インタビュー
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校 スーパーグローバルハイスクール事務局担当 上水陽一教諭に、V-CUBE ミーティング導入の背景、活用状況、そして今後の取り組みについて詳しくお伺いしました。
全国初の公立中高一貫校として、スーパーグローバルハイスクール指定校となる
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校について教えてください。
本校は平成6年に全国初の公立中高一貫校として開校し、ちょうど創立20周年を迎えました。これまで、全寮制の教育や、山里の自然や人材を生かしたさまざまな体験を通した「感動」と「感性」の教育の中で、豊かな人間性と社会性を育み、21世紀を担う個性豊かで創造的な発想を身につけた人材を数多く輩出してきました。
この20周年の節目の年に「中山間地域からグローバル・リーダーを育成する課題研究及び発展的実践」を研究開発構想に、文部科学省からスーパーグローバルハイスクール指定校(九州からは3校)に選ばれました。スーパーグローバルハイスクール事業は、これからの時代を担う若い世代を、国際的に活躍できるグローバル・リーダーとして育成し、世界に羽ばたき活躍できる人材を育てていこうと計画された国家プロジェクトです。
このスーパーグローバルハイスクールの活動に積極的に取り組み、課題研究を通じてローカルからグローバルに発信するとともに、生徒たちが学び、成長していける環境を作っていきたいと考えています。
講師と生徒、生徒同士の質疑や討論ができることが重要
スーパーグローバルハイスクールとしての取り組みについて教えてください。
本校は全国初の公立中高一貫校である特徴(6か年教育・少人数教育・全寮制教育)と、国際社会で議論されている課題が山積している中山間地域にある強みを生かし、国内だけでなく、海外(特に新興国)を舞台に、顕在化しているグローバルな社会課題に関心を持ち、深い教養やコミュニケーション能力、問題解決力等を身につけ、地方から国際社会で活躍できる「野性味あふれるグローバル・リーダー」を育成するためのカリキュラムの開発・実践、体制整備を進めています。そのためには、国内外の大学、企業、NPO法人、国際機関等との連携を図るとともに、Web会議など国内にいながらにして海外と密なコミュニケーションが図れるツールの導入も進めてきました。
スーパーグローバルハイスクールの授業はどのように行われるのですか。
スーパーグローバルハイスクールの授業は、連携・実践を通じての「課題研究」と、考え方・手法を学ぶ「グローバル・リーダー・トレーニング」の2つを中心に行われます。1~3年生の間には興味・関心を持つところから発見の段階までを学び、3年生ではローカルとグローバルな内容をつなげたテーマを自ら発見しレポートできるよう指導していきます。4~6年生においては、探究と実践を行い、「環境、経済格差、エネルギー、高齢化」をテーマに、国際的な課題解決のための生徒による自主的な活動が行われます。同時に、課題解決の考え方、論文の作成方法を身につけ、6年では英語論文の添削までを予定しています。 また、同時に客観的な見方や多角的に考察する力の育成も行います。
授業は、本校の教師だけでなく連携先の講師にも担当してもらい、課題解決の考え方や手法を学ぶだけでなく、講師と生徒、生徒同士の質疑や討論を重要と考えています。一方的に知識を得るだけでなく、生徒たち自らアクションをおこして、自然にディスカッションができるよう指導しています。また、授業は教室内だけでなく、必要に応じて国内・海外におけるフィールドワークも実施しています。すでに海外ではバングラデシュやインドネシアなどに行った生徒もおり、国内では地元である宮崎県五ヶ瀬町や高千穂町などで自治体と連携しながら進めています。ただ、海外には生徒全員が頻繁に訪問できるわけではありませんので、Web会議サービス V-CUBE ミーティングを活用して、海外にいる講師と生徒たちが直接やり取りをしながらの授業も実施しています。
海外に行かなくとも直接海外の様子に肌でふれることができる
海外にいる講師から、V-CUBE ミーティングを通じて、直接授業を実施する意図を教えてください。
生徒たちは「グローバル」という言葉を文面上は理解していますが、なかなか実感することは難しいものです。また、時差については社会で学びますが、こちらも普段は実感する機会がありません。それを海外にいる講師からV-CUBE ミーティングを通じて授業を実施することで、現地に行かなくとも直接現地の様子に肌でふれることができ、ホワイトボードを使ったプレゼンテーションなどから、リアルに近い情報を共有した上でディスカッションができます。教室での授業や討論とまったく同じことがWebを通じて行えることは、顔が見える以上の教育効果があると考えています。また、フィールドワークの訪問先と継続的に交流するためのツールとしてもV-CUBE ミーティングを使っています。
海外と五ヶ瀬をつないだ授業を通じて、いろいろな国、いろいろな土地を知り、海外は決して遠くないことを実感してもらい、グローバルな課題の発見や自らの将来の活躍の場に思いをはせる機会になればと考えています。
また、授業の工夫として、生徒たちと面識がない講師ではなく、一度学校に来て授業を実施した講師が海外にいる時、あるいは赴任先から、現地とつないで授業をするようにしています。一度顔を合わせている安心感があり、生徒たちは積極的に質疑や討論を行っています。
生徒が自主的に講師とのやりとりを行うためのツールとしても活用
次年度に向けてのスーパーグローバルハイスクールに関する取り組み予定を教えてください。
スーパーグローバルハイスクールも2年目に入りますので、より一層目標とするグローバル・リーダーの育成につながるよう授業を展開していく予定です。その中で、今までは海外にいる講師からの授業だけでしたが、今後は国内各地にいる講師の方の授業もV-CUBE ミーティングを使って行うケースが増えると考えています。他のスーパーグローバルハイスクール校との交流もしていきたいと考えており、実際にはクラス全員で直接訪問することはできませんので、Webを通じての交流を検討しています。また、講師とのやり取り、例えば課題研究のアドバイスやチェック、評価をいただくことを生徒が自主的にできるようにしていきたいと考えており、そのツールとしてもV-CUBE ミーティングを考えています。
個人的にはスーパーグローバルハイスクールだけでなく、普段の授業やホームルームでも、V-CUBE ミーティングを使って他校と交流したり、他校の教師の授業を受けたり、外部の方の話しを聞く機会を増やしていければと考えています。