「テレワーク」の指す働き方とは? シーン別の導入ケースとともに解説
2020.07.07
場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の形として普及が進むテレワーク。感染症予防対策として導入する企業も急速に増えています。
各種の報道をはじめ、さまざまな文脈で語られるテレワークですが、似たような言葉として「リモートワーク」「在宅勤務」といった語もあり、混同して語られることも少なくありません。
こうした言葉の定義が曖昧なままだと、社内で導入を検討する際にもそれぞれが描くビジョンやコンセンサスに齟齬(そご)が生まれてしまいかねません。
ここでは、「テレワーク」という言葉の定義を確認しつつ、上記の語句に加えて「モバイルワーク」や「サテライトオフィス」といった関連する語との違いを明確にします。
そのうえで、「テレワーク」が本来指している働き方と、シーン別の導入ケースをご紹介します。「テレワーク」導入の検討材料としてもらえればと思います。
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働き方改革が始まり、「何から手をつければ良いかがわからない……」そうお困りの企業担当者さまも多いことでしょう。そのような課題解決の一手として導入を検討していきたいのが、テレワークです。
テレワークの導入には以下のようなメリットがあります。
- 災害や感染症の蔓延時にも通常と同じように業務を継続できる
- 通勤や移動の時間を有効活用し、大幅なコスト削減につながる
- 地方や海外にいる優秀な人材をスムーズに確保できる
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テレワークとは
日本テレワーク協会によれば、「テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」とされています。
出典:日本テレワーク協会
英語では「telework」と書きます。「tele」は「離れた所」という意味で、「テレフォン」や「テレビジョン」などの「テレ」と同義です。そこに「work」を加えた「tele+work」は、「離れて働く」という意味の造語。NASAのエンジニアだったジャック・ニレス氏が1973年に提唱した言葉だとされています。日本では、1984年に日本電気(現NEC)が東京・吉祥寺に設けたサテライトオフィスが、日本初の制度的なテレワーク導入事例だとされています。
また、テレワークを行なう人を「テレワーカー」と呼び、国土交通省は「1週間に8時間以上、職場以外でICTを使って仕事をする人」と定義しています。
「リモートワーク」との違いは
一方、「リモートワーク」は英語で「remote work」と表記されます。「remote」とは「遠く離れた/遠隔操作の」といった意味で、直訳すると「遠くで働く」という意味の造語。厳密な語源は不明で定義もはっきりとはしておらず、語義としては「テレワーク」とほとんど同じといえます。
総務省が公表している「テレワーク先駆者百選選定企業事例集」の中でも両者はほぼ同じ意味で混在して使われており、事業者間だけでなく国と自治体でも呼び方が異なるケースもあります。
両者とも、意味内容としては「会社から離れた場所で働くこと」という点で同じであり、現在のところ「テレワーク」と「リモートワーク」の明確な語義の違いはないと考えていいでしょう。
一部に「リモートワーク」は「場所にとらわれない働き方」、テレワークは場所に加えて「時間にもとらわれない働き方」をそれぞれ強調している、との解釈もありますが、厳密な定義とまでは言えないでしょう。
ちなみに、テレワークの語もリモートワークの語も英語圏ではあまり使われておらず、「work from home」などと言われることが一般的です。
政府が進める「働き方改革」の中心
いずれの言葉にせよ、国内では2016年に打ち出された「働き方改革」に関連して、政府はそうした働き方の推進を進めており、総務省は「テレワークは、ワークライフバランスの実現 、人口減少時代における労働力人口の確保、地域の活性化などへも寄与する、働き方改革実現の切り札となる働き方」として、普及を進めています。
ここでは、上記の定義に従って、以下「テレワーク」に統一して記載しつつ、その内容をさらに詳しく解説します。
テレワークの3つの種類
テレワークと呼ばれる働き方は、大きく分けて以下の形態に分けられます。
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
在宅勤務
「在宅勤務」とは、「自宅にいて、会社とはパソコンとインターネット、電話、ファクスで連絡をとる働き方」のことです(日本テレワーク協会の定義による)。
一般的に「テレワーク」と呼ばれる働き方は、この「在宅勤務」のことを指している場合がほとんどです。特に、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、政府がこの形態の働き方などを新規で導入する中小企業に対し助成金を交付することとしたことなどから、急速に浸透が進んでいます。東京都では、従業員30人以上の企業のテレワーク導入率は、2020年3月には24%だったのが、翌月には62.7%まで40ポイント近く上昇しました。
モバイルワーク
テレワークと呼ばれる働き方の形は、在宅勤務だけに留まりません。「モバイルワーク」と呼ばれる働き方も、テレワークの一種です。
モバイルワークとは、「顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方」(日本テレワーク協会の定義による)のことで、たとえば営業職の人などが自宅から営業先あるいは現場へ直行・直帰し、その間会社とはノートPCやスマホを使って、営業先やコワーキングスペース、ネットカフェなどからやり取りを行い、会議などの必要があるときだけ出社するといった形がモバイルワークと定義されます。
在宅勤務が「内勤型テレワーク」だとすれば、モバイルワークは「外勤型テレワーク」だと言えるでしょう。
サテライトオフィス勤務
こうした形態に加えて、「サテライトオフィス」で働く形も、テレワークの1つに数えられます。
サテライトオフィスとは、企業の本社・本拠地から離れた場所に設置する小規模なオフィスのこと。サテライトとは英語の「satellite(衛星)」という意味で、本拠地であるオフィスを中心として衛星のように設置されることから、この名前が付けられたとされています。
サテライトオフィスにもいくつかの形があり、それらは
- 都市型サテライトオフィス
- 郊外型サテライトオフィス
- 地方型サテライトオフィス
の3つに大別できます。
「都市型」は、主に地方に本社を持つ企業が都市部における営業所として設置することが一般的で、都市部の営業担当者が「営業先から地方にある本社へ戻る」という移動を減らすことができます。
「郊外型」は、都市部に本社を持つ企業が郊外に構えるオフィスを指します。都心まで通勤していた社員の時間や交通費用を減らすことを主な目的としています。
「地方型」は、都市部に本社がある企業が、郊外よりもさらに離れた地方の遠隔地にオフィスを構えるものです。地方にこうした拠点を設けることで、地方における新たなビジネスのスタートや事業拡大を期待して設置されることが少なくありません。
いずれの形も支社や支店などに近い要素があり、混同されがちですが、サテライトオフィスは本社の機能・業務全般をカバーすることを目的とするものではなく、あくまでテレワークに必要な最低限の設備・機能しか持ちません。また、業務命令として赴く場所というよりも、快適に仕事をすることを目的として、社員が自分の意思で訪問・滞在する場所と定義できるでしょう。
テレワークを導入すべき理由
こうした働き方を導入することで、企業やそこで働く社員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。上に説明したテレワークの3つの形態ごとに導入ケースを解説します。
在宅勤務のメリットと導入ケース
感染症対策として導入するケース
例)全従業員がワンフロアで勤務していた職場を、一部の従業員を除いて在宅勤務にし、社内での感染リスクを下げた。
多くの企業が在宅勤務導入を検討している最も大きな要因は、感染症対策ではないでしょうか。
2020年6月現在、政府は新型コロナウイルス感染症対策としてのテレワーク導入を助成の対象としています。それは、在宅勤務によってバスや電車での通勤中に感染が広がることを防ぐとともに、職場での感染拡大を予防するためです。
今後も新たな感染症の発生や大規模災害の可能性は常にあるため、常時ではなくとも在宅勤務を制度として導入し、いざというときにそうした体制へスムーズに移行できるように検討を進めている企業も少なくありません。
たとえば、営業や経理の担当者など、すべての従業員が同じフロアで業務を行っているケースであれば、一部の業務をインターネットによるクラウドサービスなどにシフトしたうえで、経理や事務担当者を中心に在宅勤務に切り替えるだけでも、全社的な感染リスクは分散させることができます。
また、通勤中の感染や、職場での感染を防ぐことは、自社の社員を守ることであり、そうした対策は将来的に貴重な人材を確保することにもつながるといっても過言ではありません。
育児・介護による時短勤務をフルタイム化するケース
例)育児・介護にともなって時短勤務していた社員を、在宅勤務でフルタイム勤務化した。
そもそも、政府がテレワークを推進する背景には、「一億総活躍社会」に向けた柱である働き方改革の一環として、「老若男女、障がいを持つ人からそうでない人まで、誰もが活躍でき、人口減少や労働力不足を解消した社会」に向けた施策と位置づけているからです。そうした観点から、女性にとって働きやすい職場であることは非常に重要な点でもあります。
産休や育休、時短勤務を推進することでも職場環境の改善につながりますが、テレワークを推進する企業の中には、従来は時短勤務しかできなかった従業員を在宅勤務の導入によってフルタイム勤務にシフトさせた事例もあります。
待機児童の問題などとも関連して、育児のために休業・休職せずに働き続けられる環境を整備することは、労働力不足に悩む企業側にとっても、育児中の女性側にとっても大きなメリットがあると言えます。
同様に、祖父母や両親、子供の介護が必要な人にとっても、家にいながら時間を問わず働き続けられる環境の整備は、社会全体の課題であり要請でもあります。テレワークはそうした要請に応える働き方の一つと言えるでしょう。
病気・怪我への対応として導入するケース
例)少人数のスタートアップ企業において、怪我のため通勤ができなくなったコアメンバーを在宅で勤務できるようにした。
育児・介護の必要がない社員にとっても、怪我や病気によって一時的・恒常的に通勤ができなくなる、という状況は発生し得るものです。感染症対策や、育児・介護といった面だけではなく、通勤が不要になることや勤務時間の自由裁量が増えることのメリットは、少なくありません。
モバイルワークのメリットと導入ケース
例)営業先での業務報告などは、本社や支社に帰社したうえで行っていたが、出先からクラウドサービスなどを利用することで代替できるようにした。
「外勤型テレワーク」とも言えるモバイルワークは、営業先や移動中に、パソコンや携帯電話を使って業務を行うことに特徴があります。
この事のメリットとしてまず挙げられるのは、移動にかかる経費と時間のコスト削減でしょう。たとえば、営業先での業務報告などを本社や支社に帰社したうえで行うケースは従来一般的でしたが、こうしたことを次の営業先への移動中や、現場からクラウドサービスなどを利用することで代替できれば、帰社するためにかけていたコストを大幅に削減できます。
また、移動時間が減ることで一定時間の中で訪問できる営業先の数が増えることも考えられます。業務効率化という点でも大きなメリットがあるといえるでしょう。
実際にモバイルワークを導入した地方企業の中には「社員自身が個々の仕事のやり方を大きく見直す良い機会となったと感想もあり、業務効率化につながった」「 業務方法の見直しやテレワーク環境整備による移動時間削減は、精神面でもストレス軽減に効果を奏した」といったことをその効果として挙げている会社もあります。
サテライトオフィス勤務のメリットと導入ケース
例)都内の本社・サテライトオフィス・在宅の3つから、それぞれのライフスタイルに合わせて選択可能にした。
サテライトオフィスの形態を採用することにも、上述したメリットがあります。
上記に解説した「都市型」「郊外型」「地方型」の中でも、「都市型サテライトオフィス」のメリットとして挙げられるのは、移動コストの削減でしょう。都市部での営業を終えるごとに、地方の本社へと戻っていた時間と経費を減らすことは、単純にコストを削減するだけではなく、社員の働きやすさにつながることも容易に想像できます。社員の働きやすさは、優秀な人材の確保にもつながり、ひいては企業価値を高めることにつながる重要な要素です。
また、テレワークのどの形態にも言えることですが、通勤にかける時間は社員の大きな負担でもあります。
郊外型・地方型のサテライトオフィスは、社員の「職住近接」を実現させます。たとえば、都内の本社勤務・サテライトオフィス利用・在宅勤務の3つをそれぞれのライフスタイルに合わせて選択可能にしたある企業では、職住近接を望む子育て中の女性を中心に人気が高まり、「従来は経験やスキルがあっても結婚や出産を機に、 働く事をあきらめていた優秀な人材を確保することができた」とその効果を語っています。
少子高齢化によってこれから不足していく人材をいかに確保するかという点においても、テレワークの導入は、非常に重要な要素なのです。
まとめ
このように、ICTを活用することで、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を可能にするテレワークには、さまざまな形態があります。
大企業はもとより、従業員が10人以下の中小企業でも積極的に導入されており、そのきっかけはさまざまですが、いずれのケースでも、テレワークの導入が緊急事態化での業務継続や従業員の安全確保、さらには働きやすい環境の整備や業務の効率化や優秀な人材の確保につながっていると言えるでしょう。
社内で描くテレワーク環境のビジョンやコンセンサスに齟齬(そご)を生むことのないよう、「テレワーク」の語の定義を確認した上で、導入を検討してもらえればと思います。
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テレワークの導入には以下のようなメリットがあります。
- 災害や感染症の蔓延時にも通常と同じように業務を継続できる
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