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2025年12月09日

「OneイベントとはAIに嫉妬されるサービスです」 [インタビュー]「Oneイベント」ストラテジスト・大友堅太郎 /KENTARO OTOMO

「OneイベントとはAIに嫉妬されるサービスです」 [インタビュー]「Oneイベント」ストラテジスト・大友堅太郎 /KENTARO OTOMO

2025年9月、「イベントは最強のコミュニケーション」という打ち出しでリニューアルしたブイキューブのイベント事業。

その中核的な役割を果たしているのが大友堅太郎(おおとも・けんたろう)だ。

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驚いたのは「Oneイベント」というネーミングと共に掲げるビジュアルとして、自らが被写体となる企画。


写真に映る本人は真顔だが、その裏側にいたずら心を感じさせる。
 


「そもそも、ブイキューブのイベント事業にはサービス名称が存在していませんでした。ブランディングをしようにも、その基盤がない。まずはそれを作ろうというのがスタート地点でした。『コミュニケーションを戦略資産に。』というサブコピーも、社内の課題意識から派生したもの。有名人でもない限り誰が写真に映るかというのは、お客様には関係ない話ですよね。それが誰か、外からはわからない。重要なのは覚悟を示すこと。社内に向けて『やるんだ』というメッセージを伝えるために、プロの力を借りて撮影に臨みました」
 


大友は宮城県の沿岸部にある岩沼市出身で、大学進学を機に上京。2014年、ブイキューブに新卒入社したプロパー社員だ。20年にはイベント事業領域の営業マネージャーに就任し、事業の舵取りとメンバーのマネジメント役を担ってきた。
 


「社会人になってから『堅太郎は人の話を聞かないよね』とずっと言われてきました。でも、大学時代の友人は『あいつ、こんなに一生懸命やるやつだったっけ?』と言ってくれているらしい。ブイキューブは真面目な人が多いので、仕事の上ではあえて末っ子キャラを演じているところもあります。自分の根幹にあるのは『みんなの笑顔が見たい』ということで、尊敬している先輩も含めてしかめっ面をしているところは見たくないんですよね」
 


ブイキューブは1998年、その前身となる「有限会社ブイキューブインターネット」として創業。慶応義塾大学出身者による学生ベンチャーで、2013年に東証マザーズ(当時)に上場している。「情報×コミュニケーション」を強みとする企業だが、実際に多くの社員と関わってみるとコンサバな印象すら抱く。「顧客起点」を掲げるサービス/プロダクト群には、ワークブースとして人気のテレキューブを筆頭に、奇を衒わず時代を捉えようとするアイデアが背景にある。
 


「WEB会議ツールの販売に始まり、事業会社としてたくさんの成功と失敗を経験して30年近い歴史を積み重ねてきたと思うんですよね。私の場合は、提案営業がキャリアの始まり。インフラ系から製造、小売業まで、様々なお客様にWEBサービスの導入検証から実装まで一気通貫で支援させて頂きました。そうした中で、本当にたくさんのことを学んだ。お客様を通じて、社会を見る--これがBtoBビジネスに携わる喜びだと思います。いま私がコミットしているイベント事業について言うと、コロナ禍のウェビナー需要で売上を伸ばしてきた。今ではそれだけがスケールした要因だったように語られているけど、実際はオペレーションの部分でニーズに対応するための体制構築を行ってきた。社会の変化が前提にありながら、それを受けてどのように自社の文化や財産を築き上げていくか。そういう課題感、モヤモヤが『Oneイベント』の根幹にあります」
 


「Oneイベント」の資料には、「全てのWORKはイベントでつなげることができる」というコピーが掲げられている。

ブイキューブの資料

例えば、社内のキックオフイベントは社員のエンゲージメントを高める一方で、経営のメッセージを齟齬なく伝えるための機会でもある。


その伝達力が、社外向けのイベントでも価値連鎖を生み出す。社員の高い士気と戦略理解が、マーケティングイベントのような場でも効果的に機能する。


そうして積み上げられた実績が、株主総会のようなステークホルダー向けのイベントでもモノを言う――そうした「一気通貫の設計思想」が大友の真骨頂だ。
 


「父親は一級建築士で、地元の宮城で建築事務所を経営しています。その影響はあるかもしれませんね。イベントにしても、お客様のコミュニケーション課題を理解した上でメッセージングや企画から、当日運用の具体的な支援まで行いたい。経営という正解のない問いに対し、イベントというタッチポイントを通じてお客様と一緒に考えるパートナーでありたい。そういう意味では『似非コンサルを駆逐したい』というのが『Oneイベント』の裏メッセージでもあるんです」
 


そう言ってニヤリと笑って見せる大友だが、その根っこには「現状を変えたい」という創作的な意欲――もっと言えば“怒り”があるように感じる。「似非コンサル」という彼の言葉はあくまで象徴で、モノづくりに対するリスペクトの反語だろう。イベントを現場から作り上げている自分たちだからこそ、顧客を理解できる。そんな自負がありそうだ。
 


「イベントというのはあくまできっかけの一つであって、大切なのはコミュニケーション。AIが身近になった世の中だからこそ、人の心をどう動かし、協業するかということが重要になってくる。我々がイベント事業をやっているからこそ興味を持っていただいたお客様に対して、コミュニケーションを梃子にしてどのような貢献ができるのか。インサイトの分析から実行まで、一気通貫で伴走できるパートナーとしての実力を日々高めていく。AIに嫉妬されるぐらいの、人間だからこそできるサービスを目指す。一緒に歩んで頂けるお客様と事例を積み重ねることで、その先にある社会に貢献していく。そんな未来を描きたいんです。自分の子供たちにも、幸せになってもらわないといけないですからね」

大友堅太郎

こういう言葉を冗談めかして言うところが、二児の父でもあるこの男の憎めないところだ。
 


「『Oneイベント』チームには、こうした考えに共鳴してくれる面白いメンバーがたくさんいます。制作、マーケティング、営業、多様な人材が揃っている。お客様には彼らと接点をもってもらうことで、お互いに資産化できるような中長期の関係性を築いていきたい。そのためにも今後はメンバーのバックグラウンドを発信する試みをしていきたいと考えています」
 


「Oneイベント」という旅は、まだまだ始まったばかりだ。


大友の根幹にある「何かを変えたい」という創作意欲と、末っ子らしいあざとさが起点となり、新しい風が吹こうとしている。

 


取材・文:川戸崇央
写真:山口宏之

川戸 崇央

執筆者川戸 崇央

メディアファクトリー→KADOKAWA→ユニクロ→フリーランス。前『ダ・ヴィンチ』編集長。累計300冊以上の雑誌・書籍編集を担当。現在はテキストや動画コンテンツの編集・ディレクションに加え、企業の社員プロデュースや商品・事業のブランディングを通じ、ヒト軸で課題解決に伴走。

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