音声コンテンツの可能性を信じて「stand.fm」を開発
――これまでのご経歴を教えてください。
学生の頃、女性向けキュレーションプラットフォーム「MERY」を運営する株式会社peroliを共同創業したのがキャリアの始まりです。その後しばらくは自身でサービス開発をしていました。
いくつかサービスをリリースした後、音声市場への参入を決め、音声配信プラットフォーム「stand.fm」を始めました。
現在、音声配信プラットフォーム「stand.fm」を運営する株式会社stand.fmで代表取締役 共同代表をしています。経営者としてプロダクト全体の責任を担っています。
――なぜ音声配信に注目したのでしょうか。
今後は日本でも音声コンテンツが流行るだろうと考えたからです。私自身、元々Podcastが好きで、「もっと幅広い種類の音声コンテンツがあったらいいのに」とリスナーのニーズの大きさやコンテンツの可能性について身を以て感じていたことも背景にあります。
こうした実体験から、スマートフォンひとつで音声を収録・配信できる体験が面白いのではと考え、着想から半年ほどで音声配信プラットフォーム「stand.fm」を開発しました。2018年12月からステルス状態でアプリを配信開始し、2020年2月頃から本格的にサービスを公開して今に至ります。
画像引用:App Store
――ちょうどコロナ禍での本格リリースでしたが、サービスへの影響はありましたか。
ポジティブな面もありましたが、音声コンテンツの特性上、何か他のことをしながら聴く「ながら聴き」で楽しまれることもあり、コロナ禍で通勤時間が減ってしまい聴かれにくくなった感覚はありましたね。リスナーの聴取時間が減ることは、コンテンツをつくる配信者にとって向かい風です。ただ、弊社の課題感としては、より良いプロダクトを提供できているのかが変数として大きかったと思います。
ただ、動画コンテンツを楽しむ生活者が多い中でも、「目の可処分時間」とは別で「耳の可処分時間」が存在すると考えています。漫画を読むこともライブ配信を視聴することも、目で見るという観点で時間の使い方が同じですが、音声コンテンツなら「ながら聴き」できるので可処分時間が空いていると言えます。動画の視聴と音声の聴取は性質が異なるものとして成立するのではと思っています。
リスナーの滞在時間は1日あたり80分。「stand.fm」の魅力とは
――音声コンテンツの配信者にとって「stand.fm」の魅力は何でしょうか。
stand.fmでは収録機能・ライブ配信機能・収益化機能を提供しています。その他、オリジナルBGMや音声編集機能、音声ファイルのアップロード機能といった、アプリの利便性で音声配信者に選ばれていると感じています。
特に収益化に関しては、音声配信で収益を得て活動を継続できるようにとの思いで、4種類の収益化プログラムを用意しています。「stand.fm パートナー プログラム(SPP)」「有料コンテンツ」「メンバーシップ機能」「ギフトポイント」の4つです。
画像引用:stand.fm「音声配信をはじめよう」
――現在、どのような配信者・リスナーが使っているか教えてください。
累計10万人以上がstand.fmでの配信経験があります。あらゆるジャンルの配信者がいて、たとえばスポーツの試合会場での実況解説をする配信者もいます。
一方、音声コンテンツを楽しむリスナーは、1日80分ほど滞在して音声を聴いています。stand.fmというメディアを見にくる使い方よりも、特定の配信者の音声を聴きにアプリを訪れる使い方が多いです。
特定の配信者にたどり着く流れは、視覚情報のない音声コンテンツでは特に難しいところです。アプリから配信者をレコメンドしている他、コラボでのライブ配信がきっかけでリスナーが新たな配信者を知る体験もあります。
「コラボ配信機能」でAgoraが選ばれた理由
――今回、stand.fmのコラボ配信機能の面で、Agoraを選ばれた理由を教えてください。
stand.fmのコラボ配信機能は、WebRTCで開発していました。ただ、品質面・運用面で課題を感じ、Agoraに切り替えることにしました。
コラボ配信機能を提供開始した当初から、リスナーから「音声が聞こえない」「音声が途切れる」との声がありました。何が原因かをすぐに調査していたのですが、WebRTCでは課題の切り分けができず、根本原因を掴めなかったんです。音声の不具合が端末の問題なのかネットワーク環境の問題なのか、再現・把握できないことが大きな課題となっていました。
その他、iOSだけでなくAndroidアプリでもコラボ配信機能を提供したいものの、WebRTCでは自社開発が難しいことも課題としてありました。
こうした品質面・運用面で対策をしなければと、他のSDKを探し始めた頃に流行り始めたのがClubhouseです。世界中で利用されているのに、Clubhouseはレイテンシーが少なくて安定していると感じました。そこでClubhouseはAgoraを使って開発されていると知り、導入を検討し始めました。
――品質面で課題があったコラボ配信ですが、Agora導入時に品質面の不安はありましたか。
音声が安定するか不安はありましたが、やはり世界規模でユーザーがいるClubhouseの音声が安定していたことが大きな決め手となりましたね。
どのSDKであっても、品質面は本番実装をしてみないと分からないと考えています。国産・海外ツールを幅広く情報収集してみましたが、説明を読んだところで通信の安定性は評価しづらいですし、テスト実装をしても本番環境では正直どうなるか予想できないなと思いました。
その点、既にClubhouseがAgoraで安定した音声配信を実現していたことは安心材料になりましたね。どんなサービスで使われているかは重要だと感じました。
――Agora導入までどのように進めたか、教えてください。
Agoraの導入を決めるまでは数ヶ月ほどでした。まずは海外のドキュメントを見ていたところ、日本の代理店でブイキューブがあると知り問い合わせしました。導入後は比較的早く実装できたように感じています。
Agoraはドキュメントが充実しているので、十分すぎるくらいに情報がありました。そんな中で、ドキュメントを見ても解決できない不明点に関しては、ブイキューブのサポートに2〜3回ほど問い合わせしたことがあります。サポートからすぐに回答がきたので良かったです。
Agoraで音声が安定し問い合わせ件数が減少。より良い音声体験へ
――導入後の変化を教えてください。
コラボ配信の音声の品質がかなり良くなりました。結果、ユーザーからの問い合わせが減っています。
WebRTCでは、状況の切り分けができず不具合の原因を掴めなかったことも運用面での課題でしたが、Agoraには通話のアナリティクス機能があります。アナリティクス画面では、通話相手に届いている音声のデシベルが表示されるので、音声がどこまで届いているかを確かめるときに実数で把握できるのがとても便利です。
画像引用:agora.ioヘルプセンター
――今後、Agoraを使ってチャレンジしてみたい領域があれば教えてください。
海外の音声市場では、動画のPodcastが流行りつつあります。この流行を踏まえて、映像配信にも対応できるようにするのも面白そうです。動画のPodcastから派生して、アバターを使った配信機能も将来的には考えられますね。
現状、ライブ配信で使用している音声はステレオ対応していません。より良い音声品質を求めるユーザーに向けて改善していけたらと思っています。
――最後に、Agoraに興味を持たれた方に対してメッセージをお願いします。
Agoraは音声通話の品質面で満足度が高いです。配信の品質に高い優先度を置くのであれば、Agoraを試してみることをおすすめします。
ライブ配信機能や通話機能であれば、手軽に実装できると思います。モバイルアプリ・Webアプリの両方に対応できるSDKがあるので実装しやすいです。ぜひ試してみてください。
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