2023年04月11日

メタバースプラットフォーム「cluster」エンジニア 倉井氏が語る、Agoraの強みと開発体験

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スマートフォンやPC、VR機器など、さまざまなデバイスやOSからバーチャル空間に集って遊べるメタバースプラットフォーム「cluster」。ユーザーはアバターの姿でバーチャル空間に集まり、その中で音声チャットを行いながらゲームで遊んだり、一緒に音楽ライブを見たりといったコミュニケーションを取ることが可能です。

clusterの特徴は、ユーザーが独自にワールド(cluster内のバーチャル空間の総称)を制作できる点。ワールドの中で活用できるリソースとして、2022年4月にAgoraを活用した「画面共有機能」が登場しました。バーチャル空間でのコミュニケーションを阻害しない低遅延性と大人数で見ても問題のない安定性、Agora × Unity開発のスムーズさについて、cluster ソフトウェアエンジニア 倉井龍太郎氏にお話を伺いました。

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インターネットの原体験を求めてクラスタ―社へ

――これまでのキャリアや専門領域について教えてください。

 

キャリアのスタートは株式会社はてなで、修士時代のインターンからそのまま内定を頂き、4年ほどWebアプリケーションエンジニアとして働きました。サーバーもクライアントも、iPhoneもAndroidも垣根なく触っていた状態で、良く言えばフルスタックエンジニアのような格好で経験を積ませていただきました。

 

博士課程への興味を持ち続けていたこともあって、2社目は科学技術振興機構(JST)で研究者として働くことになりました。文字列アルゴリズムについて研究するなか、プロジェクトメンバーが立ち上げた会社に誘われて、3社目はビッグデータやAI/MLを用いた株式投資系のシステム開発にCTOとして従事しました。

 

得意分野はWeb開発、周辺領域のアプリ開発などフロントエンド部分と、データ分析やアルゴリズムになります。

 

――clusterとの出会いを教えてください。


札幌時代にお世話になっていた方が主催となった個展のバーチャル版をclusterで制作したのが始まりでした。4面スクリーンに8ミリフィルムの動画を投影するインスタレーション作品の展示が行われたのですが、コロナ禍でなかなか見に行くことが難しい方も多いとのことで、「それなら、VR空間に置いてみては?」と提案したことがきっかけです。

 

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画像引用:Mirai of Memories|Metaverse Platform cluster

 

もともと知人がクラスタ―社に在籍していたことからサービス自体は知っており、ワールドの作りやすさとデバイスの対応状況の広さから制作手段として選択しました。足掛け4ヶ月ほどで完成したのですが、驚いたのは「公開した瞬間、すぐに誰かが入ってきた」ということです。

 

気軽に誰かが見に来てくれて、アバターながら人のような動きをして自分と一緒に作品を見ている……これは、インスタレーションの文脈から見ても素晴らしいことだと感じました。

 

――ご自身の視点で、clusterに魅力を感じた点を教えてください。

 

実際にclusterを使ってみて、「昔の楽しいインターネットに近い」という印象を持ったんです。あの頃はみんながHTMLを書いてWebサイトを作って、誰かが来て掲示板になにかを書き込んでいき、そこから少しずつコミュニケーションが発展していました。そこにはUGC(User Generated Contents)の原点のような空間があったように感じています。

 

ずっとインターネットが好きで、もう一度UGCの世界で仕事をしてみたいと感じて、現在はクラスタ―に入社してエンジニアチームのマネジメント業務に従事しています。

「創造力を加速する」clusterの仕組み

――ユーザー自身がワールドを作ってコミュニケーションを行うメタバースプラットフォーム「cluster」ですが、改めてサービスの概要やヴィジョンを教えてください。

 

クラスタ―は「人類の創造力を加速する」というミッションを持っています。弊社代表の加藤は「3D空間にモデルを自由に配置する、その中にロジックを組み込むという行為は、白い紙に次ぐ発明である」と説明しており、clusterはその手段として最適な仕組みを目指して作られています。

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シンプルに言えば「3D空間を自由に歩き回れるメタバース」で、ユーザーはその中に集まってお喋りをしたり、動画やライブを見たりといった遊び方をしています。ユーザー自身がUnity SDKを用いてワールドを作ることができるほか、2022年2月にリリースしたワールドクラフト機能を使うことで、専門知識不要で誰でもワールド制作を楽しむことが可能になりました。

 

「ワールドクラフト」リリース!

 

――ワールドクラフトを皮切りに幅広いユーザー層が集っている印象を受けます。近年はストアも開設されましたが、この理由を教えてください。

 

最近のアップデートでは、ワールドクラフトストアというかたちでアバターやアイテムを売買できるようになりました。みんなで集まれる環境を整えるために、バーチャル経済圏のインフラ整備も行っています。「作るのが好きなだけ」では永遠に活動を続けることができないので、経済性が伴うことで長く居続けられる環境を提供できるのではないかと考えています。

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「画面共有機能」でAgoraが選ばれた理由

――今回のテーマである「画面共有機能」について、開発経緯を教えてください。

 

近年は数多くの業界でメタバースへの注目が集まっています。clusterでは、VR空間におけるイベント企画やワールド設計について、ディレクションからCG制作までワンストップで行うBtoB事業も展開しています。

 

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ここで高いニーズを示したのが「画面共有機能」です。入社式などの催し物でスライド資料を出したり、画面を見せながら研修を行ったりといったニーズは予想以上に高く、以前から機能の必要性を感じていたこともあって開発を行うに至りました。

 

――clusterは音声通信の仕組みを自社内でお持ちだと思います。高い開発力を持ちながら、なぜAgoraを使って開発することを選択したのでしょうか。

 

Agoraを使用した理由は「低遅延で動画が送れること」「10万人規模に対応できること」「Unityで動作すること」の3点です。共有した画面が遅延していた場合、画面を見ながら話すのが難しくなります。速度だけならWebRTCで開発を進める手もありますが、10万人というレベルで接続可能なソリューションはほぼありません。

 

また、Unityで動作するマルチプラットフォーム対応の動画システムを内製するのもコーデックの関係で困難です。これら全てを解決する手段として、Agoraを使用することに決めました。

 

――機能リリースまでの大まかなスケジュールを教えてください。

 

2021年秋に要件定義の上でツールを探し始めて、2021年10月末には初回のお問い合わせをさせていただきました。問い合わせ前にUnity上で簡単な実装をしてみて、正常に動くことは確認していました。正式にAgoraを使用することを決めたのが12月で、プロトタイプ開発から本実装まで約2ヶ月、QAを経て2022年4月18日に機能リリースとなりました。

 

開発はUnityエンジニア、サーバーエンジニア、フロントエンドエンジニアの3名です。サーバーサイドの開発では、非常に細かくトークン認証できる仕組みが存在するのもポイントとなりました。cluster側の規約に抵触した場合の緊急対応など、短いサイクルでトークン更新・柔軟な管理が可能なこともユニークな強みだと感じました。

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画像:Agoraのサイトより日本語訳

 

――これまでにAgoraを使用した経験はなかったかと思いますが、導入は容易でしたか?

 

Unityで動作するサンプルプロジェクトがありますので、1日ほどで動画を送る仕組みをテストすることはできました。遅延をチェックするために手元の時計を画面共有で送ってみたところ、なんと初回のテストで1秒を切っていたんです。目に見えて低遅延なのが分かって、この時はかなり感動しましたね。


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※画像は、イメージです

 

その後、触り心地を確認するUI/UXのフェーズが長かったのですが、基本機能の実装はあっという間でした。技術的な部分もチケットで相談できる仕組みになっていたので、ブイキューブ側のサポート体制も万全だと感じました。

機能リリース以降も不具合なし。多くのイベントを支える安定感

――「画面共有機能」リリース後のユーザー反応を教えてください。

 

おかげさまで、当初想定していたより多くの方にご利用いただいております。ワールドクラフトのスライド表示画面部品として活用できるため、ユーザーの方は自宅にテレビを置くようなかたちで、友達と一緒に画面を眺めるような楽しみ方をしているようです。

 

変わったところだと、画面共有のスクリーンをワールドにたくさん配置して、同じ画面を投影すると非常に見栄えのする演出になります。壁一面が同期して動くような見え方になるので、なかなか面白い使われ方をしているなと感じました。

 

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――BtoBニーズも強かったとのことですが、リリース後はどういったユースケースが見られましたか。

 

当初想定した使われ方もしていますが、公式イベントとしてはゲーム実況の事例が印象的です。「ゲームをプレイしながらトークをする」というのはゲーム画面の転送に遅延があっては成立しないため、これはまさにAgoraが活用できた事例だと考えています。

 

 

もちろんプレゼンツールとしても活用されているほか、それぞれが自分の環境で使うツールやUnity画面を共有しながらレクチャーするといった光景も見られています。

 

――リリース後も大きなトラブルなく安定稼働していますか?

 

手放しで運用できていて、動作は問題ありません。Agora起因の画面配信トラブルは今のところ聞いたことがないですね。

 

――今後、Agoraを使ってチャレンジしてみたい領域があれば教えてください。

 

あくまで個人的にですが、低遅延であることがバーチャルイベントの演出面の強化に繋がるのではないかと考えています。コールアンドレスポンスのような遅延があると難しいインタラクションや、場合によっては現実空間で生演奏をする中でバーチャルキャラクターが歌うといったことも実現可能かも知れません。

 

私自身がバーチャルイベント好きということもあって、Agoraのように低遅延かつ大人数にコンテンツを届けられるソリューションを見ていると期待が膨らみますね。

 

――最後に、Agoraに興味を持たれた方に対してメッセージをお願いします。

 

先ほどの話にも挙がりましたが、サンプルプロジェクトをビルドするだけなら無料でできますし、簡単に機能を試すことが可能です。まずは手元で動かして、この快適さと低遅延さを体験して驚いて欲しいと思います。

 

サンプルプロジェクトの出来も非常に良く、APIも分かりやすかったため、その先自分たちがどのように実装すれば良いか想像もしやすいと思います。まずは是非、実際に試してみてください!

 

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神山 大輝

執筆者神山 大輝

ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。

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