ハドル会議スペース向けロジクールWeb会議カメラ、MeetUp検証レポート ~ブイキューブのビデオ会議システム「V-CUBE Box」に採用~
2017.12.14
Webカメラを取り巻く市場トレンド
コーデックを搭載した本体に加え、カメラ・マイク・リモコンなどをパッケージにしたHD対応ビデオ会議システム「V-CUBE Box」。2015年10月発売以来、さまざまな業種で数多く採用事例がある。また提供するパッケージの柔軟さから小規模から大規模までの会議室に対応している。
昨今、4人から6人程度が即座に集まり、生産性の高い会議が行えるハドル会議というのが新しい会議スタイルとして注目されている。それにあわせて、ビデオ会議システム市場ではハドル会議を支援したさまざまな製品が登場している。今回のテーマであるカメラもそのひとつだ。
この度、ハドル会議スペース向けとして注目されているロジクールのMeetUpビデオ会議カメラ(2017年7月に発売)が、V-CUBE Boxに採用された。
ビデオ会議システムを始め映像コミュニケーションの品質はこの20年格段に向上、この間Webカメラも進化した。従来、Webカメラといえば、デスクトップで個人が使うパーソナル用途をメインに市場が拡大してきた。しかしこの何年かは、とりわけビジネス向けではフルHDはほぼ標準になり、ハドル会議スペース向けなど複数の参加者(グループ)を想定したWebカメラも数多く市場に登場している。加えて、新たな動きとしてMeetUpを始め4K対応のWebカメラも登場している。
ロジクールのビデオ会議市場への意気込みは大きい。国内での関連売上は毎年70%と高い成長率を記録しているという(2017年6月6日製品発表時)。同社はコンシューマWebカメラでワールドシェアを獲得し、急速に拡大するビデオ会議/Web会議市場に対応するため、パーソナル(たとえばロジクールC930ERやBRIO)から20人程度の大会議室(ロジクールGROUP cc3500e)までマッチした、法人向け会議用Webカメラのラインナップをオールラウンドに拡充している。ハドルはそれらの中間あたりの会議室規模に位置づけられており、MeetUpはそこのユーザを想定した製品といえる。
それが今回V-CUBE Boxのカメラのひとつとして採用された。その定評のあるV-CUBE Boxと組み合わせたMeetUpの実力を検証する。
ハドル会議に適したカメラとは&選び方のポイント
検証に入る前にハドル会議に適したカメラについて選び方のポイントを考えてみよう。
Webカメラはコンシューマ向けからビジネス向けまで多種多様な製品が販売されている。どれでもいいのかといえばそうではない。個人が自宅などでやるビデオチャットであれば量販店などで販売されている数千円程度のWebカメラでも問題ないだろう。
しかし、ひとつの拠点に大人数が参加するWeb会議に対して数千円程度のWebカメラでは、映像品質・画角(視野角)・内蔵マイクの集音範囲が不十分だろう。ビジネス用途では相手の表情をしっかりとらえる必要があるため、少なくともHD品質が必要だろうし、ここのテーマであるハドル会議であれば4~6人程度を余裕で収めることのできる画角が欲しい。また、それなりの集音範囲も欲しい。
そういったことを考えると、HDを含む4K画質まで対応し、120度までの広画角に対応している、参加者の表情などにフォーカスしたり、会議室のホワイトボードを表示したりするためのパン・チルト・ズームが行える、持ち運びを考えたオールインワンデザインと軽量さ(1kg)、ビジネスとして十分な集音範囲、こういった点はこれからのハドル会議を考えると選び方のポイントになるだろう。MeetUpは、まさしくこれらの条件を満足のいくスペックで応えた製品といえる。
選び方のポイント
- 高品質な画質と広い視野角
- 高品質な音声と十分な集音範囲
- パン・チルト・ズームは標準装備
- 使い勝手の良いオールインワンデザイン
- 持ち運びを考えた軽さ
MeetUp検証
今回、下記表の会議室環境と検証機器に基づき、セットアップ、映像品質、集音範囲、リモコンの4点について、実際にMeetUpを操作しながらその特徴について検証した。なお、GROUPについてはセットアップおよびスペックを主な情報としてMeetUpと比較する。
会議室環境 | 4〜6名を収容可能なハドル会議室(3m × 3m程度の広さ) | 2部屋 |
---|---|---|
検証機器 | V-CUBE Box(両方の部屋) | 2台 |
MeetUp(両方の部屋) | 2台 | |
GROUP(片方の部屋) | 1台 |
1. セットアップ
MeetUpを箱から取り出し、V-CUBE Boxやディスプレイなどに接続し、V-CUBE Box会議へ入室するまでの一連のセットアップ作業を検証した。
MeetUpの本体の大きさは、104mm(高さ) × 400mm(幅) × 85mm(奥行き)で重量は1.04kg。箱から出してみると、本体ユニットは両手を肩幅ぐらいに広げて持ち上げられる大きさで、しかも軽量型のノートパソコン程度の重さ。コンパクトでとても軽いというのが第一印象。
ある意味拍子抜けするくらいの大きさと軽さに面食らった次第だ。これで大丈夫だろうかというのが正直な気持ちだった(この点については後述で不安を払拭している)。
というのも、こういった大人数向けのカメラについては、筆者には長年ハードウェア型のビデオ会議システムの重厚感のあるカメラのイメージがしみついているためだ(専門家の良い面でもあるし悪い面でもあるかもしれない)。ロジクールの担当者によると、開発は本社があるスイスで行われているという。さすがに開発力に定評のあるロジクールと改めて感心した。
セットアップ作業では、ベースシステムで14人(拡張マイクで20人会議)まで対応したGROUPのセットアップと比較した。GROUPはハブを中心にカメラやスピーカーフォンの各ケーブルを接続し、ハブからパソコンやディスプレイにつなげる構成をとっている。
一方、MeetUpのカメラ・マイク・スピーカーはオールインワンタイプであるため、MeetUp背面のインターフェイス端子からパソコンやテレビ画面に接続するという、よりシンプルなセットアップが可能になっている。
だからといってGROUPのセットアップが難しいというものではなく、GROUPもMeetUpも1度セットアップを経験すると慣れて、2回目以降は数分もあれば機器のケーブル接続は完了させることは可能ではないかと思う。テレビやパソコンの配線ができる人であればだれでもできる。
ハドル会議でどのWebカメラを使うかを考えた時に、GROUPでも問題なく使えるが、カメラ・マイク・スピーカーなどが分離したもの(場所を取る)よりも、好みもあるがオールインワンのMeetUpの方が使い勝手は良いのではないかと思った。
なお、MeetUpの軽量さ(1.04kg)に比べ、GROUPはカメラが585g、スピーカーフォンが1,223g、ハブが83g、合計1.89kgと、MeetUpの倍近い重さがある。
2. カメラ映像の性能や品質
次に、カメラのデフォルト位置での画角(視野角、撮影範囲)の確認、パン・チルト・ズーム機能の比較、デジタルズーム機能の比較、の3点を検証した。
4~6人が参加するハドル会議室で使うことを考えると、カメラの画角がWebカメラ導入時に検討すべきポイントのひとつだ。ちなみに、量販店などで販売されている廉価なWebカメラの画角は平均して60°から70°前後あたりが主流だが、これでは4~6人を撮影範囲の中に収めるのは無理がある。しかも、ビジネス会議に耐えうる性能や機能は持ち合わせていない。
GROUPのデフォルト画角は90度で、4~8人もカバーできるがやや窮屈感は否めない。ただし、パン機能(260度)と拡張マイクなどを組みあわせれば20人の会議(ベースシステムでは14人)もカバーできる製品ではある。
一方、ハドル会議室に最適化されているMeetUpのデフォルト画角は120°。検証に使った会議室では2人を撮影した形だが、テーブルの大きさから4~6人を十分カバーできることがわかった。
標準の画角で余裕をもって4人から6人を撮影できるのはとても有難い。
また画角と並んで、パン・チルト・ズーム機能も大事なポイントだ。まずパン機能とはカメラのレンズを左右に振る機能だが、GROUPについては最大180°、MeetUpについては最大175°。
GROUPの180°はそのモデルが最大20人の会議に対応していることから納得できるが、ハドル会議という比較的小規模な会議室で使うことを考えると、175°は十分すぎる広角といえる。加えて、上下に振るチルトについては、今回の検証で私の胸よりも下側に設置されたMeetUpでも、若干上向きに調整することで違和感なく自身を撮影できたと思う。仮にMeetUpがディスプレイの上に設置されたとしても問題はないだろう。GROUPのチルト130°と比べ差はないと感じた
一方、ズーム機能については、参加者後方にあるホワイトボードを撮影したり、あるいは参加者の表情などにズームする際に使う機能と言えよう。スペックのみ比較した場合、GROUPは最大10倍ズームMeetUpについては5倍と、GROUPに分があるようだが、それぞれの想定している使用環境を考慮すれば、MeetUpの5倍は相応といえるのではないだろうか。
MeetUP | GROUP | |
---|---|---|
画角 | 120° | 90° |
パン | 175° | 180° |
チルト | ほぼ同等 | 130° |
ズーム | 5倍 | 10倍 |
今回検証に使ったハドル会議室は、壁自体がホワイトボードになっており、そこに手書きしたものにリモコン操作でGROUPやMeetUpのカメラズームを使ってフォーカスしてみた。カメラの解像度の問題もあるが、この検証環境では別の会議室側からも問題なく視認できた。ただし、今回この検証に使用した会議室はざっくりと3m × 3m程度の広さであるため、ズームは10倍まではいらないだろう。ちなみに、顔へのズームアップもしてみたが、皮膚や髪の状態まではっきり見え、映像品質の高さがうかがえた。
余談だが、カメラとテーブルのセットの仕方を工夫すれば、部屋ごと作りこむテレプレゼンスシステムの同質感にも肉薄できるかもしれない。
3. 集音範囲
内蔵マイクについては、GROUPの4本、MeetUpの3本との違いはあるが両方とも無指向性マイクを搭載している。ただし、ベースシステム(拡張マイクなし)でのスペック上の集音範囲は、GROUPが6mに対して、MeetUpは2.4mと大きな差がある。
これは優劣の差ではなく想定している使用環境からくる性能の差である。今回検証に使った会議室が、約3m × 3m程度の広さの中に会議テーブルを置いてその周りに人が着座することを考慮すると、2.4mの集音範囲は十分な広さと言えよう。
加えて今回、壁に囲まれた、ある意味密閉された部屋ということもあり、音響の反射による効果も手伝って、音に関しては全く問題なかった。部屋のどこにいてもかなり良い。壁際からMeetUpの内蔵マイクに話しかけても対向側にクリアーに通じていた。ただし壁際で気が付いたことだが、若干声を高めに発声したほうがよいかもしれない。もしかすると、集音範囲2.4mの丁度きわのところに立って発声したからかもしれない。もちろん部屋の環境にも影響される。
おそらく、GROUPを使った場合、やはり大規模会議室向けということもあり、このハドル会議室ではオーバースペック気味になるのではないかという気もした。
ちなみに、ロジクールの担当者によると、壁のないオープンな場所でMeetUpを使用する場合は拡張マイクを推奨するとアドバイスしていた。MeetUpによる会議を行う際には壁を上手く使うことをひとつ考慮したほうが良いかもしれない。
MeetUP | GROUP | |
---|---|---|
マイク | 3本の無指向性 | 4本の無指向性 |
ベース | 2.4m | 6m |
拡張 | 4.2m | 8.5m |
4. リモコン操作
リモコン操作については、GROUPもMeetUpも基本的に違いはない。通話開始・終了・ミュートのほか、パン・チルト・ズームの操作ボタンが配列されている。直感的でわかりやすいのは両者とも同じ。リモコンの操作に対して、パン・チルト・ズームの動作はきびきびしている。
また、スマートフォン向けのアプリをダウンロードすれば、iPhoneもしくはアンドロイド端末と本体とがペアリングして、スマートフォンから通話開始やカメラのズーム操作などが行えるようになっている。画面にはリモコンと同じデザインが施されておりわかりやすい。
ただし、リモコンの通信方式に違いがある。GROUPのリモコンは赤外線を使用。スペック上では8.5mまでのリモコン範囲をうたっているが、部屋の環境によっては変わる可能性がある。一方、MeetUpの方は、新たに無線通信を利用したRFリモコンを採用している。
これまでリモコンは、テレビなどでは赤外線が主流だったが、RFリモコンへの動きが加速している。赤外線リモコンは本体受光部との間に遮断物があると操作ができないことがあるが、RFリモコンは無線のため、同じ部屋であればどの方向に向けてボタンを操作しても部屋の壁などで反射して、基本的に本体側で受信できるようになっている。
まとめ
今回の検証であらためて、GROUPとMeetUpのそれぞれが想定している会議規模の違いが浮き彫りになったと思う。Webカメラというのは、単純に性能を比較して優劣を決められるものではない。下記のポイントに沿って、自社にとって最適なWebカメラを選択すると良いだろう。
- 法人向け会議用Webカメラは、パーソナルからハドル、大人数までラインナップがそろってきている。
- Webカメラを選択する際には、映像品質、画角(広角が良い)、内蔵マイクの集音範囲などがポイント。加えて、パン・チルト・ズーム性能も確認すべき。
- 導入する際には、参加人数のほか、会議室の大きさや音響環境などを考慮しながら、最適な製品を選択すべき。
- 法人向け会議用Webカメラは、慣れれば数分でセットアップできる簡単さ。
- Webカメラ本体の操作をスマートフォンで行うこともできる。
検証者Plofile
橋本 啓介
1967年生まれ。大分県日田市出身。東京国際大学卒業後、NTTに1991年-2001年まで在籍。NTTでは、マルチメディアビジネス開発部にてテレビ会議システム(フェニックス)のマーケティングを担当したり、テレビ会議多地点接続サービス事業を提供するNTTフェニックス通信網(1997年7月設立、現:NTTビズリンク ヴィジュアル・コミュニケーション事業部)事業立ち上げプロジェクトにも従事。NTTは2001年7月に退職し同年ケイ・オフィス(現:CNAレポート・ジャパン)設立(個人事業主)、現在に至る。