インタビュー
東京工業大学 価値システム専攻教授の坂野氏に、「オンライン討論型世論調査ソリューション」利用の背景、経緯、今後の取り組みについて詳しくお話を伺いました。
遠隔コミュニケーションサービスによって、討論型の世論調査をオンライン上に構築
一般的な世論調査と討論型の世論調査の違い(クリックすると図が拡大します)
今回、オンラインサービスをどのように利用されたのでしょうか?
パイオニアVC社のWeb会議サービス xSyncPrime Collaboration(バイシンク プライム コラボレーション)*2 を使って、遠隔参加による「討論型の世論調査」(DP; Deliberative Poll)を実施しました。 この「討論型世論調査」という単語はまだ一般には聞き慣れないかと思います。世論調査の手法のひとつなのですが、一般的な世論調査とは少し異なります。 一般的な世論調査では、調査の内容に対して、回答者には十分な情報が与えられていないケースも多く、表面的な意見を述べる参加者もいます。そのため、調査の結果が本当に民意を反映できているのか疑わしいと指摘する専門家も少なくありません。 このような問題点を解決するために企画された方法が、さきの「討論型世論調査」と呼ばれる方法です。 この方法では、一般の世論調査と同じようにアンケート調査を行いますが、回答者へ十分な情報提供と、さらに複数回の討論会を開催し、再度のアンケート調査を行います。2回のアンケート調査結果を分析することで、熟慮した世論の動向を明らかにしようとする特長を持った手法となります。 しかし、調査方法として優れた側面を持つ反面、コストや手間がかかるという課題も持ち合わせています。 討論会の開催には、回答者に1か所へ集まってもらう必要がありますし、内容によっては討議が複数回にわたり、2泊3日など、宿泊を伴うスケジュールとなるケースも少なくありません。 調査結果の精度向上のために、参加人数の規模は百数十人から数百人規模となり、交通旅費や宿泊費用などのコスト負担も大きくなります。 そこで、よりコストを抑えた開催を実現できないかと検討をしていた折、Web会議サービスやWebセミナーなどオンラインサービスの仕組みを導入できないかと考えました。
オンラインによる遠隔開催でも、会場集合型と同様の十分な討論が可能
「Webによる討議空間でも十分な討議を実施可能」と坂野氏
オンライン上での開催はどのように実現したのですか?
配信には都内(恵比寿)にあるブイキューブの映像配信スタジオ「Studio Octo(スタジオ オクトー)」を利用しました。108名の参加者は、全国各地の「自宅」からインターネット回線経由で接続。パネリストとなる専門家や、進行を助けるファシリテーターは、恵比寿の映像配信スタジオに集まりました。 全国の参加者は自宅に居ながら参加することができるため、宿泊も不要でしたし、何よりも気軽に参加できることが大きなメリットとなりました。 最初に、Web会議サービスの「xSyncPrime Collaboration」を立ち上げ、インターネットを通して参加者同士が遠隔で顔合わせをします。映像と音声だけではなく、PCの操作画面をそのまま全員で共有することができるので、資料表示や双方向書き込み機能などを活用して、Web会議による討論会を無理なく実施できました。討論会の最後には、パネリストとなる専門家への質問をまとめました。 次に、これら参加者の質問に、スタジオにいる専門家から回答を行いましたが、そこでWebセミナーサービスの「V-CUBEセミナー」を利用しました。 Studio Octoの大スタジオから映像配信システムを使ってリアルタイムで全国の参加者へ一斉配信することができ、参加者は自分のPCのWebブラウザを使って、難しい操作もなく簡単に専門家の説明を見られました。 インターネット接続を経由したオンライン上における仮想的な空間での討論会や説明会でしたが、参加者の9割以上から「役に立った」とするフィードバックを得ることができ、恵比寿のスタジオに集まった専門家やファシリテーター、モデレーターからも「いつもの会場開催型と変わらない感覚で実施することができた」と声が上がっていました。 ITに精通していない参加者ももちろん含まれていましたが、戸惑うことなく利用ができたことや、全国どこにいても討論会に参加できるという結果は、大きな成果と言えます。
サービス品質の高さ、手厚いサポート体制は、大規模開催には欠かせない
今回利用したブイキューブとパイオニアVCのサービスについて、印象をお聞かせください
とても良い印象を持ちました。 Web会議サービスとWebセミナーサービスの長所を活かした組み合わせ、まさに適材適所の使い分けになっていると強く感じました。 これまでの会場開催型にももちろん大きなメリットがありますが、準備の手間や負担、コストや参加者の負担を考えると、今回のようなオンライン開催型は新しい可能性を秘めています。高画質・高音質で相手の表情も良く分かりますし、途切れもなく通信の安定性も良好でした。 多人数がインターネット接続を経由して、それぞれの環境で参加するような方法では、ネットワーク環境や機器設定の最適化、トラブルの早期対応など、万全の運用サポート体制があることが、円滑に実施するための大きなポイントだと思っています。 例えば、軽微なトラブルがあった場合でも、ごく短時間のうちに対応しないと、本来の目的である討議の時間が短くなってしまいます。そのため、運営には十分なバックアップ体制が必要です。 今回の「討論型世論調査」を実施する大学スタッフは、Web会議やWebセミナーの仕組みや操作方法、スタジオでの映像配信に精通しているわけではないので、ブイキューブやパイオニアVCの運用サポートチームに支援してもらいました。大きなトラブルもなく円滑に討論会・説明会を完遂できたのは、ブイキューブとパイオニアVCの手厚いサポート体制のおかげだと思っています。
これまでにない「新しい討論型世論調査」への期待は高い
これからの取り組みについて教えてください
先ほども話したとおり、今回のようなオンライン開催型は新しい可能性を秘めています。これまでの方法では負担が大きく、気軽に実施というわけにはいきません。 今回はWeb会議サービス「xSync Prime Collaboration」で、遠隔拠点間の討論会を、多拠点にライブ配信できるWebセミナーサービスの「V-CUBE セミナー」で、専門家が参加者の疑問に回答する様子を全国に一斉配信する新しい試みでしたが、このような仕組みが一般化していくことで、実施のハードルが下がり、討論型世論調査が普及していくことは間違いありません。 今回の実施を通して、オンライン上で開催する遠隔コミュニケーションサービスのメリットを強く感じました。今後は講習会・教育研修における活用など、もっと広い活用の場を検討していくことを考えています。そのような観点からも、ブイキューブやパイオニアVCには大きな期待を持っています。幅広いサービスを持っているメーカーだからこそ、今回のような新しい組み合わせの価値提案をしてほしいと思っています。
*取材日時 2015年5月 *記載の担当部署は、取材時の組織名です。
*1 パイオニアVC株式会社。Web会議システム「xSync Prime Collaboration」や協働学習支援ツール「xSync Board」を展開しています。 *2 パイオニアVC株式会社が開発・販売する高機能・高セキュリティを誇るWeb会議システムです。
※xSync Prime CollaborationについてはパイオニアVC株式会社のWebサイト をご覧ください。