改正保険業法 施行直前セミナー ダイジェスト
2016.07.06
2016年5月11日、保険毎日新聞社と共催で「改正保険業法施行直前セミナー 法改正のポイントと内部監査の実際」と銘打ち、渋谷区恵比寿のStudio Octを会場に30名様をお招きしたセミナーを開催。同時にセミナー会場へお越しになれない方を対象にWebセミナーの配信も行いました。
セミナーでは、まず、金融審議会「保険商品サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」のメンバーだった中央総合法律事務所の錦野裕宗弁護士から、法改正により実務に与える影響と重要ポイントを解説いただきました。また、司法書士法人コスモの山口里美司法書士からは、体制整備の中で重要な位置付けを与えられている内部監査に関して、代理店の内部監査の事例を含めて説明いただきました。
当記事では、当日のセミナーの内容のダイジェストをお伝えします。
働き方の実践!「ゼロから学べるテレワーク導入完全ガイド」
働き方改革が始まり、「何から手をつければ良いかがわからない……」そうお困りの企業担当者さまも多いことでしょう。そのような課題解決の一手として導入を検討していきたいのが、テレワークです。
テレワークの導入には以下のようなメリットがあります。
- 災害や感染症の蔓延時にも通常と同じように業務を継続できる
- 通勤や移動の時間を有効活用し、大幅なコスト削減につながる
- 地方や海外にいる優秀な人材をスムーズに確保できる
自社の働き方改革を成功させるため、ぜひ「ゼロから学べるテレワーク導入完全ガイド」をご参考ください。資料は無料です。
第1部 具体的規制内容と実務対応上の留意点
弁護士法人中央総合法律事務所
錦野裕宗弁護士
錦野裕宗弁護士は、改正保険業法で大きく変わった点を、「意向把握義務」と「比較推奨規制」であると指摘します。従来も、情報提供義務として、顧客の保険の知識などにあわせて「その商品がどういうものなのか」を説明する必要がありましたが、それをさらに1歩進めて「どうしてAという商品ではなくBという商品を勧めるのか」を明確にしなければなりません。
監督指針では、お客様の当初の意向をアンケートなどで把握し、その意向と推奨する保険商品の関係性(推奨理由)を顧客に示すことが求められていますが、これは正に重要です。加えて、監督指針では「当初の意向と最終的な意向の比較をして、相違した場合は相違点を確認する」、いわゆる『振り返り』が求められている点に注意が必要です。
この点、意向の把握・確認は、必ずしも高いレベル感のものが求められているわけではありません。「どのような分野の保証を望んでいるか(死亡した場合の遺族保障なのか、医療保障なのかなど)」「貯蓄部分を必要としているか」「保障期間、保険料、保険金額に関する範囲の希望」などのレベル感のもので問題ありません。
意向把握の体制整備としては、初期のアンケートに加え、振り返りに関わる帳票の作成、運用、保存が求められます。
また、銀行窓販規制関連では、「保険商品の保障内容を含むアンケート」は「保険募集」「保険募集に係る業務」に該当するため、非公開情報保護措置に係る同意取得後でなければ行えない点に留意が必要です。
次に、比較推奨規制について説明します。ある乗合代理店が5つの商品を取り扱っており、その中から2つの商品を選別して、推奨するというモデルケースを念頭に置きます。その選別が「顧客の意向に沿った」ものか否かで適用される規制内容が異なる、すなわち場合分けをしなければならない点が特徴です。
「顧客の意向に沿った」選別ではなく代理店都合で選別する場合(上図の上段)は、「当該提案の理由」の説明(ハの理由説明)を行う必要があります。具体的には「当店は、□□損保・生保の商品を主に取り扱う経営方針である」というように、代理店の経営方針(代理店都合)であることが明確に説明されていれば許容されます。
なお、パブリックコメント回答では、販売代理店の拠点ごとに、推奨する商品を変えることができると記載されていましたが、さらに、拠点内の募集人ごとに推奨商品が異なる場合でも、「募集人がA損保の商品に詳しい」といった「募集人ごとの商品選定の理由」が合理的である等の一定の要件を充足すれば許容されます。この場合、「この募集人はA損保の商品を扱う」ことなどを社内規則に明記する必要があります。
一方、顧客の意向に沿った場合(上図の下段)は、取扱商品につき「顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要」としてパンフレットの商品概要欄を示す必要があります。しかし、顧客の意向に基づいて、商品特性等に基づく客観的な商品の絞込みを行った場合には、絞込み後の商品についての概要明示を行えば足ります。
留意すべき点は、手数料の開示・コミッションバイアスに関してです。比較推奨規制が適用される改正保険業法施行後は、法令上も問題となり得ます。代理店都合による選別を行う場合でも、「手数料が高いから」と説明する必要があるものとパブリックコメントでは回答されています。
第2部 内部監査から見える保険募集管理体制の事例紹介
司法書士法人行政書士法人コスモ
代表社員 山口里美司法書士
とある保険代理店による保険募集管理体制の取り組み
第2部では、司法書士として、東京都港区の保険代理店が取り組んでいる募集管理体制強化にあたり、監査を行った事例を、山口里美司法書士が紹介します。
事例で紹介された保険代理店は、2001年創立で社員数は13名。生保14社、損保8社の乗合です。今回の監査項目は約300項目にのぼり、役員、マネージャーへのヒヤリングと現物監査に約8時間要したものです。
(1)保険募集管理の仕組み
この保険代理店では、経営系で7、コンプライアンス系で27の、計34規定を社内規程として整備していました。ここまで多くの規程となっているのは、2つの理由があり、1つ目は、「生保、損保間あるいは保険会社間で規程や仕組みなどが異なるため、自社の実態に合致する規程を作成した」ということです。もう1つは、「従来、保険会社から求められてきた各種態勢整備を行うため、3年前から少しずつ規程や仕組みを作ってきた」という点も挙げられます。
司法書士の立場から、山口氏は「この会社ほどでなくても、(保険業法改正を機に)内部規程を作成すべき」との考えを示します。明文化されていない規程では、個人の判断に委ねられ、厳しく適用する人、ゆるく適用する人の差が生まれるためです。
また、この会社ではコンプライアンス関連の組織構造としては経営会議、コンプライアンス委員会で構成する「意思決定機関」、コンプライアンス管理責任者や個人情報管理責任者などから構成される「ライン(責任者)」、そして内部監査責任者による「監査」と、社員13人ながら非常に細かく組織が設置されています。少人数でいろいろな機関があって煩雑ではないかとも思えますが、実際には、3年間という時間をかけて段階的に構築したので煩雑ではなく、むしろ「このことが起こったらこの人」と対応窓口が決まっているので迅速に対応ができるメリットの方が大きいとのことです。
また、監査を予想する中でPDCAサイクルの仕組みを持っています。PDCAのサイクルがまわらないという企業も多い中、自主点検を年1回、コンプラ委員会報告を年2回行うと規定することで、確実にサイクルが回るように工夫しています。
(2)保険募集情報プロセス及び管理
前述したように、生保14社、損保8社の乗合でもあり、また保険証券は内容の変更サイクルが短いこともあり、すべての商品のパンフレットを集めてそろえておくのは難しいのが実情です。そこで、この会社では「特定保険会社・保険商品推奨方式」を採用し、なぜこの商品を推奨するかを明文化しています。
保険代理店としての負担は軽くなるものの、顧客が希望するサービスレベルが低下するのではないかという懸念と、推奨保険会社以外に対し、委託基準医事が困難になることから、将来的には見直す可能性も残されています。
しかし、保険会社としても、個性ある商品を出さないと、この段階で保険代理店に選んでもらえないということになります。改正保険業法は、保険代理店だけでなく保険会社にも大きな影響を与えます。
「特定保険会社・保険商品推奨方式」のための使用ツールとしては、「保険募集方針(推奨理由が示されているもの)」「勧誘方針」「プライバシーポリシー」「意向把握シート」「申し込み前チェックシート」を用意しています。
これらのツールは、司法書士からすると、3つのメリットがあると考えられます。1つは、顧客からのクレームに対して「言った」「言わない」のリスクがなくなるので、保険代理店を守ることになるということ。2つ目は、PDCAを回す際に「何を根拠に改善するのか」ということが問題になるが、書面が残っていれば取り組みが明確化されるため、PDCAサイクルを回すうえでの根拠となること。3番目は、実際にオープニングからクロージングまでの業務で、確認事項の抜けがなくなることです。
プロセス管理は2人のマネージャーが1日1時間程度をかけて行っています。日報などによる日次、案件管理表に基づく週次管理、月次チェック用のチェックシートを使用したサンプリングチェックによる月次管理、不成約を含む案件クローズ後の最終チェックまでが対象となります。
(3)個人情報保護
この会社では、「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」に準拠した 顧客情報管理の態勢を整備しています。ラインに責任者を配置して厳格に運用している一方、規程が増えすぎたので将来は統合も念頭に置いています。
(4)苦情対応
コンプライアンス委員会と苦情等対応責任者が密に連携し、苦情に対する報告に抜け漏れがないかのチェックをしています。「クレームがない方がいい」との考えもある中、この会社では「いかに吸い上げて対応するかが大切」というスタンスを持っています。
例えば「苦情0の月は、報告が吸い上げられていないのでは?」との懸念から、コンプライアンス委員会からの指示で、電話の録音ログのサンプルチェックをするほどです。
(5)点検・内部監査
ライン(責任者)による自主点検を年1回行うほか、PCの監査に関しては、外部のシステム会社に委託してシステム基盤の構築、運用を行っています。アクセスデータの取得も、同様に外部に委託しています。
監査結果…専任の内部監査担当者不在などの課題が
ここまで細かく規程や各種体制を整えている保険代理店であっても、監査結果としては課題が残ります。
まず、内部監査の専任者不在があげられます。結果として、募集人が監査を行っているため、「来年、アップデートできるのか」といった監査項目の更新や、レポート作成の事務負荷の大きさなども問題になります。また、PDCAサイクルを回して改善を行うためには、専門的な知識が必要となります。そのため、監査に関しては、外部に委託してしまうという手段も有効と考えられます。
確かに対応は面倒かもしれませんが、保険業法改正という変化はチャンスでもあります。「こんな風に募集業務を行っています」「こんな風に個人情報を扱っています」とアピールすることで、顧客が安心して依頼できる募集管理体制の構築による差別化、ブランディングが可能になります。
働き方の実践!「ゼロから学べるテレワーク導入完全ガイド」
働き方改革が始まり、「何から手をつければ良いかがわからない……」そうお困りの企業担当者さまも多いことでしょう。そのような課題解決の一手として導入を検討していきたいのが、テレワークです。
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