インタビュー
電子カルテとTV会議を統合した電子カルテ機能統合型TV会議システム 「ドクターコム」
V-CUBEミーティングをベースとしている「ドクターコム」について教えてください。
ドクターコムは、「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」にV-CUBEミーティングの機能を統合したWebタイプの「電子カルテ機能統合型TV会議システム」です。 K-MIXは、現在、香川県内を中心に約110(県外約10施設)の医療機関で利用されています。
Web会議システムを通じて、離れた場所にいる患者や家族に対して医師がリアルタイムに遠隔問診をしたり、医師と薬剤師間で投薬の相談をしたりなど、リアルタイム性を確保すると同時に、電子カルテや高血圧・糖尿病地域連携パスといった医療情報をモニタ画面上で共有し、エビデンスに基づいた遠隔医療を実現する取り組みとして注目を集めており、例としては、次のような取り組みを進めています。
- 自宅もしくは勤務先から医師の診察を受け、電子処方箋システムとも連携。
- 訪問看護師(保健師)の巡回時、ドクターコムを介して画像を共有することで、褥瘡(じょくそう)の評価、治療方針の決定などに使用。
- 患者の通院しやすい個人医院などでの検査・治療を中核病院や大学病院の医師が支援。
- 老健施設などに入所中で移動が難しい患者に対するグループ診察。
ドクターコムが開発された背景を教えてください。
香川県では、瀬戸内海に24の有人離島を抱え山間部の過疎地域も多く、それら地域における医療体制は脆弱です。そのため、早くから医療分野のIT化に取り組んでおり、地域医療における運用方法については医師会や複数の施設間においても確立されています。
一方、複数医療機関の間でシステムを利用するためには、相手に情報を送った上でコミュニケーションをとる必要があり、家庭と医療機関の間で行う在宅医療に関しても、リアルタイムで顔色や体温を確認しながら患者とコミュニケーション、すなわち遠隔問診ができる環境が求められていました。
そのような状況下、総務省の平成20年度/21年度の遠隔医療モデルプロジェクトに採択され、香川県における地域医療システムの高度化と地域チーム医療体制の充実、そして患者の医療に対する満足度向上をめざしドクターコムは開発されました。
あらゆる地域や医療機関で利用できるよう、
地域情報共有型Web遠隔医療システムとして開発
ドクターコムのシステム概要を教えてください。
ドクターコムは、医療従事者などのユーザ登録から会議の予約、スケジュール管理を行うポータルサイトと医療用にカスタマイズした V-CUBEミーティングのシステムから構成されています。
システム面のポイントを教えてください。
特定の地域や医療機関でしか利用できないようなシステムでは、遠隔医療システムとしての役割を果たすことはできません。そのためドクターコムは、どこでも、だれでも、簡単に導入・利用できるよう地域情報共有型Webシステムとして開発しました。
ドクターコムのサーバはK-MIXの運営を委託しているデータセンター(STNet)で管理されています。利用者からはクラウドサービスとして利用できるようになっており、予算的にも廉価で、全国他地域の病院および診療所への展開も容易なシステムとなっています。
一方、ユーザの利便性向上という点に関しては、利用可能な機能を制限する権限機能の拡張や、利用実績を出力・分析をする統計機能を追加しており、さらに映像の利用帯域の拡張による高精細化対応やポータルサイトとのシングルサインオン機能なども実装しています。
V-CUBEミーティングを採用した理由は、
システムの機能と、技術的サポートの良さ。
V-CUBEミーティングを採用した理由を教えてください。
システムの選定時点で将来的な対応も含め、V-CUBEミーティングを採用しました。
特に、既存の電子カルテなどの医療システムと連携して使えるようにする必要があり、色々な要件を出させていただきました。医療に特化したシステムとの連携ですので、セキュリティ面にも配慮したカスタマイズが必要となりました。当時はかなり苦労されていたようですが、根気強く技術的なサポートをしていただき、非常によいシステムが出来上がったと感じています。
また、V-CUBEミーティングは香川大学医学部、そして岩手県(遠野市)で稼働している周産期電子カルテネットワークでも利用されているという実績も持っていたという点も大きな選定ポイントでした。
さらに下記のような機能面も選定ポイントになりました。
- システムの利用者側が専用の機器を購入することなく利用できる
- インターネットが使える環境があれば、どこからでもクラウドサービスとして利用できる
- スマートフォンやタブレット端末でも利用できる
- 政府の推進する超高速ネットワークJGN-X上での稼働やユビキタス医療に必至なIPv6 へ対応できる
遠隔医療の普及と制限緩和をめざし地域活性化総合特区において在宅医療を推進
ドクターコムの現況と今後の展開について教えてください。
開発時は、病院間や病院と患者間のコミュニケーション向上とコスト・時間の削減が主要な目的でしたが、大規模災害時における被災地に対する遠隔医療インフラとしての期待も高まっています。
実際、東日本大震災後の被災地における現地診療に加えて、ドクターコムを活用した遠隔医療も実施しています。これは避難所においてもNPO法人などにより仮設無線LAN環境が提供されていたおかげで、インターネット接続できればどこでも使えるというドクターコムのメリットを再確認することができました。
また、平成23年度より香川県より申請していた「かがわ医療福祉総合特区」が地域活性化総合特区として指定を受けました。総合特区は政府が新成長戦略の柱の1つとして位置づける政策で、香川県は、遠隔医療システムを活用して島しょ部を中心に全域の医療水準の向上を図るさまざまな施策を実施する予定です。
その中にはドクターコムによる遠隔医療への取り組みも含まれており、高齢者や在宅患者に対する遠隔医療を普及させるため、医師法20条の「対面診療等」の制限緩和に取り組む予定です。
ブイキューブ社への期待
ブイキューブ社への期待などがあればお聞かせください。
今後は慢性疾患患者への診察などが普通にできるような、在宅医療への取り組みも積極的に行っていきたいと思っており、将来的にはグローバルでも使えるシステムとして利用できる可能性も十分に秘めていると感じています。
V-CUBEミーティングは、ドクターコムの核となるシステムとなっています。画質の向上といった機能アップはもちろんですが、ぜひ医療に特化したサービスや製品の開発・提供にも力を入れてもらいたいと期待しています。
※取材日時 2012年6月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。