ライブ配信の実装が大変な訳
そもそも、なぜライブ配信の実装はハードルが高いのでしょうか。ここでは、クライアント、サーバー、そして各種トラブルシューティングの3つの観点から、その理由をお伝えしましょう。
クライアントサイドの実装
まず基本的なUIや機能を満たす必要があるのは言うまでもありません。そもそもUIが使いづらければ、ユーザーは動画を視聴しません。
また動画の視聴を始めた瞬間にアプリが落ちてしまうなどトラブルが発生すると、サービスそのものからユーザーが離れてしまうリスクもあります。
端末依存の問題への対応なども大きなネックになります。スマートフォンなら、iOSとAndroid両方で動画が配信されるか検証する必要があります。
また、ある端末はH.263形式のエンコードには対応しているものの、H.264形式のエンコードには対応していないなど、ライブ配信に支障が出ないようテストすることも欠かせません。
実装できるエンジニアの確保も含めると、クライアントサイドの実装も大きな壁になりうるでしょう。
サーバーサイドの実装
さらに、サーバーサイドでもライブ配信を行う際にクリアすべき問題が山積します。リソース設計、冗長化、スケールアウト、監視、メンテナンス、障害対応フローなど、考えるべき課題は多岐に渡ります。
ライブ配信は映像だけでなく、音声の入力も発生します。またコンテンツによってはテロップを入れるなど、入力される情報も様々です。これらをサーバーサイドで問題なく処理できるか、実装やテストにも高い技術が求められるでしょう。
各種トラブルシューティング
いざローンチしても、リアルタイムで配信する場合は様々なトラブルシューティングのノウハウが必要とされます。
例えば、音声に何かトラブルがあった際は、音響設備に関するノウハウが求められます。またライブカメラとライブ配信用のパソコンなどに、ポートの接続制限がかかっていないかも予めチェックすべきでしょう。
このように、各種トラブルが発生した際に、その要因を特定し対策を講じるスキルも必要です。
サーバーサイドの実装が不要なライブ配信基盤のまとめ
このように、ライブ配信には様々なハードルがあります。しかし、近年はこのハードルがグッと下がりつつあります。
その要因のひとつが、サーバーサイドの実装が不要なライブ配信基盤が登場したことが挙げられます。サーバー実装に求められるリソース設計、冗長化などのスキルは極力不要となり、メンテナンスはサービス提供者に委ねられます。
ライブ配信基盤にも様々な種類がありますが、今回はその中でも代表的なAWS MediaServices、Wowza Streaming Cloud、Agora.io、Akamai Media Services Liveの4つを紹介しましょう。
AWS MediaServices
AWS MediaServicesは、AWSのライブ配信向けソリューション群であり、 「AWS Elemental MediaConvert」 、「AWS Elemental MediaLive」などいくつかのサービスから構成されています。
クラウド上で動画配信を実施する方を対象に開発された、「フルマネージド」のソリューションであり、AWSという基盤をベースに複数のプロダクトで構成されています。
そのため、対応領域は、ライブ配信のみならず、有料の動画配信サービスの展開などビジネス領域まで対応可能な機能を有しています。
プロトコル
入力については、RTP(Push)、RTMP(Push&Pull)、HLS Pull (HTTP, HTTPS, S3, MediaStore)が対応。また、映像コーデックについては、H.264 (AVC)、音声コーデックについてはAACなどが主に対応フォーマットとなっています。
特長
AWSのフルマネージドサービスとして、構築の手間を大幅に省けるのが最大の魅力でしょう。
先に挙げた動画変換を行う「AWS Elemental MediaConvert」、ライブ配信を行う「AWS Elemental MediaLive」、視聴者の環境に合わせてフォーマットやデータ保護を行う「AWS Elemental MediaPackage」、映像配信で欠かせない超高速なアクセスを実現する高性能ストレージ「AWS Elemental MediaStore」、さらにユーザーへのターゲット広告やパーソナライズを実現する「AWS Elemental MediaTailor」までカバーしています。
また全てのサービスは日本にある東京リージョンで使用でき、課金も使用した分のみ支払う仕組みとなっており、コスト面も大きな魅力です。
Wowza Streaming Cloud
ストリーミングサーバーのミドルウェアとして著名な「Wowza Streaming Engine」と同じ会社が提供する、CDNやPlayerまで包含されたサービスです。
エンドツーエンドのライブストリーミングやカスタムされたストリーミングソリューションとしても活用できる拡張性を持ち、操作も非常に簡単です。
プロトコル
RTMP, HLSなどが使用可能です。
特長
Wowza Streaming Cloudの最大の特徴は、管理ポータルGUIを使って、わずか数分でプロレベルのストリーミング環境を構築できることです。
様々なプロトコルやコーデックに対応しているだけでなく、広範囲のネットワークを活用し、デバイスまで届くストリーミング用のサーバーを手に入れることができます。
さらに価格もリーズナブルで、スケーラビリティも備えているのも特長です。4KやHDストリーミング、バーチャルリアリティなど高度な機能が驚くような手軽さで手に入れます。
Agora.io
2014年創業の比較的新しいサービスでありながら、低遅延の配信技術が高く評価されています。そのため、アメリカ・中国・日本・インドなどの大手企業に幅広く採用されています。
1ヶ月あたりの利用時間は約100億分、利用されている国は100ヶ国にのぼります。
プロトコル
UDPベースのプロトコルで、RTMP, HLSへの変換も可能です。
特長
1秒以下の低遅延を実現しているのが大きな魅力です。一般的なCDNで使われているHLSなどのプロトコルでは10〜40秒の遅延が生じるリスクがあります。しかし、Agora.ioは独自のプロトコルを開発して、平均0.3秒の超遅延を実現しました。これにより、ストレスレスな配信が可能です。
また、双方向の映像・音声の通話も可能に。そのためライブ配信サービスやボイスチャットサービス、医療・介護や企業の採用面接のビデオ通話で利用されています。
さらに、低価格であるにもかかわらず百万人規模の配信も耐えられるキャパシティも有しており、大規模なコラボ配信も実現します。
Akamai Media Services Live
言わずとしれたライブ配信基盤の雄。ライブストリーミングサービスに信頼性と拡張性をもたらすサービスとして、18年以上に渡り世界で展開しています。テレビ放送水準の品質を実現し、世界でも指折りのコンテンツプロバイダーから支持されています。
プロトコル
RTMP, HLS, CMAFなどが使用可能です。
特長
HTTPベースのストリーミング配信技術の低遅延化に貢献する規格として注目を集めています。セグメントの細分化を的確に処理し、テレビのような視聴体験をオンライン視聴者へ提供しています。
また、自己修復型のネットワークにより、複数の拠点にコンテンツをコピーして、エンコーダーを最も適したエントリーポイントに動的に割り当てることで、サービスの信頼性を高め、24時間途切れることがない可用性を実現します。
CMAFのデモ版を公開するなど、常に配信技術の最先端を走っているのもAkamaiの特長です。
まとめ
ここまで、サーバーサイドの実装が不要なライブ配信基盤についてお伝えしました。どのサービスも特長があり、ユーザーのニーズに応じて選択するのが良いでしょう。ライブ配信基盤を選ぶ一助になれば幸いです。
Agora.ioの事例集ダウンロード
実際にライブ配信サービスを展開している企業は、ライブ配信基盤をどのように活用しているのでしょうか。
当社では、記事内でご紹介したagora.ioを活用した事例を以下のとおりまとめております。
有料会員向けの動画配信サービス、LIVEトークアプリ、スマホ操作のビデオチャットサポートなど様々な場面でagora.ioをご利用いただいております。
ライブ配信サービスの開始を検討している方は、ぜひ事例集をダウンロードしてご覧ください。