怠管理
- IVR(自動音声対応)
なお、利用できる機能はクラウド電話によって異なるため、利用したい機能を提供しているサービスを選ぶようにしましょう。
外部サービスとの連携がしやすい
クラウドPBXは「CRM(顧客管理システム)」や「SFA(営業支援システム)」といった外部サービスとの連携を行うことで、使用できる機能がさらに広がります。例えば、かかってきた電話番号をもとに、CRMやSFAに登録されている顧客情報をパソコン上に表示させることが可能です。
従来のPBXはこのような外部サービスと連携させるのは難しく、基本的な通話機能のみの利用に留まる企業が多いでしょう。クラウドPBXなら外部サービスと連携して多彩な機能を実現し、業務効率化や対応品質の向上などが目指せます。
クラウドPBXのデメリット
テレワークで便利に使えるうえ、業務効率化にも繋がるクラウドPBXですが、いくつかデメリットもあります。クラウドPBXの導入を検討している場合、以下のデメリットも参照してください。
インターネット回線へ依存してしまう
クラウドPBXはインターネット回線を使用するため、回線状況が悪化すると品質が高い通話はできなくなります。
インターネット回線の速度が遅い場合、音声が途切れたり、通話途中に切断されたりします。稀に契約しているプロバイダに問題が起きインターネットが使えなくなると、電話を使用する業務を行うことすらできません。テレワークでクラウドPBXを使う企業であれば、従業員一人ひとりの通信環境を整えることも必要です。
セキュリティリスク
クラウドPBXを使用する上での懸念点として、セキュリティの問題があります。インターネットを介して通話をするため、ネットワークに脆弱性があると情報漏洩のリスクが考えられます。そのため適切に設定を行い、外部に漏れないようにしなければなりません。
また、クラウドPBXサービスにログインするときに入力するIDやパスワードが漏れてしまう可能性もあります。従業員それぞれがしっかりとしたパスワード管理を行うことが必要です。
テレワークでクラウドPBXを使用する際は、会話内容を盗み聞きされないよう使用場所も限定します。このように、クラウドPBXを使用する上でのルールづくりも必要になるでしょう。
カスタマイズの制限
クラウドPBXは業者が提供するサービス内容やオプションの範囲内での活用が可能です。自社で自由にカスタマイズして使用することはできません。どの業者もさまざまなプランやオプションを用意していますが、完璧に希望に叶うものを見つけるのは難しいかもしれません。
電話番号の移植性
クラウドPBXでは、すべての電話番号を使用できるとは限りません。サービスによっては、050から始まるIP電話の番号のみで、03や04から始まる「市外局番」、フリーダイヤルは使用できないものもあります。そのため、今まで企業の代表番号として使用していた番号が使えなくなるケースもあるでしょう。
企業の代表番号が変わると、関係している企業や顧客に一斉にお知らせをしなくてはならず、大きな手間がかかります。
【クラウドPBX】導入前に知っておきたいデメリットとは?従来型との比較も
クラウドPBXのデメリットについては「クラウドPBXにもデメリットはある?従来型PBXからの切り替えに悩んだらチェックしておきたいポイント3選」の記事で詳しく紹介しています。
クラウドPBXの選定ポイント
クラウドPBXを提供しているサービスはさまざまな種類があります。自社に合ったサービスを選ぶためには、次のようなことに気をつけてみてください。
通信品質と安定性
クラウドPBXは、高速度インターネットを用意する以外、自社で通話品質や安定性を高めることはできません。サービスが提供するクラウドPBXの通話品質や安定性に依存するため、高い通話品質と安定性を誇るところを選びましょう。
自社にとって十分な品質かどうか確かめるためには、実際に使ってみることが一番です。無料体験の活用や短期間の試験運用を試してみると良いでしょう。
導入・運用コスト
クラウドPBXを選ぶときは、導入・運用コストが予算内でなければなりません。企業が捻出できるコストの範囲内でサービスを選びましょう。
ただし、導入・運用コストはクラウドPBXサービスの種類だけではなく、プランやオプションによっても異なります。一見コストがかからないように見えても、必要なオプションを追加していくと他社よりも割高になることもあるでしょう。自社に必要な機能を洗い出し、必要なプランやオプションは何か明確にしてから導入・運用コストを比較すると効率的です。
セキュリティとプライバシー
自社で適切なインターネット管理を行ったとしても、クラウドPBXサービス側が攻撃を受け情報漏洩が起きる可能性があります。クラウド上にデータがどのように保管されているのか、定期的にアップデートが行われているのか、災害時にどのような対応をするのか、サービスごとに行っているセキュリティ対策を確認しましょう。
機能面の充実度
クラウドPBXはサービスが提供する機能しか使用できません。そのため、多くの機能を持つクラウドPBXのほうが便利でしょう。サービスによって得意とする機能は異なるため、自社内で内線通話が主な利用方法なのか、営業やコールセンターで使用したいのか、目的に沿った機能があるところを選びましょう。
サポート体制
自社にクラウドPBXに関する専門知識がある人材が不足しているときは、サポート体制が充実しているところがおすすめです。使用方法に問題があり、クラウドPBXが使えないようなことが起きると企業にとって大きな損失です。サポート対応が電話やメールのみだと、なかなか繋がらずに必要なときに必要なサポートを受けられないかもしれません。
また、サポートを受け付けている時間帯も重要です。営業時間内だけの使用であれば、平日日中にサポートがあれば十分ですが、24時間電話を使用したい企業であれば24時間サポートがあったほうが安心です。
外部サービスとの連携機能
CRMやSFAといった外部サービスとの連携機能を使いたい場合は、それに対応したクラウドPBXを選ぶ必要があります。外部サービスとの連携機能が備わっていないものや、機能自体はあるものの自社で利用しているサービスとの連携には対応していないものを選ばないよう注意してください。
外部サービスとの連携を重視する場合は、まず「自社で利用しているサービスとの連携に対応しているもの」という条件で導入候補の選定を進めましょう。
クラウドPBXサービス例
代表的なクラウドPBXとして、次の6つを紹介します。
Zoom Phone
Zoom PhoneはZoomミーティングで有名なZoomが提供するクラウドPBXです。Zoomミーティングと同じく、シンプルで直感的な操作が可能で、初めて導入する企業でもスムーズに使い始められます。Zoom Phone利用中にそのままZoomミーティングに移行できるなど、すでにZoomミーティングを導入している企業におすすめです。
Zoom Phoneは直接公式から購入もできますが、代理店販売からも購入できます。代理店販売であればプラン選びからサポートが入るほか、請求書払い(銀行払い)サービスも受けられます。
Arcstar Smart PBX
NTTドコモが運営するArcstar Smart PBXはFMC、内線機能を備えたクラウド型PBXサービスです。クラウドPBXとしての基本的な機能を備えつつ安定した品質を誇り、数多くの企業で導入されています。使用するサーバーはNTTコミュニケーションズの閉域網であるため、セキュリティに関しても安心です。
SmartCloud Phone
SmartCloud Phoneはあらゆる企業が柔軟に使用できる点が特徴的です。さまざまな端末、キャリアでも使用できるので、クラウドPBX導入後も固定電話で通話したい、BYOD利用をしたい、といった企業でも導入できます。また、数千~数万内線必要な企業にも対応可能で、全国に従業員がいる企業にもおすすめです。運営はNTTグループであるNTTコムウェアで、通話品質も安定しています。
ひかりクラウドPBX
ひかりクラウドPBXはオプションにより細かく内容を設定できます。既存の電話機を併用したままの導入も可能で、いきなりすべてをクラウド化することに抵抗がある企業や、なるべく導入費用を抑えたい企業のニーズにも応えています。まるらくオフィス対応のほうを選択すると、24時間 365日サポート対応もしています。
スマートフォンを利用した2週間の無料トライアル期間を提供しているため、クラウドPBXを一度体験してみたい企業や、通話品質に不安がある人でも安心して利用することができます。
MiiTel
MiiTelは、通話内容の文字起こし、音声解析、NGワード検出など、音声内容を業務に活用する機能が豊富にあります。電話による営業、電話窓口やコールセンターなど、電話応対が重要となる業務がある企業におすすめです。オンボーディングや活用支援セミナーなど、導入後のサポートも充実しています。
Webex Calling
Webex CallingはCISCOが提供するクラウド電話サービスで、CISCOのほかのサービスであるWeb会議やチャットと連携して便利に使用できます。無料プランもあるため、自社に合っているかどうかを気軽に確認可能です。東京「03」大阪「06」など地域の番号も使用できることから、現在利用中の番号を変えなくても済みます。
クラウドPBX主要6社を徹底的に比較しました|料金・機能・連携機能など
クラウドPBXのサービス比較ついては「クラウドPBX主要6社を徹底的に比較しました|料金・機能・連携機能など」の記事で詳しく紹介しています。
まとめ
クラウドPBXはインターネット環境があればどこでも使用できる内線システムです。クラウドPBXはテレワークでも電話ができるようになるほか、録音や文字起こし機能など機能面も充実しています。使用の際にはセキュリティ対策も必要ですが、業務効率化も期待できるでしょう。
クラウドPBXにはサービスによって特徴や料金、提供する機能は異なります。自社で機能を付け足すようなことはできないため、自社に必要な機能は何か明確にし、必要な機能を網羅しているものを選びましょう。
自社のネットワーク環境、端末で問題なく使用できるかどうかは、使ってみないと分からないところがあります。無料体験で試してみる、短期間だけお試し利用する、といった方法で、自社に合っているかどうか使ってみてください。
クラウドPBXの特徴、導入ステップをまとめて紹介
テレワークやハイブリッドワークをはじめとした働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの方法やツールも変化しています。特に近年では多くのサービスがクラウド化され、いつでもどこからでも簡単にアクセス、利用できるようになりました。
オフィスの電話ツールも例外ではなく、クラウドPBXの導入が多くの企業で進んでいます。
本冊子では、クラウドPBXの概要や特徴、実際に導入する際の検討事項などをまとめました。